黒子のバスケ
□オリオンのままに 9Q
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時間:20時半過ぎ
場所:マジバ
3軍と1軍の練習後の居残り率の違いは歴然。案の定征ちゃんとむっくんも居残りしてる為自然とボクとの帰りも合わなくなる
ボクが居残って練習すれば何故か皆が口をぽかーんと開けて足を止めてるから気を使うんだよね。ただのドリブルシュートのどこを見ているんだか…
まぁ今回はロングシュート決めちゃった安心感から帰ろうとしたボクがいけないんだろうけどね。あーやさぐれた心を癒してほしい
……征ちゃん家に呼ぼうかな
ついでに泊まってもらう。それで一緒に寝ようか
マジバの店員さんにストロベリーシェイク(Mサイズ)を頼み待っている間にメールを作成して送信
今の時間なら居残り練習も終えて着替えている頃かな。むっくん努力嫌いだから嫌々やってるんだろうなぁ
簡単に想像つく情景にふふっと笑いがこぼれると同時に震える携帯
画面には赤司征十郎と表示され
calling
…電話?メールじゃなくて?
空気を読んだようにプライスレスの笑顔でシェイクを渡してくれる店員さんに感謝を述べシェイク片手に奥の席へと移動
席についてからまだ鳴っている携帯を通話モードにして片耳につけて名前を呼ぶ
「征ちゃん?」
「…おそい。切ろうかと思った」
不機嫌なんですね
後ろの方からむっくんのボクの名を呼ぶ声が聞こえてまた笑いがこぼれてしまった
ハァと大袈裟に溜息をつかれて優しくなった征ちゃんの声が鼓膜を刺激する
まだ声変わり前のアルトの声なんだけど落ち着く。できれば会って聞きたいなんて
「機嫌いいね」
「そうだね。征ちゃんの声きいたからかな。すごく好き」
「_____」
息を呑む声が聞こえて声に成らないというか悶えてるのかな…あ、むっくんが征ちゃんの名前を呼んでだいじょうぶー?って言ってる
携帯から聴こえる声がのんびりとした持ち主の声に代わる
「アキラちん?何言ったの?赤ちん顔真っ赤d」
「変な事いうな!!!」
「…事実だし!赤ちん耳まで真っ赤じゃん!!」
「〜〜ッ」
ちょっとしたコントみたいな2人のやり取りはとても癒される。シェイクを少しずつ口に含んで飲む。アメリカとはサイズの規模も違えば味も違うんだなぁ
物珍しそうにシェイクをまじまじと見るボクはふと前の誰もいない席から視線を感じつい、とそちらを向いて携帯を床に落としてしまう
落としたままの格好で固まるボクは酷く滑稽だろう。電話の向こう側の2人が落とした音で心配するような声ですら遠くの出来事に感じる位眼の前の人物に眼を奪われる
それはずっと会いたかった人
それはボクに手を差し伸べて笑いかけてくれた人
それはボクが何よりも
「___お久しぶりです。アキラくん」
大好きで神さまのような人
「テッちゃん…?」
黒子テツヤは懐かしい彼特有の呼び名で呼ばれた事にくすぐったい気持ちになりつつも薄っすらと笑みを浮かべ呆然とするアキラを見る
うそ。うそ、ゆめ?テッちゃんが、オレの眼の前に、オレ、あ、ボクの…
「アキラくん落ち着いてください。折角のイケメンが台無しですよ…ムカついてきたので顔面壊していいですか?」
純粋無垢そうな顔立ちでさりげなく毒舌を吐く水色の儚げな少年
悶えるというのはこういうことなのか
これでもかと顔が赤くなりふるふると体が震え眼の奥がつんと熱い
抱き付きたい。会いたかった眼の前の人に。でも我慢してるボクは偉い
声だしたら感動のあまり舌噛みそうだよッ!!
そんなアキラの態度に気付いた黒子はマイペースにお気に入りのバニラシェイクを飲みながら淡々と問いかける
「悶えるのは構いませんがそろそろ携帯を拾った方がいいですよ」
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