黒子のバスケ

□オリオンのままに 8Q
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最初の冷たく淡々とした態度からのビフォーアフターを遂げたコーチは顔をトマトより赤くして叫ぶ







「キャプテン、藍澤。お前ら外周30周いってこい!今すぐ!ハリーアップ!!」

「ハリーアップって?」

「早くしろということだよ…ですよ」




先輩に最後に気を使ったらしく敬語が微妙な感じで付属したようだ






最後までコーチ英語の発音ヘタだったな

はい。でも気迫は満点だね!

以下同文!









「はやく行けっ!!あと藍澤、3軍に行け。行っていいから俺が英語ヘタな事言いふらすなよ!」







必死で小さくなる背に叫ぶ内容に赤司は無表情かつ同情をこめてコーチから顔をそむけた





「……この部活大丈夫なんだろうか」

「かわってるよねー。キャプテンアキラちんみたいだし赤ちん苦労するかもね」

「…やめてくれ。俺が心労で倒れる」









その後数人の振り分けが終了して各軍に別れ練習となったのだった







アキラは3軍に舌戦の末に腕づくで入り赤司と紫原は1軍へと入った










常に一緒だった赤司とアキラが初めて別れた日となった




アキラは嬉々として

赤司は胸中を抉るアキラの言葉をリピートさせながら




各体育館へと姿を消す。そして冒頭へ戻るのである









* * * *












時間:ロードワーク中







走っている為か息が少しずつ早くなる。それは周りも同じらしくて早い人はもう息が上がっている



紫原は前を走る赤い彼を見つめぼーっとしながら足を動かす







「(赤ちんが俺に八つ当たりしたのは間違いなくアキラちんのあの言葉の所為だよねー)」





俺ちょっと赤ちんに乗っただけだし。今回もアキラちんが赤ちんの不機嫌メーターを笑顔で振り切らせただけだし



…でも3、いや2割位は俺もいけなかったから赤ちんに後で何かおごろうかな、と考えつつテスト中に言った言葉を思い出す













* * * *




「さすが征ちゃん。ボクの事はお見通しってね」


「茶化すなよ」


「はいはい。まぁ言っちゃうなら__」















「1軍(そこ)にはボクの会いたい人はいないだろうから」







***********




その時のアキラちんたら見せた事ない様な愛しい人を見る眼というのか、本気で大事な子のことをいっているんだと伝わる顔で瞳で言っていたんだよね


普段のへにゃっとした笑みだけじゃなくて目元を赤く染めて女の子みたいな表情浮かべちゃって…雰囲気も甘く感じちゃう位だった


雰囲気も食べれたらよかったのになー。きっと飴よりも甘い味がしたんだろうにねー






まぁ直視した俺がこんなにも言うんだからその時俺の腕の中にいた赤ちんだって同じ光景を見ている訳





アキラちんがその言葉言って背を向けた瞬間俺の腕に猫みたいに爪立てるんだもん


警戒してる猫みたいにさぁ


んーでも警戒ではなくて怒りを鎮めようとしてたっていう方がしっくりくる








赤ちんの表情は俯いちゃっててみれなかったけどきっと哀しそうな顔してたんじゃないかって思う









本当赤ちんアキラちんのこと好きだよねー?俺も2人のこと好きだけどあの言葉きいても「へー」位しか湧かねーもん


赤ちんが今も怒っているのはアキラちんが自分よりほかの人を優先させたってことも当てはまるだろうしあの表情も原因でしょ














それって俺が思うに



「(嫉妬じゃねーの?赤ちん)」















数日前紫原と赤司がアキラの家に泊まった頃から赤司がアキラを見る回数がとても増えたのをお菓子を食べながら気付いた










泊まる前の視線は少しの呆れと親心が混じり合った暖かいモノ

泊まった翌日の視線は少しの照れと興味、そして切なく淡い感情が赤司の瞳に灯っていた







紫原自身が極上のベッドで深い眠りについている間に2人の間に何かあったのだろうな、とすぐに分かったが口に出さずにお菓子毎飲み下す













「(赤ちんのあの眼は…)」






先程のアキラが恋する少女の様な照れた笑みを浮かべたあの姿に酷似していると本人は無自覚なのだろう



淡くて恐らく無意識で隣にいて当たり前のその背中を見つめる赤ちんの視線に、表情にアキラちんは気付いてない?

それとも気付いてない振り?












__どちらにせよ



「(恋してる眼にしか見えなかったなー)」






だいすきな2人がしあわせそうに笑ってくれたらいい


欲をいえば赤ちんが報われますよ―に!













見え始めた校舎へスピードをあげる先輩たちに置いていかれない様にアスファルトを蹴りあげた

前にいる赤司の隣に並び走れば汗が頬を伝うのをそのまま赤司が小さく笑いかけてくれた


アキラに見せる笑みでは無くて紫原に見せる親のような穏やかな笑み









「赤ちん」

「ん?」

「…だーいすき」

「…そうか」










アキラちんにもわたあめみたいな甘い笑みを直で見せればいいのに

なんで背中にだけそんな笑みをするの。勿体無いよ








いつかこの台詞を赤ちんに言ってあげよ―



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