黒子のバスケ

□オリオンのままに 9Q
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テーブルに顔を埋めたテッちゃんの疲れ切った声がする方へ視線を戻す




「…アキラくん君は赤司くんとだけ恋愛してください。僕は止めてください。遊びでやるのは勘弁してください」

「はい。黒子先生」

「イケメンはイケメン同士イチャついて薄くて高い本のネタをふりまけばいいんです。あのクラスの大半はネタを拾い活用してくれます」

「まって黒子先生。本音仕舞って!お願い!」

「あ、はい」






…ちょっと見ない間にボクの天使が”腐”に染まっていたようです

堕天使テッちゃん?あら可愛い


そう思った途端無表情を捨てくわっと鬼の形相でボクを睨みつけるテッちゃんに恐怖を感じてビクっと震える








「だから、僕で、フラグをたてるなと…!!」








天使フラグか?あいつがボクの頭の上をフラグに変身したのか!!

必死で弁解を述べてバニラシェイクを1杯奢ることでその場は落ち着く






…簡単に可愛いとか思っちゃだめなんだね。テッちゃんをそう思えないのは残念だけど仕方ないか



ズズー。テッちゃんが本日3杯目のバニラ摂取中



ちらり
テッちゃんがこちらを窺うように視線を配るのを首を傾げながら見守る







ぼそ

「小悪魔系で鉄壁無表情を落としているんですね。イケメンだからそういう雰囲気になるんですよ」






…なんだかチクチクと刺さる言葉の棘が痛い。テッちゃん大分変わったなぁ

まぁ新しいテッちゃんを見れただけいいか。あ、これフラグじゃないから!





まじまじとボクを観察するフラグの王子様に恐る恐る尋ねたい事を聞く





「ねぇフラグの王子様。ボク聞きたい事あるんだよ」

「なんですかその称号」

「根本的に間違っていると思うんだけどボクと征ちゃん。互いに恋愛感情は無いって確認しあっているんだよ。フラグなんてもう折れてるんじゃないの?」




暫しボクの頭上を見た後首を横に振りながら続ける







「折った先から新しいフラグ立ててるから大丈夫です」





今のフラグで何本目ですかコレと可哀想なものを見る目でボクの頭上を見るテッちゃん



ちなみにボクが見てもただの天井しか見えない。テッちゃんの才能は本当に異才だよ




「…じゃあ恋愛感情の話はもう昔の話というかフラグになったんだね?」

「でしょうね。2本位前のフラグの話だそうです」





…会話してるのフラグと!??

テッちゃんの視線ずっとボクの頭上のフラグだからね…少しはボクを見てよ





ぽきり


「ダァアア!!!!折れた!」



突然大声を発したテッちゃんはフラグが折れたと叫ぶ。時間が時間だから客はいない。今は2人だけのようで迷惑をかけてなくてよかったと胸を撫で下ろす







「なに悠長な事悟っているんです!君は何故フラグを大事にしないんですかッ」

「…だってフラグはもうちょっと頑丈かと思ってたもん」

「イケメンだからもんを使っても許されるんです爆発しろ!」






また怒られた。でも数時間前に比べたら大分昔のように話せた気がする

それならいいかと頬杖をついて怒るテッちゃんの水色の瞳をまっすぐ見る


あう、と言葉に詰まるテッちゃんを見てこの方法は使えると理解した。笑う顔より真面目な顔に弱いんだね

ふいっとボクから顔を背け拗ねた声で小さく零す





「…赤司くんが可哀想です。こんなにアキラくんがフラグを折りまくるからいつまでたってもすれ違いますよ」









すれちがう。その言葉が胸に突き刺さる








眉を寄せ吐き捨てる口調で言うボクの声は自分でも驚く位低くてまるで地獄の底からでてきたようだ











「嫌だ。征ちゃんとすれ違いたくなんて無い。あの子はボクのだよ」












言った後にハッと気付く


ボクは今、なにをいった?






ボクの考えが読めるかのごとく丁度いいタイミングでテッちゃんの真面目で冷静な声が耳を通過して脳を揺らす














「アキラくんは赤司くんを自分のものだと主張した…それは君自身が本当に思っている事なのではないですか?」



「アキラくんが意地張って認めて無いだけで2人ともお互いに想っている事から眼を背けているだけでは無いですか?」






やめて。まって。だまって

言いかける言葉を強制的に呑ませるのは本能?心?ボク自身?


