黒子のバスケ
□オリオンのままに 24Q
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剛田くんとアドレス交換をした後黒子を恋愛プロフェッサーと称し黒子とも交換。嬉しそうにずしんずしんと帰って行った剛田くんにヒラヒラと手を振り未だ興奮してる黒子を引き摺って選手控室へ向かう
「アキラくん。赤司くんに人前でキスすると怒られますよね。今のままで行くと僕はそのシーンを写真に収める必要がありそうなのですが」
「仕方ないじゃん剛田くんの片思いっぷりを見たらちょっとくらい御祝いと称してキスしたいもん」
「もんとか言うなこの美人さんがっ」
「はいはい。本当の美人さんに会いに行こうねー」
帝光中レギュラーがいるであろう控室をノックし女性の声が「どうぞー!」と慌てた様子で返事したのを黒子と視線を合わせ首を傾げる
部屋に入るとそこには
「きゃー!大ちゃんっ皆どうしたのー!」
カラフルな面々が床に倒れ伏し死屍累々な殺人現場に出くわした
ぴっ
▶駆け寄る
マネージャーを口説く
逃げる
「征ちゃん!」
「え、あの…」
「紫原くんまで倒れているんですか。柑橘系の強い匂いが手からしますね」
桃色の髪のマネージャーが、入ってきた2人を動揺しながら見るがやがて関係者と分かったらしく幼馴染を叩き起こすのに力を入れる
アキラが慌てて赤司を抱え起こし自分の膝上に横抱きにして軽く頬を叩き眉を寄せたのを見てホッと一息。ゆっくり瞼を起こす赤司が虚ろな意識のままアキラを呼ぶ
「アキラ…?」
「うん。征ちゃん大丈夫?」
「だいじょばない」
「そうみたいだね初めて聞いた日本語の言葉だったもん」
試合後で疲れ切ってる中なにかあったらしくレギュラー全員が意識不明になる現状に至った経緯を小声で教えてもらう
どうやらあのマネージャーの桃井が差し入れで持ってきたレモンの蜂蜜漬けを食べた瞬間強烈な味に意識が吹っ飛んだらしい
蜂蜜に漬けている筈なのに舌がびりびりと痺れ食べた事もないくらいの苦みと渋みを思い出したのかこの世の終わりを見た様な顔をして赤司がアキラに訴えかける
「俺はもうだめだ。舌がぱーんってなったんだゴメンアキラ俺もうお前の料理の味も分からなくなって…ラザニアもきっと砂糖どっぷり入れても気付かなくなって…ひっく、」
舌がぱーんとかいってる時点で物凄く混乱してるのが伝わり赤髪を撫でて梳いてあげれば次第に泣き始める情緒不安定な様子に可愛いなぁと真逆な事を考えながら抱き付く
えぐえぐ泣く声を殺す為アキラのジャージに顔を埋める赤司の頬にキスを落とすとパシャッと音が聞こえ顔を上げると何故か赤面してる桃井と眼がバチッと合う
あ、そう言えばここほかの人もいたんだった
固まるアキラと桃井を余所に急に宥める手が止まった事に物足りなくなった赤司が甘えた声でアキラの名前を呼びすりすりといつもの様に首筋に擦り寄ると視線を感じたのか蕩けた赤い眼をツイッと向けて同じく固まる
「も、桃井…みてた?」
真っ赤な顔が2人。平常心を取り戻した者が1人。撮影中1人。気絶中4人
桃井が頬を染めたままこくりと頷けば耳まで真っ赤にした赤司があうあうと言葉を濁し隠れるようにアキラの胸に抱き付く。コアラ状態に陥った子をしっかり抱き止め背中をぽんぽん叩きつつ桃井に向けて小声で言う
「…この事秘密ね?」
「あ、うん。赤司くんの甘えた姿って初めて見たからびっくりしちゃった」
「惚れちゃダメだよ。この子ボクのだから」
「ばかアキラ!恥ずかしい事言わなくたって…」
「そういうことは人の胸から顔をあげていうものだよ。テッちゃんムービー止めなさい」
「ちっ」
未だ意識が戻らない面々が目覚めるまで待っておこうと決めその場に皆座り取りあえずアキラが桃井に聞きたいことを聞きにくそうに問う
「あのさ桃井ちゃん。今日の差し入れの出来栄えはどうだった?」
まさかとは思うが味音痴じゃない限りあの赤司が混乱に至る味は作り出せない。故意かもしれないがそれを判断する為に聞きだすと桃井が少し残念そうに答える
「今日のはあまり良くないの。やっぱり砂糖少なかったなぁ」
「違う違うそんなもんじゃない砂糖とかじゃなくて本来あんなに苦い訳無いんだ絶対変なの入れられたんだよ(ボソボソ)」
「彼女は味音痴なんだね(ボソリ)」
「?」
味を思い出したのかふるふる震えながら赤司が小声でアキラに本音をぶちまけるのをぎゅうぎゅうに抱き締めて宥める。背中に回る手の力が強まったのがよくわかった
後で好物を作ってあげようと心に決めたアキラを尻目に桃井が赤司を抱きしめてるアキラの様子と嬉しそうに受け入れてる赤司を見てくすくすと女の子らしく笑う
「あなたは藍澤アキラくんで合ってるよね?1軍コーチに啖呵切ったあの子だよね」
