黒子のバスケ
□オリオンのままに 27Q
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「黒子くんが彼氏を作って自分で書きたい内容を実施すればネタに困る事なんてないんじゃないかな」
ピシリ
誰も黒子に触れて無いというのに固まる
余程剛田の発言が予想外で想定外だったのだろう。カチンコチンに固まった黒子の頬をツンツン突くアキラが珍しがって「わぁお」とノリノリでプッシュする
「まぁボク等もなんやかんやで撮り忘れとかあるしテッちゃんが自分でネタをなんとかできるならいい案だよね」
プッシュプッシュ…エンドレス
テッちゃんも柔らかいけどやっぱり征ちゃんが1番柔らかいなぁ
所々に惚気を入れてくるアキラの発言にようやく我に返り頬を突く手を捕獲し勢いよく叩き落とす
痛みを口に出すアキラを視界に収める事もせず黒子は妙に血走った眼で呆然としてる剛田に詰め寄り早口で刺々しく言う
「いいですか。僕は801的な事はリアルも2次元も寛容です!現にアキラくんと赤司くんにも一度も否定する言動をしたことさえありません。フラグがありったけ立ってるキミと灰崎くんにもです!むしろもっとヤれと思ってます」
「く、黒子くん…」
「好きにやらせてあげて?この腐男子の暴走は月1でやってくるんだ…まるで生理だよnいっだぁあ!」
デリカシーの無い言葉をサラッと言ったアキラに正義の鉄槌(DEKOPIN)が下され額に大ダメージを負い机から床へ転がり落ちた
相変わらず痛みが規格外らしく床に蹲り無言で握った拳を床へ何度も振り下ろして痛みを拡散させようとしてる様だ。自業自得としか言えない
「嫁に密告するぞ!…ごほん。いいですか剛田くん」
びくっ
剛田の巨体が揺れる
「僕は彼氏なんていらないんです。見てる分にはもっとヤれ状態ですけど自分の身となると断固拒否です!2次元ラァブ!!」
やけに赤司の中の人の名台詞の発音で聴こえた気がしたがここに赤司はいない。いるのは言いたい事を言い切った達成感に眼をキラキラさせてる黒子だ
しどろもどろに首を上下させた剛田に「分かってくれましたか!」と安堵を多く籠めた口調で言う黒子の背後から復活したアキラがぷくっと不機嫌そうに頬を膨らませそのままハグをかまし再び黒子は石になる
黒子を背後からぎゅうぎゅうに抱き締め頬から空気を抜き口を尖らす
「ボクでさえハグしてこんな状態になるなら余程の事が無い限りテッちゃんがリア充になる訳無いってね!…もうこのお話は終わり。いいね剛田くん」
「うん(即答)」
「まったく…自分で言ってなんだけどテッちゃんに恋人できるなんて許せそうにないや。どうしても恋人になりたいんだったらボクを倒してからにしてもらおう。うん」
未だ固まる黒子を解放しずれた眼鏡のブリッジを押して戻す
黒子が復活するまで剛田くんに色んな知識とかボクも教えてやろうと意気込みホワイトボードにでかでかと存在する文をボーっと見てる彼の眼の前に手を振り意識をこちらに向けさせにっこり笑った
* * * *
黒子も復活しそのまま各自解散となりミーティングルームをバスケ部組は出て行った
剛田はホワイトボードに残された案を消す係を立候補し部活終了ギリギリの時刻まで残してしまった友人2人に感謝を述べ送り出して早数時間
もう衣替えの時期も近い所為か夏に比べて日の沈む時間が少しずつ短くなった。月も厚く暗い雲に覆われ部屋に差し込む光など皆無
電気もつけていない学校の一室に居るのは初めてだ、と剛田は少しだけ浮かれたが直に消すに消せない眼の前の文に向き合う
アキラが書いた案の真上に専用黒板消しをかざしては何度も力無く遠ざける
他の赤の他人なら躊躇なく愛情なく消せるであろう内容だとしても剛田には踏ん切りがつき辛いものだった。自分の為に時間を割いてくれる2人の前でもやはり消す事が出来なくてずるずるとこんな夜遅くまで残ってしまった
「僕も納得した内容なのに…、灰崎くん」
相撲部期待の星と期待されてる身としては何を躊躇しているんだと叱られそうだ。だが消したくない、とどこかで思ってしまっている自分がいる
自分でも納得して決めた内容なんだ。これじゃいけないんだ
皆で決めた案をいつも中途半端に実行しているから成功しないのだと知っている。失敗しても「次頑張りましょう」と優しく前向きに背中を押してくれる言葉を言ってくれる優しさに甘えている自分が、正直憎い
もしアキラくんの様に笑顔で面白い会話ができたなら。きっと灰崎くんと今よりは仲良くなれただろうに
もし黒子くんの様にズバッと思った事を口に出せたとしたら。きっと灰崎くんに面と向かって好きだと言えただろうに
なんてどうしようもない事を考えて時間をズルズルと引き延ばす
いっその事明日なんて来なければいいのに。そんな自暴自棄に酷似した考えが喉から這い上がってくるのを必死に呑み下す
自暴自棄にもなりたくなる。これまで数多くの計画を立て灰崎へのハニートラップ(♂)を決行してきたがどれもこれも空回りで灰崎がこちらを認識はしても意識的に警戒心を高め脱兎のごとく逃がしてしまう結果になってしまったのだ
恋愛プロフェッサー曰く「がっつき過ぎたんでしょうね」…ごもっともである
ストーカーと常人の境界線を行き来する様な危うげな行動をノリノリで計画したのがいけなかったのだろうか。失敗しても「あれれー?おかしいぞー?」で済む様な事だけじゃなかった気がする
知らず知らずの内に握っている黒板消しがミシリと小さく悲鳴を上げ慌てて籠っていた力を抜く。そのまま視線をホワイトボードに移し1度深呼吸をして一気に花丸の付いた案を消す
きゅ、きゅと音が鳴る位強く消す。数回なぞれば簡単に消え脱力した様に黒板消しを元の場所に戻した
止まらなかった時間を多少憎みつつ燻る想いを抑えそっと言葉を漏らす。それはどこか自分に言い聞かせてる様にも芯の通った強い言葉にも聞きとれた
「…1ヶ月で灰崎くんとの関係が変わるなら、腹を括ろう」
・灰崎1ヶ月総無視放置プレイ〜アイツは案外隠れ兎〜・
翌日施行決定。会話、接触、話しかけられようともとにかく灰崎と関わりを持つのを一切禁ずる。この計画が失敗した場合更に1ヶ月延長する事
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