きっとボクは認めたくないだけ。でも認めたいから代わりに誰かに言ってほしいなんて…矛盾してる








「君は、誰よりも赤司くんを」
















___好きなのではないですか









どくん、どくん

心臓が跳ねて問いにそうだと答えてるように思える



自分では認めたくなくて情けなくて

誰かに言ってもらってそうなのだと自覚したいなんて変だよ

ああ。でも自覚しちゃったらもう止められない









さっきテッちゃんに会った時みたいに熱くなる体がどこか歓喜してる感覚に陥る

じぃっとトマトより赤くなるボクを観察してる視線に気付き逃げるようにテーブルへ顔を伏せた

テーブルの冷たさが丁度いい。そう思うボクのブレザーから着信音が鳴り響く






ハッとテッちゃんから声が上がったと思ったが取りあえず通話ボタンをタップして未だ熱い頬へ携帯を押し付ける

通話相手はいま1番ボクの心を揺さぶる人











「…ねぇいつ帰ってくるの」


寂しそうな声にバッと顔をあげ壁にかかる時計の針を見て冷や汗をかく






現在の時刻
PM10:25





「……アキラ、ねぇ」

「せ、征ちゃん。あの今から急いで帰るよ!そしたr」

「もう待ったよ。散々待ったのにアキラ帰ってこないってどういうこと」







ああ、段々不機嫌になっていく声色にくしゃりと前髪を握る

自分のことで一杯で家で待ってる征ちゃんを放置だなんてそりゃフラグだって折れるよね




フラグの王子様を盗み見れば新しく出来たフラグが折れない様に祈っている。願いが届いてほしいよ






いまごめんと謝っても逆効果だと判断したボクは無言を返してしまう





するとグスッと鼻を啜る音がきこえ征ちゃんがあの広い家でひとり泣いてるんだと痛む胸がそっと教えてくれた









「アキラ、この家にひとりって寂しいね。なんで俺いまひとりなの…!」




本格的に泣き声に変わり最後の方は泣き叫ぶ声を出す。征ちゃんを今すぐにでも抱き締めたくて席をたつ


テッちゃんに眼で帰ると訴えれば無言でうなづいて手を振ってくれた

安心して鞄を肩にかけてアメリカでコートを駆けまわっていたあのハイスピードで店を出て家路を急ぐ







征ちゃんが少しでもボクの声が聞こえる様に


征ちゃんが少しでも安心してくれる様に


通話を切らないで人気の少ない夜道を走る








「アキラ、まだぁあ!」

「はやく、もう待ちたくない、やぁ」

「…っひ、く。アキラこえきかせてよ…!」





普段強気な征ちゃんの今の弱った声は胸を締め付けて痛くて仕方無い

顔をぎゅっと顰めて声を絞り出す






「征ちゃん。いま向かってるよ」

「いま、帰ってるから。すぐ抱き締めるから、もう少し待ってて」

「征ちゃん…泣かないで」








今まで本音を隠して認めずに切り捨てた言葉を


軽い口調で出して君を惑わした言葉に本音を乗せて



今征ちゃんに言えばもっとも安心してくれるんじゃないかって思う言葉をいってもいい?

少しだけ上がる息の所為か心臓が煩い。でも頑張れと応援してくれてる気がする








「征ちゃん、ねぇボク征ちゃんを安心させる魔法の言葉を知ってるんだよ」

「…は?っなに、きいてあげるから早く帰ってこいよ、ばかぁ」

「うん。今部屋の前だから、っは、もう少しまって、開いた!!」

「ついたの…?アキラ、の部屋にいる」







鞄をリビングのソファに投げ捨て螺旋階段を1段飛ばしで駆け上り自室のドアを開けると同時に赤い髪がボクのほんのり上気した頬に触れそのまま首元に埋まる


首元に離さないと主張するようにぎゅっと両手が回る。征ちゃんだと理解した途端に床に崩れ落ちて2人してぺたんと冷たい床に腰を下ろす


ぎゅ、としがみつく征ちゃんの細い腰に恐る恐る両手を伸ばし引き寄せる。近づいた征ちゃんの首元に自身の顔を埋めて2人の距離は今隙間が無いくらい互いにしがみ付いている




シャワーに入った後なのかボクと同じ匂いがする髪を愛おしげに頬をよせ耳元で呟いた















「……すきだ。大好きだよ、征ちゃん」



征ちゃんからの返事は無くてただスッと赤い眼から零れる涙をそのまま嬉しそうに笑って















征ちゃんから口付けた














それが何よりの返事だと理解して触れ合う唇に笑みを描き征ちゃんの髪を掻き揚げ引き寄せた












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