そういえばまともな話をした事がない桃井とはこれが初めての会話と言ってもいいのかもしれない。ちゃんとした自己紹介もまだなのによく知ってるなぁと感心しながら桃井に笑顔で返す
「その藍澤くんです。えっと桃井ちゃんだよね?さっき征ちゃんそう呼んでたし」
「その桃井ちゃんです。征ちゃんって…」
「この子」
ひょいと脇に手を差し入れ剥がそうとすれば本気で反抗してしがみ付く為アキラが折れる。もそもそと首筋にぺトリと頬を当て手足を背中に腰に雁字搦めでしがみ付いて離れようとしない可愛い恋人にニヤケてるとまた桃井が笑う
随分と感情豊かな子らしい
「そっか。藍澤くんと赤司くんは凄く仲が良いんだね。羨ましいくらいだよ」
「…桃井。お前の事だからそれ以上の関係だってもう知ってるんだろ」
「すげ。情報屋初めて見た」
「茶化すなばか」
「発言は顔上げてから言うんだね」
「む」
ふと背中に回ってた腕が外れた感覚がしたが気にせず赤司の腰に手を回す事でバランスを取る。相変わらず気絶中の連中はピクリとも動かずお話タイムは強制継続の様だ
「うーん。確かに知ってるけど本当かどうかちょっと疑ってたんだ。でも今の赤司くん見てやっと納得できるよ。凄く可愛いからね!」
「可愛いよね!たまに学校でコロッと甘えるから征ちゃんに惚れてる子増えたのが腑に落ちないけど」
「あー…確かに赤司くんに惚れる子は増えてるけど藍澤くんが傍にいないと全然笑わないからキミ達が一緒なのがいいって子が大半かな」
「…それでも惚れてほしくないな」
身も心もボクのものなのに
ボソッと赤司の耳元で呟くとピクッと反応した体が徐々に熱を持ってくる。背後から視線を感じ顔をむけると黒子が静かに携帯を構えている。ムービーを撮っているのか赤く点滅していた
「…」
「…ハァ。ちょっとズームしてくれる?」
「はい…しました」
まるで黒子がADみたいだが決してそんな事実は無い
ズームにしたと聞きニヤリと口元を上げ自分の首筋に埋まる赤司の顎に手を優しくかけグイッと上げさせる
現在ズームで撮られているのは赤司の赤面顔の筈だ。それに気付いた赤司が慌てて顎を掴む手を外そうと全身で暴れるのを好きにさせてたらアキラの膝から降り撮影中の黒子に突撃した
ぐふ、と潰れかかった声が聞こえたのは間違いではない
「黒子!今すぐ撮影やめろっもしくはアキラに送るな」
「断固拒否します。ご自分の赤面顔がどれだけ可愛いか知らないからそんな事言えるんですよ!」
「知りたくもないっ」
「そうですか。なら、断固拒否します!」
「〜〜ッくろこ!」
黒子の襟元を掴みぐわんぐわん揺らす赤司を見ながら桃井とアキラは静かに視線を合わせにっこり微笑みあう
「ああいう普通の中学生の赤司くんを初めてみたよ。いつも大人びて見えるから」
「ボクとテッちゃんとかといる時はこんな感じだよ」
「テッちゃん…って黒子くんの事?最近大ちゃんとよく練習してるから知ってるの」
「…へぇ。青峰とね…ふーん」
「?」
どこか拗ねた口調で言うアキラは桃井が自分を不思議そうに見てるのを見てハッと我に返り「なんでもない」と取り繕ったように言うので反射的に気遣って「そっか」と深くは聞かないでおいた
そうだ、と思い付いたように声を上げたアキラは楽しそうに桃井に提案する
「桃井ちゃん今度征ちゃんに料理教えて貰ったら?あの子の料理は凄く美味しいし見た事無い征ちゃんが見れるかもよ」
突拍子も無い言葉に桃井は眼を瞬かせる。急にどうしたのだろうと思うが桃井自身可愛い物が好きな上アキラと一緒にいると感情豊かで可愛い面も見せる赤司を見るのも好きだ
決して嫌な提案では無かったが素直に頷き難い。軽く話をする程度の仲なのにいいのだろうかと思ってしまう
その思考が読み取れたのか背後で未だぎゃいぎゃい騒いでる赤司と黒子に声をかける
「征ちゃーん。今度桃井ちゃんと料理する気ない?(身の安全を確保する為に)」
「…そうだな、簡単なものからだったらいつでもいいよ(身の安全の為に)」
「らざy」
「ラザニアは初心者向けじゃない」
「ちぇ」
意図を見事に汲み取った赤司が戦利品の黒子の携帯を持ち構えパシャっとアキラと桃井を撮影しふふ、と笑う
画面には不思議そうな顔をする2人がきょとんとこちらを見るなんとも気の抜ける1枚だ
ぜぇぜぇと床に伏している黒子の傍に携帯を返し1番近くにいた緑間の肩をゆすり始めたのを見てアキラは桃井に楽しそうに「よかったね」と言って灰崎を起こしに向かう
携帯を取り出し寝顔を撮影しているのは気の所為ではない
桃井は男の子の輪に躊躇して入れない自分を赤司とアキラが手を引いて引き入れてくれた気がしてふわりと花の咲いたような淡い笑みを浮かべ小さく感謝を述べた
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