黒子のバスケ

□オリオンのままに 16Q
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思わず腐男子モードを一瞬オンにしたテッちゃんの大声で一気に注目されテッちゃんの口を両手で塞ぐ


なんでもないよ〜と取り繕えば視線は分散しこういうのに慣れてないテッちゃんの溜息がボクの手にかかり手を離し解放した

先輩(不良)に啖呵切るより視線を集めたことに疲れてるみたいだよ。大きな溜息ついてるから







「はぁ…キミは相変わらず視線を集めますね。視線ホイホイですか」

「今の全部テッちゃんのミスだからね?責任逃れダメ絶対!」

「なんのことやら」










「おいテメェ等よくもやってくれたな」


手の痛みが引いた先輩(仮)がまた難癖つけてくる





いい加減しつこいなぁ。何が目的なんだよ三流ギャングめ





メンドクサイと顔に隠さず表して向き合えばなんだその顔は!と言われるがしょうがないじゃないか

まぁ先輩(仮)の神経逆撫でしたみたいですんごい睨んでくる。別にアッチじゃたまにあったしボクは平気です!








「…俺たちが何言ってもききゃしねーって顔してるな。ならバスケで勝負だ」










WHY!?(なんで!?)





言ってやったぜみたいな顔してるけど周囲は「え!?」って顔してるからね


地味に隣で考え込んでいるテッちゃんに気付き声をかけると真面目そうな声で違う事を考えていた。マイペースだねボクの神さま






「怒りからのゲームしようぜ!展開は昨今のゲーム業界において少ないですよね」

「ボクゲームしないから分かんない」

「ちっ」





……ゲームしようかな

テッちゃんの話し付いていけるように…もうBLゲームとか借りて知識増やそうかな(遠い眼)








バスケしようぜ!と提案したのを聞いたコート外の3軍メンバーからぼそぼそと聴こえてくる


「元1軍に敵う訳無いだろ…藍澤とあの影薄い奴じゃムリだって…」



元1軍とかそんなのどうでもよくてボクがムッとしたのはその後の言葉



呟いた相手を眉を寄せて睨み声を張り上げる















「お前なんでテッちゃんの名前覚えてないんだ!!この水色の神々しい神さまの名前の方がこの不良共より大事だろうがッ」
















しーん



空気が凍り付きボクが粉々に砕き捨ててやった。後悔はしてないデス

というより本音だからね



ワールドイズテッちゃんとか豪語してもいいって思ってるボクにしてみれば常に言いたかった!あ、征ちゃんもwithでいれよう



言いたい事がいえたボクは御満悦にドヤ顔振りかざしていた所背後から頭部にスパンッと軽い音が響き多少の痛みを伴う

叩かれたと判断して後ろを見れば顔を羞恥心で真っ赤にしたテッちゃんがグッと眉を寄せボクを睨みつける







滅多に見ないテッちゃんの赤面に目をぱちくりしてガン見

ふるふると震えるテッちゃんは少し涙ぐんでいて潤う水色がとてもきれいだと魅了されているボクは浮気をしてる訳じゃないんだ。分かってください









「…なんでアキラくんは、」

「て、テッちゃん…何でまた手を振り上g痛ァッ」

「っそうやって容易くフラグを折るんですか!そして僕でフラグを立てるなと何度言ったら…!」









怒ってるのそっちなのね。空気読まなかった所だと思ったのに

コート外の皆ぽかーんとしてるのにテッちゃんとボクだけはいちゃいちゃしちゃってるこの状況なんなんだろ?

あ、フラグ立ててないから。立ってたら早く折れて!

そろそろレッドカード出されそうな雰囲気だもんね。あまりテッちゃんを刺激するような言葉は言わないようにしなきゃ…










「も、悶えと浮気は違うよ!ボクはテッちゃんを神さまだと思ってるけど別にアハンなフラグ立てようとしてる訳じゃないもん」

「過度に悶えるのはけしからんことでしょう!…反省しないならいいです。泣きついてきますアホのアキラくんの彼女(♂)に!」

「ちょっとおお!!」






テッちゃんが他所から見れば無表情でボクから見れば不機嫌丸出しの拗ねた顔のままバッと出入り口に走り障害物さながらの先輩(不良)をブルドーザーの様に無情にも轢いていく




