黒子のバスケ
□オリオンのままに 8Q
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時間:振り分けテスト中
場所:第4体育館
バッシュのスキール音
ボールの弾む音
そして
パシュッ
ボールがネットをくぐる音
ああ自分はバスケをしていると実感できるその感覚を俺は好んでいる
「赤司。1軍」
コーチの淡々とした声が俺の至福の時間を邪魔をする。まぁ仕方ないか。今は振り分け中なのだから
床に転がる先程俺がシュートしたボールを次の番のアキラが拾い上げ抱き抱える
とたとた、と駆け寄るアキラが自分の事の様に俺の1軍入りを褒める
「征ちゃんおめでと」
「ああ。アキラも1軍入りするんだろ?」
割と悪い意味でコイツの裸をみる俺は知っている。発達途中の体に比例する量の筋肉が全身にバランスよく存在することを
しなやかな付き具合は細身の猫を思い立たせる程。瞬発力はほかを寄せ付けないほどになるだろうに
そしてアメリカでストバスをしていたこと。本場仕込みなら帝光中の1軍入りなんて容易いだろうと俺は踏んでいる
その思考のままアキラに1軍入りの希望を聞けばきょとんとした顔をされそのまま俺を停止させる言葉を容易く吐き捨てる
「は?ボク1軍なんて入るつもりないよ」
思考回路停止
電池の無いロボットのように呆然とたちつくす
……アキラが1軍入りしない?なんで?
こいつの実力は確かに知らない
だが実力がないはずがないと俺は確信していた
アキラが俺に隠したがるアメリカでの出来事はただの遊びごとではなかったと遠まわしに俺に言ってるのを見逃さなかったから
そんな俺の考えを知らずにアキラは抱えたボールを床におき空いた両手で俺の背中を押してコートの外へ移動しながらマイペースに続ける
「征ちゃんはボクを買い被りすぎ。今のボクはそこまでの力は持ってないよ」
今の、の所が強めに強調される
俺はアキラじゃないからその意図は分からない
それは未来は期待していいということか?
過去の自分は、ということか?
ぐるぐる考える俺は紫原に預けられアキラの手の温度が少し冷たく感じた
背中から手を離されたと理解した瞬間俺に背を向けてテストを受けに行こうとするその手首を咄嗟に掴む
びっくりして眼を大きくさせる藍色と反射的に手を掴んだ自分にびっくりする赤色の視線が交差
赤司が平常心を瞳に灯し小さく零す
「…本当は、ちがうんだろ」
今の自分には力がない
その言葉はどこか表向きに聞こえて裏がある気がしてならない
握る手首越しにアキラの脈がどくんと一際大きく聴こえた気がした
当の本人は珍しく真面目な顔をしてニヒルに笑い返す
「さすが征ちゃん。ボクの事はお見通しってね」
「茶化すなよ」
「はいはい。まぁ言っちゃうなら__」
アキラは本音を告げると俺の手を優しく外しいってきまーすと普段の様に明るく言ってテストを受けに行った
沸々と沸き立つ胸中は誰に吐き出せばいいのか
さりげなく俯く俺の腹に長い手を回し捕獲している紫原の腕に短い爪をたてると案の定「痛いよ赤ちん」と抗議された
知らない振りをして爪をたてる項垂れる赤い髪を紫原は慰めるように撫でなにやらコーチと話すアキラを見やる
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