番外編
□Jealousy Bourbon
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イライラする
「でね桃ちゃん。テッちゃんってばこう言ったんだよ」
「黒子くんが?うそーっ」
「ホントホント!」
イライラする
「丁寧な言葉使う子がいきなりタメ口とか…なんかくるよね」
「…想像するだけで…」
桃井がふらついた瞬間アキラがそっとその体を支えた
あのアキラが”女”に触れた
それだけで堪らなく不安になり苛立ちと競う様に赤司の胸中で暴れる
「大丈夫?」
「あ、ありがとう」
何故か頬を赤らめた桃井。盗み見ていた赤司が見なければよかったと後悔
ふいっと顔を逸らし嫉妬で歪む顔をタオルで隠す
「…(最悪。あの顔、恋してるみたいじゃないか)」
桃井に取られる?アキラを?
「…そんなの嫌だ(ぼそ)」
考えれば最近2人がやけに仲良く話している
クラスは違うがすれ違う廊下や階段、食堂など赤司がそばにいる時でもずっと話してる事が増えてきた
部活中の今だって休憩中になれば話しこんで…
アキラが桃井に触れるつい先ほどまでなら特に気にも留めていなかったというのに
…1度気にすれば女々しくも全てを疑ってしまいそうになる
このままではアキラの事さえ疑ってしまいそうで怖い。桃井の事を無意識に睨みつけて距離を取ってしまいそうになる
「…っ、(それもいや、だ)」
どうしたらいいのかわからない
気にするなと自己完結した所で果たして実行できるか…自信が無い
自分の中でどう対処したらいいのか分からなくて少しずつ自分を追い込めてしまう
普段の赤司らしさなどアキラが関与する事柄において意味をなさない
自然と涙腺が緩まりぶわっと泣き出しそうになるのを唇をかみしめて堪え少し離れた所で倒れてる黒子の元へ急いで駆け寄る
「黒子っち!黒子っち!」と煩い黄瀬を跳ね除け床に伏す黒子の頭部近くで膝を折りタオルで顔を隠しながら助けを求める
黒子にだけ聴こえる様に小声で声を掛ければのっそりと寝がえりを打ちぼーっと赤司を見上げた
「くろこ…」
「赤司くん、?」
どうしましたか。そう優しい声で問われればぶわっと涙腺が崩壊して慌てて顔をタオルごと膝に押し付け膝を抱える
俺どうしたらいいのくろこ
じわり、顔を押し付ける膝に暖かい涙の温度が伝わる
きゃんきゃん騒がしかった黄瀬が「え赤司っち泣いて…」なんて信じられないモノを見た様な声を出すので奴の足先に振り上げた拳を全力で落しておいた
ちなみに嫉妬成分100%の純度を誇る
「モデルの足っ!!!!」
「大声ださないでください黄瀬くん。赤司くんちょっと場所移動しましょうか」
「ん…」
黒子がゆっくり立ち上がり赤司の手を引いて違う場所へ誘導
痛みに患部を抑え黙りこむ黄瀬の髪をそっと撫でびっくりした顔の黄瀬に笑みを浮かべ
「ちゃんと帰ってきますからここで待っていてください…涼太くん」
囁くように言った言葉に黄瀬が呆然と黒子の去っていく背中を眼で追い続け姿が見えなくなった時に我に返った様に慌てて顔を腕で隠す
「…やべぇ。落ちそう、だ」
動揺を隠さずに呟いた言葉。熱に浮かされたように吐かれた言葉を盗み聞きした腐の民の1人はポツリと呟いた
「やべぇ腐大臣様のハーレム力まじパネェ」
腐の民は興奮のあまりひとつ見逃していた
藍色の彼が興奮マックスの桃井のマシンガントークを聞き流してまでも水色と赤色の彼等を訝しげに視線で追っていたことを
心配そうな声も表情も聞き逃していたのだった。新刊が没になるわけである
「__征ちゃん?」
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レギュラー陣に与えられたロッカールーム
休憩中とはいえ誰もいなかったのが丁度良かった。ここなら赤司がタオルを外しても問題は無い
部屋に入れば赤司がその場で蹲る。肩が震えており必死に涙を堪えているらしく力が入っていた
後を追う様に黒子もその場で膝を折る
そっと赤司の柔らかい髪を撫でればバッと黒子の体に抱きつきぎゅうぎゅうにしがみ付いてくる
突発な事に尻餅をつく。やがて改善されつつあるものの”初”がじわじわと表面化しやんわりと赤司と距離を置こうとすれば抱きつく力が増す
涙声で申し訳なさそうに言う
「ごめ、…っい、まだけ」
乙女赤司の泣き顔はアキラはよく見るだろうが黒子は数える位しか見た事が無い
カメラを常備していなかった自分の失態に内心後悔しながらも抵抗する力を抜き赤司の好きにさせた
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