「邪魔です。どきなさい。どかないなら轢いちゃいました」





ボク等以外喋っていなかった体育館に無駄に響きどこか淡々としてぞわっと鳥肌が立ったのはボクだけじゃない筈

轢く前提で言った言葉に咄嗟に反応できなかった先輩(不良)はドミノ倒しの要領で倒れ腹や顔に神さまの足跡を付けられ床に無残に倒れこむ


年の割に体重の軽いテッちゃんといっても踏まれると言うのはなかなか痛いらしくたまにぴくぴくと痙攣をおこしてる







「あー…やっば…」



やっちまったよ。やっちまったよトーサン

テッちゃんの後をがっかりしながら歩くボクは倒れてた先輩の上に足を置き被害はどれくらいのものだろうと見定めてみる為に1人の先輩の腹に腰を下ろし”眼”を使う



恨めしそうに見てくるこの先輩からだ




「うぐっ…てめ、帰国子女おりやがれ…」






不良A___


HP:790
(デフォルト853)

素早さ:1002

技術:3211

根気:5090


レベル:26

次のレベルまで…


重傷箇所:なし

____





うわ。体力無さ過ぎ…

よくて中ボスレベルなんですけど…

これで1軍?シュート力が凄いのかこの人

今は必要ないから見ないけど






__ああ。この上の変なパラメーターに驚いてるの?ボク昔から見ようと思えば人の数値が見えるんだよ


このほかにも見えるのあるんだけどまぁ今は置いとくよ。優秀なトレーナーの人はボクと似たような眼を持ってるらしいから数値として見える眼を持ってると認識してもらえるかな?




眉を顰め人の上に座りながら頬杖をついてありえない、と呟くボクに訝しげに見る先輩の眼を見つけ溜息まじりに呟く










「アンタ体力無さ過ぎ。技術が3000あるからなんとか1軍まで上がれたんでしょ。これじゃ宝の持ち腐れだよ」


今までよく部活の練習中に体力不足で倒れてるんじゃないの?

違う方向に努力してるから体力面が伸びないんだよ。勿体無いなぁ


__そう付けたして言う









途端眼を見開き周囲の先輩たちがガバッと床から身を起こし信じられないモノを見る様な目付きでボクを見る







「…おいおい。あの新しいマネージャーと同じ事言ってねーか?」

「ああ、あのピンクちゃんだろ?大分好みのタイプだぜ」

「もしかしてこの帰国子女全員の数値が見えるんじゃ…」





互いの意見交換がボクを注視しながら行われて居心地がすごい悪い

どうせ注目されるならベッラか征ちゃんかテッちゃんからだよね

あ、征ちゃんは今テッちゃんに泣きつかれてるんだ。ボクの晩ご飯が食トレに変貌しそうで嫌だなぁ






遠い眼で数時間後に征ちゃんが作ってくれるであろう夕食に悲劇が訪れないか心配してるボクの下にいた先輩が慌てて飛びあがり床に尻餅つく前にその場から避難

まるで一縷の望みに縋る様にその先輩の両腕が伸びその手はボクの両二の腕を掴み離さない






「…帰国子女。お前俺達の弱点をいってみろ。今すぐに」








あはは唐突になんだよー


笑い飛ばそうとしたけど揺らがない瞳にボクが折れ未だ座りこむ4人の視線を感じながら左側の人から順に指差しで答えていく









「左から…下半身の筋力不足による瞬発力の低さ。捻挫しやすい。筋肉の付き方が偏りすぎてキミ自身のプレイスタイルの邪魔になってる。あ、折角のサウスポーなのになんで右利きに直したの?最近直したんでしょ。値がマイナスになってる」




