黒子のバスケ
□オリオンのままに 27.5Q
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「本音を言えば俺はお前を人間以下の下等生物だと本気で思ってた」
「誰がミトコンドリアだ!!突拍子もない発言しやがって甘い顔すれば許されると思うなよショタ顔!」
「ミトコンドリアに全力で謝れ。むしろ敬え。そして話の腰を折るな。後お前この話終わったら覚悟しろ」
灰崎がミトコンドリアを下等生物と蔑んだ事実に正義の鉄槌(DEKOPIN)を食らわすが本家よりも威力は格段に弱い攻撃な為灰崎が眉を顰める程度で終わってしまった
後日アキラを泣き落としで召喚して2人で灰崎を精神的に追い詰めていく作戦をひっそりと立案し脳内議会で可決された。よし泣かせてやろう
「灰崎は実力ある癖にラフプレイを巧妙に実行したり女関係が最悪な上性格にも問題しか無くて人の事をなんとも思っていないゲス野郎だ」
「せめて歯に衣を着せてほしい」
「じゃあゲス野郎」
「…もういい。腰折らないから話進めて下さい。灰崎くんのお願い」
ズバッと思った事を言う赤司により傷心気味の心へ塩を塗りたくられた気分で背中にじんわりと冷や汗を掻く
それには一切気付かず赤司は笑顔のまま話を続ける
「でもそれは前の灰崎の事。今のお前はたった1人の存在に今までの自分が掻き消される程感情に振り回されて…普通の“人間”らしいよ。まぁ人間の中でも乙女と言う部類に入った特殊性は意外だな」
クスッと漏れた声に灰崎がバカにされたと勘違いしたのかカァァっと再び頬を紅潮させ膝に顔を伏せる
良い意味で変化を生じ始めてる灰崎を無性に愛でたくなり普段は物理的な意味で見えない旋毛付近を赤司の白い手で撫でる。ビクリと大袈裟に揺れた反応が直に分かりまた笑みが浮かぶ
ここにいたのが青峰ならこの世の地獄を見たとばかり死んだ魚の眼をしてダッシュで逃げるだろう。他の面々も同じ様な反応するか、いや緑間は意外に面倒見いい節があるから即席相談室を開いてくれるかもしれない
「やめろ愛でんな撫でんなハズイ」
膝に顔を埋めてる所為でくぐもった声が聞こえるが構わずワシャワシャと撫でまくる。躾が上手く行った犬に与えるご褒美みたいだ
小さく「コノヤロー」とか「ショタ顔」とか聞こえてくる度に脳天チョップを食らわせれば次第にいわなくなった。決して気絶した訳ではない
「ところで灰崎は剛田くんのことが好きなのか?」
「、…わかんねぇ。けど嫌いじゃない」
「付き合ってる訳でもないのにセクハラされても?」
「だって剛田だし。他の奴なら取りあえずブン殴るけどな」
「なんだ。好きな上に惚れてるのかツマラン」
「惚れ!?な訳ねーだろ!アイツが俺に惚れてるだけだろーが!お、俺は別に…」
「はいはい。惚気って聞く側にとって毒なんだな。ようやく黒子の気持ちが理解できそうだよ」
普段黒子に対して無自覚で行っている惚気話を聞く羽目になり「お腹いっぱいです」と死んだ魚の眼をして言ってた黒子の姿が脳裏を過ぎ去った気がした
散々撫で回した頭を解放してやると鳥の巣の様にボサボサになった灰崎を見て思わず吹き出し反射的に携帯で写真を撮る
パシャッ
音にびっくりした灰崎が顔を上げ怒りながら文句を言う
「てめっ何撮ってんだショタ司」
「ショタ司様の彼氏に送信っと」
「は?お前の彼氏…?」
眼を見開き呆然と赤司を見る灰崎に「あれ気付いてなかったんだ」とさもどうでもよさげに呟く
赤司の台詞にハッと思い付いたのかある人物の名前を口に出し赤司を見上げた
「まさか藍澤か」
「うん」
「…まじかよ…アイツ女に声掛けまくってる女好きだろ」
「アキラは女より遥かに俺が好きだって身をもって思い知らされてるよ。あ、返信きた」
