黒子のバスケ

□オリオンのままに 22Q
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トドメを刺してしまった額に改めてキスを落とす。緩やかに首に回る腕が縋りつく様に背中へと移り軍服を皺が付くほど握りしめた赤司の手付きにふ、と笑みを零す

えぐえぐと泣き声混じりにぼそぼそと聞こえる声に耳を寄せると背中に回る手がぎゅぅっと握りしめた音がした












「ったい、いたいぃ…」

「テッちゃんのデコピンは殺傷能力高いんだよ。それを3発なんてよく耐えたねー泣いちゃったけど」

「るさい!ばかっばかぁっ」

「赤司の民よ静まりたまえー」

「ひっく、抉られた…絶対抉られた…!」










本人曰く抉られたに相当する痛みらしく頻りに額が抉られたと訴えてくる。訴える内容がアホみたいで可愛いなぁなんて思ってるのは内緒だ



例えアキラが可愛いと思いニヤニヤしてたって赤司の涙で滲む視界では判別もつかないだろうと鷹を括りニヤニヤタイム継続中

しかし至近距離で分からない筈も無く憤慨した赤司により首筋に歯を立てられ情けない彼氏の声が個室に反響する












「いだだだっ」

「ふぁか!ふぁあうあ」
(ばか!笑うな)

「痛ってぇ!ごめんってば征ちゃん」












謝り倒してやっと解放された時にははっきりと歯型が残っており特にジクジクと痛む原因の八重歯の鋭さを呪った

アキラは既に額の痛みは取れたが赤司はまだ痛むらしくすりすりとアキラの胸元に擦り寄り痛みを押しつけているようにも思えるが逆に痛いだろうと困った笑いを浮かべ赤司の震える背中を撫で下ろす







一応ボタンやらネームプレートやらの装飾品が少ない場所を選び擦り寄っている様で痛みでバカになってる訳ではないらしいとそっと安堵の溜息を吐く

痛む額に装飾品がある場所で擦り寄せるなんて痛みを増長させる以外のものではないからだ















コンコン



「アキラくん。赤司くんの様子はどうですか」
















聞き慣れた淡々とした声に赤司がアキラの胸元から顔を上げる


数分振りだというのに赤い瞳は相変わらず涙をぼろぼろと零ししょうがないなぁと黒い手袋を外し優しく涙を拭ってやる
へにゃりと笑顔を見せる赤司に同じ表情を浮かべ赤くなった目元を猫の様に舐める。ふるりと濡れた睫毛が頬を擽った










すると赤司が鍵をあける様に頼み背中に回してた両腕を解く。自由になったアキラがドアを開けると赤司が泣く姿を隠してたあの軍帽を被った黒子が立っていた。珍しく携帯を構えていないことに軍服組が眼をきょとんと返す





…空気を察したのか残念そうな声がきこえた











「流石に赤司くんを泣かせましたし盗撮は自重しますよ」



はぁ…









隠しもしない残念そうな溜息を吐き赤司の額の様子を聞いてくる









「本人曰く抉られたって」

「僕の手はいつから人外になったんでしょうね」

「テッちゃんは神様だから本当はゴッドフィンガーだよ!…痛い!」










本日3回目のデコピンによろめき黒子と位置を交換させられたアキラは額を抑えながらふらふらと洗面台へと姿を消す

赤司は姿が見えなくなったアキラの額を心配しながら眼の前のじっと赤司の額を見つめて動かない黒子に戸惑っていた








赤司が被っていた軍帽を被り特徴的なTシャツを着た黒子はどこかいつもと違い困惑というかどうしようか迷っているようにも見え赤司は首を傾げる










「黒子?」

「__失礼します」










軍帽を脱ぎ赤司の膝に置くと長い前髪に隠れた赤い額を晒しそのままキスを落とす

暫くぽかーんとしてた赤司だがハッと我に返り顔から火が出た様にボッと一気に赤面。恥ずかしいやらあの黒子が俺にキスを…!?など混乱しきったまま眼の前の無表情の黒子を見る










「っ!く、く、くろこっ?」

「はい」

「な、ななななんでちゅーして…!?」








不思議そうに首を傾げる黒子は純粋に可愛いと頭の片隅で赤司は思った。驚きのあまり涙も止まりイイコト尽くめなのだが動揺を隠しきれない









「キミ等には言葉より態度で示した方がいいと思いまして。だからごめんなさいのちゅー…嫌でした?」

「嫌な訳ない。むしろ黒子からのキスなら俺達は嬉しいよっ」

「…もっとしましょうか?アキラくんが」

「それは普段と変わらないだろ…貰うけど」











恥ずかしそうに視線を逸らした赤司にフラッシュの光が差し込み普段の黒子が還ってきたんだと理解した

いつのまにか装備されてたスマホに黒子がハッと我に返りあーだこーだと言い訳を言うがじぃっと赤司がまっすぐ見つめると言い訳を止めて再びフラッシュが個室を埋め尽くす







しょぼんとした黒子の姿に思わず盗撮した事を嗜める気も消え失せる









「黒子」

「…はい、うぶっ」








軍帽を荒く被らされ急に暗くなった視界に黒子は反射的にぎゅっと瞼を閉じると同時に頬にぷに、と柔らかいものが触れた感触


そっと感触が離れ眼を開けると至近距離にある赤司に驚きそっと離れていく顔を眼で追った








照れを頬に表し赤身を帯びたまま可愛らしく笑った赤司が甘い声で囁く













「…ゆるしてあげる、のちゅー」












途端。黒子の様子がおかしくなる
被らされた軍帽に顔を埋め赤司に背を向け蹲る





なにやらぶつぶつと呟きまるで某シンジくん状態に近い。もしくは某夜神月ばりともいえる






心配した赤司が黒子の肩に手を伸ばし届く寸前で止まる発言が飛び出す














「あ、赤司くんがビッチになった…!アキラくんの所為ですか…赤司くんは前まで同人誌の表紙見るだけで顔真っ赤になってたのに僕にキスしかけるなんて…ビッチになったとしか考えられなy」

「黒子?俺がお前にちゅーした位でなんでそんなに動揺してるんだ?ん?」








ぐわしっ



黒子の肩をしっかりと掴み振り向かせると部活で常時発揮されてる魔王スマイル(緑間命名)を向けた



恐怖で軍帽が落ちかけたのを赤司が拾い自ら被る。泣かずに真面目な顔してれば似合うとか顔面格差爆発しろと黒子は心の隅で叫ぶ



黒子はライフカードを見えない鋏でバラバラに切り裂かれた気分になる中必死で震える口を動かし持ち前の度胸を振りかざす












「赤司くんが僕をリアルな腐に引き摺りこもうとするのがいけないんです。2次元がいいです。おいしいです。」

「別に引き摺りこんでないよ。ただ愛でてるだけだしアキラにしか足開かないからビッチじゃない」

「じゃあ僕にほっぺちゅーしなくたっていいじゃないですか!」

「犬猫に飼い主はキスしたりするだろ?それと似た感覚だからいいじゃないか」

「まさかのペット扱いですか」









ぐぬぬと言い返す言葉が見つからない黒子はにやりと笑う赤司目掛けてキッと睨みつけ高らかに言い放つ













「〜〜っアキラくんに赤司くんがカップリングを赤黒に変更しようと試みて失敗したって密告してきます!!ばか司くんの腰が砕ける様に祈ってますっでは!」

「え、まって、まってよ黒子!やめろっ」













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