黒子のバスケ

□オリオンのままに 31Q
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時間:授業中






現代において中学生でも携帯は各々の理由から所持している場合が多い。少しの暇を埋めるツールとして便利なのだ









それは授業中にも当てはまる












ピンと伸びた前の座席の赤司の背に隠れるように無駄に伸びた背中を丸め堂々とスマホを弄る藍澤アキラ


もはや教師は発見しても何も言わない。言っても無駄であり授業の妨げにならない限りは放置しろ、とブラックリストに載っているからだ









時折噛み切れない欠伸を洩らしながらスマホをタップしてはスライドを繰り返しふと気になる情報に指を止める



隠しもせず眼前にスマホを近づけじぃっと情報を読み終わればキラキラした期待に昂る瞳と表情のまま楽しそうに声を発する

















「闇鍋したい!」

















マイペースかつ自己主張の強い人格に成長すると突発的な行動をしてしまうらしい

根っからの教師の敵である







バッと視線がアキラに集中するが羞恥心をアメリカに置いてきた彼には大した攻撃力になる筈もない






教師が非常用のブラックリスト対処法のテキストを開きその有能ブックに乗ってる通りに対処法を下す

授業は止まっているというのにノートに何かを書き続ける赤司に教師は声を掛けた












「赤司」

「はい」

「藍澤を頼む」

「はい」














藍澤アキラが授業妨害に至った場合保護者の赤司征十郎に一任し授業に戻るべし

過剰に他生徒が反応し吐血する可能性がある為保健室までの通路の確保を確認すべし




※サボリ、授業態度の悪さ、授業中の携帯の使用は改善の余地が見られない為放置を推奨する




__ブラックリスト藍澤アキラの対処法ページより抜粋











慣れた返事を返す赤司が勉強道具一式を机に仕舞い込みくるっと後ろの座席に面と向かうように座りひょい、とアキラのスマホを奪いそのまま空いた手を握る




ビックリして藍の瞳が大きく開き直ぐにわくわくした様子を隠さずに瞳に映し笑顔を返してきた









それを見て赤司が眼をぱちくりさせる










…アキラって素は大人びてるから子供らしいこんな姿見るの珍しい、かも








珍しい、と思いつつも惚れた笑顔を向けられれば赤司自身もふふ、と自然と微笑んでしまう

手を柔く握り合い手の輪郭を指先でなぞったりつついたりして小さく戯れながら赤司が口を開く









「さて…アキラさん。闇鍋したいんですか?」

「そう!闇鍋!こたつ出して!やろう!皆呼んでさ!」

「うん。ちょっと落ち着いてから話そうか」








興奮し切ってる今のままではアキラの手綱を握る赤司と話しても興奮は収まらないと踏みスキンシップによりテンションの消火活動に移る







弄んでたアキラの手を赤司の頬へそっと連れて来て触れさせる。ほぼ強制的に赤司の頬へ触れさせられたがアキラは負の感情を一切持たずされるがまま自由にさせた









手の甲には赤司の白い手が添えられ掌にはスベスベ且つ餅並みに柔らかい頬が隙間無くくっつく






時折赤司がはにかみながらスリ、と掌に頬擦りしてくるのがたまらなく可愛い






触れてる体温から少しずつ沸き立つ欲求が沈静されていく感覚。触れるだけで現代科学が手足生えて逃げるレベルの現象がこのバカップル限定で起こるようだ






ふに、と赤司の柔い頬を掴めば「ひゃめろぉ」と嫌そうに言われる。S心が燃え上がりそうだが場所を考えなんとか意地悪く笑う事で抑え込む






ぶはッと周囲から誰かが鼻血を出したが慣れた手付きで保健委員が吐血生徒を連れ出した









…どうやら赤司の思惑通りハイテンションは落ち着いたらしい。赤司の頬の犠牲くらい安いものだろう











やだやだと首を振る赤司。心なしか目元が濡れている気がする








「ひゃめろってばぁ!」

「後少しでお前が喋り易いアキラくんが降りて来るから我慢しろよ」

「ぅぅぅ…!!なく、ぞ」

「舐めるぞ」

「ひょこ、を?」

「…さぁ?」












割と混乱してる赤司はまだ気付いていないが学校用の対応では無く素の対応をされている事に周囲の興奮度はマックスを振り切った






猫被ってる時は些か地声より高めのハイテンションなのに赤司へはしっとりと大人びた声色にテノール

悪戯笑顔を浮かべるアキラがワンコ系じゃなくて俺様系だった真実に腐の民のテンションはリオのカーニバルを越えた










この場にブブゼラがあったら全員で吹き鳴らし全クラスの腐の民へ知らせたろうがこの場には無い。実に残念だ、と黒子はムービー画面で2人をズームしながら思った













ふにふに



赤司の頬を存分に堪能したアキラが満足そうに解放すればギッと潤んだ赤眼が睨みつけてくる。周囲が怖がろうともただ可愛い愛しい子が上目使いしてるようにしか見えないアキラが思う事はただひとつ



それを聞いた赤司が状況をようやく認識















「誘ってる?」

「…素のアキラだからあんな意地悪だったのか」

「なぁ誘ってる?」

「…どうりで俺がこんな公共の場で泣かされる羽目になる訳だ」

「セイジュ。無視すんじゃねぇよ」

「無視してない。だいすき。だから暫く黙れ」

「…苛め過ぎたか」











丁度良くチャイムが鳴りただバカップルをアイドルさながらに呆然と見詰めてた教師が思う様に進まなかった授業と妻帯者である自分があそこまでイチャつくなどここ何十年皆無だった事に虚しくなり足早に退室




不運な保健委員が細長い簡易版トランペットのような不思議なものを片手に保健室から舞い戻り真顔で一言













「隣のクラスの緑間からブブゼラ奪って来ちゃった」













さぁ…誰が腐の民に知らせる大役をやろうか?









第一次ブブゼラ争奪戦(腐)が開催されたのは言うまでも無い






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