結論



「…随分自分にあってない練習してきたんだね。あと最後の人は誰かに指摘でもされたの?サウスポーに教えにくいから変えさせたのかな。アホな指導者だなぁ」





すごく勿体無いと不機嫌に言えば眼の前の不良はお気に入りの玩具を見つけた子どもの様にキラキラとした眼でボクを見つめ鬼気迫る勢いで詰め寄る







ちょ、近い近い!いくらボクでも鼻が触れ合う距離は近過ぎるよっ










「なぁ!帰国子女俺達個人個人に適切な練習内容を作れるか?3軍に与えられたメニューより効率的な奴を!」


「…いっとくけどボクはスポーツトレーナーじゃないんだよ?一応その職の人の仕事振りをよく知ってるからできるとは思うけど…」








知り合いのスポーツトレーナーはアメリカで知り合った人だよ。まぁアッチで色々あってね

第二の息子だよバンビーノ!なんて言われちゃった位の仲ですよ

金髪のダンディなイタリア人でね。今でもカチューシャ付けて女の人を口説いてるのかな。息子は日系イタリアのイケメンくんだよ

息子も父も綺麗なモノに目がないんだ。暴走するのを必死で止めてたのはいい思い出だよ








綺麗だった過去に想いを馳せるボクの耳を打つ意思の籠る強い声と視線が現実世界へ連れ戻す

不良の先輩たちはさっきまでの荒んだ瞳から一変して縋る様な救いを求める様な目で見定めるボクを見ていた








「構わないぜ。お前の指摘は俺等が1軍落ちした時に有能な女マネから言われた事と同じなんだ。なら見ただけで弱点を当てたお前に師事されたなら強くなれそうだって俺の勘が言ってる」





興奮しているのか二の腕を掴む手に力が入り痛い。指摘すれば「あ、悪ぃ」と軽く謝り手を解放してくれる


それにしてもこの先輩方は余程追い詰められてるんだろうか。碌に人に教えた事の無いボクに頼るとか

ならコーチとか監督に師事して貰えばいいとおもうけど…







「コーチとか監督に頼んでメニュー変えてもらうとかして満足はできないの?」






眉を顰めガンを飛ばす不良先輩は疎ましげに言い放つ






「あいつらは1軍のレギュラー第一なんだ。1軍落ちとか1軍以外には目もくれないんだぜ?そんな奴等が俺等にまともなメニューなんかよこさねェよ」







うんうん。後ろの先輩たちも頷く

…確かに3軍のメニューはゲーム練とか体力づくり中心だけど極端なメニューだなって思った

体力無い人には地獄だし体力ある人には物足りない。そんな極端なメニューに体を壊す人は壊すだろうし…でもこの部活は弱肉強食





壊れたなら辞めろ。新しい奴はお前以外にもいるんだ





暗にそう告げているメニューだとも伝わる






なんだか部員を”駒”としかみていない見たいで気持ち悪い

そう思うと嫌悪感に近いどろどろとした不快感が胸中に湧き出る









__なんだか気に食わない

いっそ彼等の願うとおりに成長させてみようか



だんまりを続けるボクをまだかまだかと健気に待ってる不良先輩たちと何故かコート外の3軍メンバー。皆このメニューに何かしら不満があったのかもしれないね



コート外の連中を見ても誰一人不満気にしてる輩がいない。むしろボクの決定を心待ちしてる様に見える。特に2、3年生が









…やってみようか。3軍改革を

ボクの眼が通用する限り








だんまり無表情からにっこりと笑みを浮かべまっすぐ不良先輩を見つめ告げる







「…やるならバスケを心から楽しむこと…勝ち負けなんかよりも優先するのはソレだよ。それでもいいならキミ達の改革を手伝おう」









スッ

右手を出して眼の前のぽかんと口を開く先輩に握手を求める






帝光中は百戦百勝を掲げている。それに従って今までやってきた先輩等にとって見ればボクの考えはおかしいのだと思う


むしろ監督とかコーチに直で言ったら面倒なことになるレベルかな?





…でも勝つのが当たり前になった時の空虚感を押し付けるのもどうなんだろうねって経験から言ってみる


最悪バスケが嫌いになる位なんだ。そんなのもう見たくないんだよね。聞きたくも無いし




だからボクの下で強くなるなら優先すべき点を変えてもらいたい。最後は笑って終わりたいじゃないか


後悔ひとつなく、心の違和感ひとつなく













__オレはそうやって生きたかった









ようやく伸びてきた右手は固く努力をし続けるバスケットマンの手が強く握り返して「頼むぞ」と太陽の様に笑った

オレも俺もと不良先輩が握手する手に自分の手を重ね実に暑苦しい


…だけどさっきまでの不良先輩とは思えないほど嬉しそうに手を握るし笑うものだからこの人たちは本当にバスケが好きなんだと伝わって悪い気はしない











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