黒子のバスケ

□オリオンのままに 26Q
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寝取られた気分だのうだうだ言ってる内に予鈴が鳴り各自の教室へ戻る

赤司とアキラが教室に戻った時にはちゃっかり黒子も戻ってきているのだから本当に素早い。黒子をとられたと拗ねてるアキラを宥めながら赤司も席につくと担当教諭では無い教師が現れ突然自習だと告げられクラス中がざわざわとざわめく









教師がざわめきを一喝し「ちゃんと自習するんだぞ」と軽い言葉を言った後に教室から出て行った。暫くざわめいていた面々も1人が勉強し始めたら次々にそれに倣い始めた為カリカリと問題を解く音が響く


赤司は読みかけの本を開き読書に勤しんでいると後ろの席のアキラがガタッと席を立つ音に反射的に顔を向けバッチリ視線が合い『保健室』と小声で言われ読みかけの本をパタンと閉じて仕舞う















アキラが保健室や屋上にいくのは大抵サボリ。そんな事とっくに知ってる赤司が引き止めもせず自分もついていくようになったのはいつからだろうか。もしかしたら最初からかもしれないが悪い気がしないのは絶対アキラに感化されたからなのだろう











隣の席の人に保健室に行くことを伝言しドアに寄り掛かり赤司を待ってるアキラの元へ歩けば楽しそうにニヤついてるバカの足を軽く踏みつけ先に保健室へと向かう

赤司の背後からガバッと抱き付く体温に慣れた手付きで腹に回される腕をぺしぺし叩く事で抗議するが嫌がる態度は一切示さない






別に嫌ではない、ただ場所を選んでほしいだけ













「まったく。ここが学校なのを忘れるなよ」

「忘れてなんか無いって。ただ眼の前に征ちゃんがいたらハグしたくなる男心を分かってほしいなぁ」

「どんな男心だ。それは下心って言うんだばかアキラ」

「なるほど」











わざと保健室へ向かう道を遠回りに進み少しでも長くハグしてもらう。アキラだって馬鹿じゃないから赤司の意思でわざと遠回りのルートを選び尚且つ人気の無い廊下を進んでいる事に気付いてる。気付いて人の肩に顔を埋め笑いを堪えているのだから「本当に性格が悪い」と赤司が少しだけ拗ねた口調で責めた












「ごめん、だって征ちゃんったらどうせ保健室行ったらいちゃいちゃするって知ってる癖にわざと遠回りしてるんだもん。本当かーわい」





首筋に軽く吸い付かれ反射的にひくりと震える





「っ見える所につけるなよ」

「勿論見えない所にもつけるよ?」

「…なら保健室に行ったら俺もアキラにたくさん付ける。お前の内股とか!」

「わぁお。大胆」















なんてことない他愛の無い話

もしかしたら13歳の会話内容じゃないかもしれないが赤司とアキラにとっては日常的なのだ。恋人関係なら仕方が無い








そうこうしている間に保健室に到着。ここは第3保健室でよく担当者が早退やらなんやらで不在が多い為密会の場で使用されることも多い

無駄に広い帝光中には色々なそういう場が探せばあるのだから恐ろしい












今日も相変わらず電気がついてなく人気の無い保健室のドアには不在中の掛札が寂しそうにぶら下がっている

赤司が中に入ろうとドアに手を掛けて開けようとして違和感から1度動作を止める。もう1度ドアを開くがやはりロックがかかってて入れそうにない…珍しく仕事して鍵をかけていったのかあの担当者は













どうしよう、と不安気に後ろのアキラを見る。すると自分のブレザーのポケットから針金を取り出しくにくにと赤司にくっついたまま針金の形を変えていく

TVなんかで見た事がある古典的なピッキング方法に呆れかえりハァっと今日何度目かの溜息を吐く








「そんなので本当に開くのか?」

「さぁ?TVでやってたからやってみるだけ」

「またTVに感化されて…」








日本の一般常識はある程度知ってるにせよマイナーな事は案外知らないアキラはTVやネットから興味深い情報を仕入れると何やら買ってきたり密かに実行したりととにかく感化される。お陰でおは朝のラッキーグッズで困った事は無いらしい


事前に赤司が「ダメ」「やめろ」と言えば渋々断念するようになったから少しが改善されていってると思ったらコレだ。軽く不法侵入罪になろうとしてるってのに止めない赤司も赤司だが成功する訳がないと思ってるのでやれるもんならやってみろ方針で自由にさせているらしい…今の所は