携帯を弄りメールを開くと写真が添付されてるのに気付き赤司が最初に見た後納得した表情を浮かべそっと灰崎の眼前に画像を晒す
訝しげに画面を覗き、固まる
画像には剛田とアキラに黒子がスイパラに行ってるのか消化済みの皿が積み重なり各々が満足気にカメラに向かってピースをしている
…は?何で藍澤達と遊んでんだよ
無意識に口に出てたらしく赤司が真顔でそっと返答する
「多分だけど剛田くんが今お前をシカトしてるのはアキラ達の作戦なんじゃないか」
「何でんな事言えるんだよ」
「お前を陥れる手段が俺の時にやったのと少し似てるから。ストーカーはされてないけどセクハラは俺もされた」
「尻揉まれたのか?お前が!?」
「…いやキスとかハグだけど俺にとってはセクハラだったし」
「あー…悪い」
同情にも似た視線を送った灰崎に気にするなと赤司は小さく微笑む
よくよく見れば普段鉄壁無表情の彼が柔らかく笑うなんて珍百景モノだ。そっと魅入る自分を心の中で叱咤
灰崎の挙動不審な様子には眼もくれず赤司は携帯の画面をジト目で睨みつける
「それにアキラのこのドヤ顔とメール文からして灰崎の反応で作戦が失敗か成功か決まるみたいだね…あっちは成功だとほぼ確信したみたい。俺の写真の所為だ」
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FROM アキラ
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Success?
(成功?)
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眠りの小五郎もとい眠らぬ赤司の推理に上手く動かない脳のまま分かった振りで「お、おう」と口に出す
なぜ画像見ただけでそこまで推測できるんだ。どんだけ深い関係だコノヤロー!
まともなコメントを返せないが心の中では饒舌な灰崎であった
「で、いいの?」
「主語がねぇぞ」
「煩いな。アキラにやられたままでいいのかって聞いてるの。アキラの手の上で踊らされて出す結末より少しでも反抗した同じ結末の方がいいだろ」
「結局同じ結末じゃねーか」
「お前が剛田くんに惚れてるなら同じ結末だよ」
「…だぁああ、もう…それでいい。惚れてるよ。アイツと話してる方がどんな女といるより楽しいんだよクソ…」
耳の先まで赤くした灰崎が恥かしそうに認める声を聞き赤司がニヤリと笑う
照れて顔を膝に埋めた灰崎は気付かないがそれはそれは彼氏様の悪戯顔によく似た笑みだった
赤司は笑顔のまま慣れた手付きでアキラへ電話を掛け耳に携帯をあて発信音を待つ。数コールすると楽しそうなテノールが聞こえてきて知らない内に声が甘くなる
「なぁに征ちゃん」
「ねぇアキラ。隣の剛田くんに代わってよ」
「…はぁ。折角のラブコールも他の男の名前出されるとちょっと気に食わないかな」
「ふふ。俺だってアキラとデートしたかったのになぁ…黒子達はいいなぁ」
「はいはいボクの負けですよぉ…今度夜のデートしてみませんか」
「水族館行きたい。それと、送り狼でもしてくれるの?」
「勿論。スイートルーム行き…他にご要望は?」
「思いっきり甘やかして」
「ふふ。今よりも甘いのが良いの?征ちゃん」
「…いいのっ」
「…これ以上話したら理性切れそうだから代わるね」
「あ…うん」
「、電話切ったらすぐ迎え行くから」
甘ったるい雰囲気を纏ったままハイ、と灰崎へ携帯を手渡し赤司は自分の赤く染まった頬に手をあてポーッと空を向いて小さく惚気る
「…どーしよアキラかっこいい」
「…(予想以上に関係進んでる上に甘ったるい…!)」
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