番外編

□聞いてよ黒子!
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10万打リク ソラヤ様

内容:未来編の黒子と赤司の絡み

* * * *




マジバの本場であるアメリカからわざわざ緊急来日をした人物に連れられ、日本の思い出深いマジバでバニラシェイクを啜る


どの季節でもバニラシェイクは美味しいですね。毎日2杯は献上して貰ってますがなにか?

ストローで啜りつつ妙に熱弁を振るう交友が不満をぶちまける姿を眺め、半分以上なくなったシェイクから口を離す

「きいてるのテツヤ!アキラったら中継テレビ越しにボクに『愛してる』なんて言ってくるんだよ!?」

「…」

「あの放送一回きりじゃなくて何度も何度も…!もう、リゲルとか関係者にどれだけ囃されたか…っ」

中学、高校の時よりも長く艶やかに伸びた赤髪を振り乱し愚痴る内容に遠い眼をする黒子

投げ槍に返す言葉は実に適当である


「ええ。バニラシェイクは神ですね」

「そうでしょ!?それでね…まだまだあるんだよぉ…!アキラのばかぁ」

とんだ会話のキャッチボールである。かれこれ三時間はこれが続いてるのだから余程愚痴が溜まっているのだろう

とはいえども三日に一度は連絡を取り合う仲だというのにどれだけ溜め込んでいるんだ

「征くん。おかわりください」

「いいよ。だから後二時間は付き合って」

「いいですけど…ハァ」


ガジガジ。ストローを噛む癖がついたのはいつからだったか

運ばれてきた幾度目かのシェイクを一噛みしてはセイジュを見て顔を真っ赤にしたまま早足で去る店員に溜息

「征くんを見てあの店員さん顔を真っ赤にしてますよ。女泣かせですね」

「は?」

黒子の言った意味を理解しどうでもよさそうに長い髪を払う


「ボクはアキラじゃないと満足できないもん。他の人間なんて興味ないね」


にっこりと爆弾投下。取って付けたように「テツヤ達は違うよ?」と返されても…

「ありがとうございます。だから早く旦那のとこに戻ってください」

「テツヤのばかぁっ!!」

うわぁぁん。両手で顔を隠す仕草が似合う男はこの世でキミだけです

口に出せば嘘泣きだったらしくピタリと声は止み指の間からじとーっとオッドアイが覗いている


「ばかは征くんもですよ」

「違う。テツヤとアキラがばか。ばかばかっ」

「旦那の事を惚気に日本まで来る征くんが…誰よりもばかだと思います」

「な、ば…っ」

指の間から覗く眼が大きく見開き、肌が髪と同じくらい赤く染まる

セイジュ自身黒子にぶちまけた内容を思い返せば惚気としか聞こえないと漸く認識し、思わず赤面を晒してしまう

アキラ本人がこの場にいれば隠し切れない耳の部分を摘まみ、艶やかな低音で追い詰めてくることだろう…そこまで無意識に考え、頭を緩く振り白旗を振る


「……ボク、ばかでいい」

「なんだこの可愛い生物」


思わず口調崩壊するがそれほど愛らしい姿に、盗み見をしてる周囲からガタガタッと机から崩れ去る音が重複

いつかの学生時代にも腐の民が奏でた音で黒子はふと懐かしくなる。右手には携帯で録画しながらである…さすが腐大臣様


「テツヤ。それ頂戴」

「…飲みかけですけど」

「ボクばかだからわかんない」

「いや、別に構わないですから拗ねないで下さいよ…はい」

すっかり不貞腐れた様子でムスッとしながらバニラシェイクを飲むセイジュの姿を一枚撮り携帯をしまう

やりすぎたかなと思いつつも何かに気付いたらしいセイジュが意味有り気に見つめてきたので首を傾げる


「バニラシェイクは嫌いなんて言ったら、怒ります」

「違う違う!」

ころころ変わる表情に「どんな顔をしても絵になる」と言っていたアキラの言葉を思い出す

どっちも口を開けば相手の事ばかり惚気ている。学生時代よりも悪化の一途を順調に辿っている二人は、眼に見える形で幸せなのだろう

いいぞもっとやれ。世界は求めているのだ


「テツヤが飲んでた奴はさ…」

形の良い唇から噛み跡の残るストローが現れ指先でツンツンと突きニヤリと笑みを向けられる

「ぜーんぶ噛み跡残ってるけど、欲求不満?」


…欲求不満?僕がですか…?

「だってね、こういう噛み癖があるのは欲求不満の現れだというじゃないか。”俺”でよかったら相談にのるよ?」

「!」

征くんとは違う理性的な笑みに眼を見開き、そっと安堵の笑みを零す

「それは嬉しい話です。キミとも久しぶりに話をしたかったので」

「そう?”ボク”が言ってた残りの時間”俺”と話をして時間を潰そうか。その頃になったらアキラが来るだろうし」

嬉しそうに眼尻を下げる”ロウ”は学生時代とは違う感情を籠めアキラの名を呼んでいた

嘘を嫌うアキラと同じでセイジュも嘘を嫌う。そしてロウも同様だからこそ、彼は変われたんだと…ホッとする


「…ロウくんは、アキラくんのこと…好きですか」

以前セイジュに幾度かしたことのある質問をロウへ送る。ふにゃ、とした笑みを返したセイジュとは違うが記憶に残るキツイ顔では無く…

「…好き」

ただただ、言葉以上に想いが込められた感情が笑みにでていた


もう彼は大丈夫だ。そう、決断し…欲求不満の原因である彼の愚痴を聞いて貰う為口を開く前に…

ロウから奪ったバニラシェイクを吸いあげ、齧る。お茶目を露にし舌で唇をなめた


「…間接キスですね?」

「そうだね。テツヤの彼氏さんに怒られるのは嫌だから、内緒ね」






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