カチカチと針金と中の金属部位の当たる音が数分してあまりに暇だった赤司は空いてるアキラの手を取り揉み解したり指を絡めたり手を大きさを比べたりと好き放題していると何かが合致したようなカチリと音が聞こえ思わず動作がとまる




アキラが針金を抜きポケットに入れ直しドアを開くと見事に開きアキラのピッキングが成功したことを暗に示している

まさかの展開に赤司が呆然と立ち尽くすのを腰を支え人気の無くカーテンの関係で暗い室内へ入る。ドアをアキラが後ろ手で締めちゃっかり内側から鍵をかけて密室の完成だ









支えられるままいつも使うベッドに腰を下ろされアキラの支えがなくなった所為かベッドに倒れ込む。シャッとベッド周囲のカーテンを閉めたらしく只でさえ暗いのに本当の夜の様に暗くて…なんだか妙な気分になる



ベッドに腰掛けたまま後ろの倒れ込んだ為赤司の足はベッドの外にありコツンとベッドに乗ろうとしたアキラの足とぶつかりそっと靴を脱がされ足を開かせ間に入ってきた

必然的に赤司の足は閉じられなくなり慣れた足つきでアキラの腰にするりと絡める。ああ今求められたら拒否できないな、と密かに笑う














「機嫌いいね」

「うん。俺の足をこうも簡単に開くから、変な気分になる」

「それってえっちぃ方の気分かな」

「どうだろうね」









人気の無い廊下を歩いていた時はできなかったキスを繰り返す。アキラの気が済むまで、赤司の気が済むまで。気付けば息が上がり飲み切れない混じり合った唾液が赤司の口端から何度も伝った

そっとアキラが起き上がり腰に絡む赤司の足を外そうとするが離れないでといわんばかり絡む足に力を込めてくる姿に困った顔で微笑む









「征ちゃん。足離してくれないと止まれなくなっちゃうよ」

「知らない。今は離れなくてもいいだろ?」

「えーと…つまりはお誘いですか」

「、お誘いってのはこういう事をすればいいんだろ…」










絡む足を支点にむくっと起き上がり頑なに解かなかった足を解きアキラの膝上に乗り上げ肩にとんと顎を乗せ耳元で囁く

















「あんあん…」

















キスをしたばかりで未だ整わない荒い呼吸の所為か話す言葉に吐息がまじりどことなく色気を伴う。そればかりか最近声変わりをした赤司の声はどこか新鮮に感じて大人っぽさを漂わせる。艶やかな声はアキラの欲を誘いぞくぞくと背筋が震える



それを分かってこんな誘う言葉言ってるのだから本当に淫靡な恋人だ












必死に襲いたくなる衝動を抑え膝上で楽しそうに高みの見物をしてアキラの反応を心待ちにしてる赤司を力いっぱい抱き締めぼふん、と再びベッドに倒れ込む

最初の体勢に逆戻りしきょとんと赤い眼が瞬くのを面白いものを見たとばかり笑みを浮かべそっと囁き返す



















「夜までお預け」


やはりむっとした声が返ってきた


「…ヘタレ、絶倫、もう誘ってあげない」

「ごめんね。ゴム今日持ってきてないから我慢して」

「、今回だけだよ。我慢してあげるの」








保健室のベッドをゴム無しで汚す訳にはいかないと暗に伝えるとそれを汲み取り拗ねた様子を見せる赤司は枕を胸に抱き顔を埋めて寝ようとしていた。所詮不貞寝か

アキラも横になれるように隙間をつくるように言えばほんの少しだけ、本当に数pだけ移動して後はしらんぷりを決め込んでいる。本気で拗ねているらしい

赤司の背中から覆うように抱き込み薄い腹に腕を回す

















「征ちゃん、ちょっとお願いあるんだけど」

「お願い?」












不機嫌ながらも腕の中でくるりと向き合いじっとアキラの眼をみてくる赤司に同じ様に見返し言いにくそうに伝える









「あー…テッちゃんの事なんだけど」

「青峰に寝取られた?」

「悪かったってばツンツンしないで」









ただの比喩で使った言葉も揚げ足取りされ本格的に不貞腐れてる可愛い子を必死で宥める。髪を撫でては梳き背中を撫でては縋る様に抱き締めた

少しだけ気分が戻ったのか2人の隔たりと化してた枕をそっと元ある場所に戻しアキラの胸元に擦り寄る












「今週の昇格テストの後テッちゃんをちゃんと見てほしいんだ。征ちゃんはテッちゃんの本性を知っててもバスケ面では見た事ないでしょ?だからちょっと見てくれない?」

「黒子を…でも黒子は昇格テストをどうやっても上がれないってお前言ってたじゃないか。俺が見ても…」

「そう。テストじゃ上がれない。でも見るべき人が見たら…もしかしたら上がれるかもしれない」

「…シュートとか見ればいいのか?」

「テッちゃんはシュートもドリブルも自慢じゃないけど素人に毛が生えた程度だよ!それ以外を見てほしいなぁ」

「1軍にお前が勧める程の要素を黒子が持っているということか…わかった見てみる。バスケ面でもし俺の眼に止まったらその時はなんとかしてみる」














そこでふと赤司は疑問が浮かぶ

ある程度のアキラの眼の事は知っているし黒子の限界値の事も聞いた。黒子の限界を誰よりも早く理解したアキラが赤司に見てくれないか、と頼むという事は何かを発見したということなのだろうか

人に教えるということもアキラの3軍コーチとしての役割の1つな筈。なら何故その部分を自ら教えないのだろうか




いや他の人間には教えてるんだ。黒子にだけ教えて無い…?












「…なんでアキラは黒子にだけやり方とか伸ばし方を教えていない?お前ならできるんだろう?」














その質問は来ると思っていたよと茶化しながら言うアキラはなんだか苦しそうに思えた

苦しいというよりは切ないとか辛いの方が合っているかもしれない













「テッちゃんのだけ前例を1度も見た事ないんだ。他はあるんだけどね…無から有を作りだすのは得意だけどそれを教えるとなるとボクには出来ない。今までの事例とか近くの人材で知ってる情報とはかけ離れた未知の存在の性能は知ってても活かし方は知らないんだ」

「つまりは黒子の秘めたる才能は見つけられてもその伸ばし方や活かし方までは知らないから手出しが出来ないと…」

「そのとーり」










格段に機嫌が元通りになってきてる赤司を抱き締め耳元で力無く声がきこえた










「情けないでしょ?本来だったら泥舟に乗ったつもりでテッちゃんの才能伸ばしてあげれるって思ってたのに…」

「大船な」

「似た様なもんでしょ最終的にタイタニックになるんだから」

「お前日本のことわざ嘗めてるだろ」

「だってボクアメリカンだもん。そんなの知らないよ」

「は?アキラは日本人だろ?」

「え?言ってないっけ。ボクはクォーターだよ。純粋な日本人じゃないの














国籍がアメリカだとか旧姓が赤司だとか色々な事がごちゃごちゃしてるアキラの成り立ちを知ってれば大してびっくりする事じゃない


「へぇそうなの」と流せば簡単に流れた話題のひとつに過ぎないけど少しずつ話してくれるようになったアキラを褒める様に掠め取るキスをひとつ送る


赤司もアキラの素っ頓狂な行動にきょとんとした反応を返すと可愛いだのなんだの言われるが眼の前のアキラも十分それに当てはまると実感した。こっそり笑えばすぐに見つかりジト目で見返される














「ふふ。アキラ拗ねないで」

「拗ねてない」

「そう?」











茶化しながらアキラの頬を両手で覆い滑らかな肌をもちもちと触る

白玉の様にぷにぷにした白い頬がお気に入りな赤司はへにゃ、と笑って頬にキスをする。弾力のある頬の感触は男に有るまじきだと心底思うが恋人の長所のひとつなのだから甘受しよう。そして自分も堪能するのだ






なんやかんや言いつつもアキラも頬をやわやわと触られたり軽くキスされたりする行為は落ち着くらしく徐々に下がっていく瞼を見て虚ろになりつつある意識に向け赤司が口を開く
















「もし黒子が1軍入りしたら」

「…ぅ…?」

「俺はアキラも上に引き上げるからね。文句は言わせないよ」

「……__すぅ」















すぅすぅと穏やかな寝息をたてるアキラを見上げそっと微笑む


どうせ今日はもう授業は出ないだろう。なら部活前まで寝てたっていいじゃないか


赤司の腰に回る腕を外さないように気を使い足元の掛け布団をアキラの肩までかけ腕の中に潜り込む


意識はもう無い筈なのに腕の中の赤司を抱き締める力は強くなり少しだけ息苦しいが幸せそうに微笑みアキラの足に自分の足を絡めそっとブレザーを握り静かに瞼を閉じた
















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