黒子のバスケ

□オリオンのままに 29Q
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場所:屋内プール場



体育の授業中にて(初秋)

















帝光中にも勿論プール授業が存在する


普通と違う所と言えば屋内に万全の管理体制に敷かれているプールが授業で使えると言った所か







雨やプール温度による授業の中止が発生しない万全振りに赤司は心底絶望していた






















「…」





プールの授業を不貞腐れた顔で見学中の赤司は噎せ返る程湿度の高いプールサイドにて体育座りのまま揺れる波を見ていた




本日のプール授業で今年最後の機会だというのに。何故俺は半袖半ズボンで見学なんてしてるんだろう









プール最終日の配慮なのか本日はほぼフリーダムに遊んで構わないというのに…何故俺が女子と似たような理由で見学しなければならないんだ!


苛々と湧きあがるのに比例する様にズキズキと腰が酷く痛む


眉を寄せ隣の水浸しで倒れている黒子へ苛立ちをぶつける事にした














「なぁ黒子」

「__は、ぃ」

「溺れた気分は気持ち良かったか」

「絶望的に酸素不足で意識がなくなりますが赤司くんには気持ちいいのでしょうね」

「…そこまでマニアックじゃないよ」







酸素不足+体力不足のダブルアタックにより黒子は溺れ赤司の隣へと救助され安静にしていた

ほんの少し良くなったのか濡れた手でちょいちょい、と赤司の体操着を引っ張ったり露出した脹脛をお触りしたり好き放題にしていた


慣れたもので濡れた感触に一瞬ビクッと震えただけで黒子の濡れた髪を撫で溜息を吐く

















触るなと言わないあたり俺も随分黒子に慣れたものだな












撫でている内に苛立ちも薄らぎやんわりと頬笑む。ちょっと離れた場所にいる見学組の女子のきゃぁきゃぁと感極まる声がプールに響き渡る









思わず撫でる手を止めそちらを見れば空気を読んだ様にシンッと静まり赤司は首を傾げる














「最近思うんですが」

「うん?」







黒子が話し始めると少しずつ静寂が消えていくようで直に元通りの馬鹿丸出しの騒がしい笑い声などが響いた







「クラスの腐女子に僕までネタにされてる気がするんですよ」

「良い傾向じゃないか」

「僕は執筆側の人間です。あ、キスマーク」

「っ!!!」











黒子が赤司の内股を見ながら言った言葉に赤司が一瞬で顔を真っ赤に染め上げる

黒子のニヤニヤした顔と羞恥で眉を寄せた赤司の視線が交差し事情聴取の時間が開幕した
















「赤司くん。何で今日は見学なんですか」

「…知ってて聞く、とか本当にえげつない。メニュー増やすぞ馬鹿黒子」

「なんて恐ろしい副キャプテンですか」









未だ火照る顔を膝に押し付けアキラのタオルを頭から被り赤司は鎖国体勢を築く

ペラっと黒子がタオルの端を持ち上げ赤司を盗み見てるが大して叱りもせずそっと視線を合わす



恥かしげに目元を赤らめ目を細める赤司の姿に黒子は今度は防水デジカメを買う事を決めた










「体育座りして患部が痛くないんですか」

「、ちょっと痛い。俺の下半身と交換しないか」

「名器になっても相手がいないので結構です。僕の体の固さは神レベルですから大変ですよ」

「誰が名器だ」










ばしゃばしゃと波打つ音が響いて2人のタオル内での会話は誰にも聞こえていない事が救いだろう

馬鹿らしい程の下ネタに思わずふふ、と赤司が笑えば黒子が赤い髪が濡れるのも構わずわしゃわしゃと撫でて癒されていた













「わ、黒子冷たいだろっ」

「大丈夫です。すぐ乾くといいですね」

「願望?」










今更ながら黒子の水色の髪と瞳に吸い込まれそうになり赤司はスッと顔を黒子の頬に寄せ驚きで水色の瞳を大きくする仕草を見て微笑み口付けた









音も無くそっと頬に触れた赤司の口の感触に黒子がボッと顔を染め上げ触れた頬に手を当て飛び上がる


ドッドッドッと早過ぎる心拍数を確かに感じながら背後で密かに声を殺して笑う赤司をギッと睨みつけ文句をぶちまけた















「〜〜ッ何してるんですか赤司くん。アキラくんも君も揃いも揃って僕の頬をロックオンしないでください!」

「ふふ、ふは。だって、だって」

「〜〜!全校集会の時校長を人質にとって2人の動画流しますよ本気で」

「ごめんって。流してもどうせ黒子の同胞が増えるだけじゃないか。俺等は今更って感じだもん」

「だもんって何それ可愛い」

「そう?」

「首傾げはあざといです」

「知ってる」












ぷんぷん怒りながらも赤司のあざとさを目に焼き付け永久保存

しかし胸には未だ燻る怒りがあり黒子は赤司の腰に抱き付きありったけの力を込めし返す






ヒュッと息を飲む音が赤司から聞こえ




















「痛い痛い痛い痛い!!!ごめ、ごめんっ黒子!きょ、今日はもうしないッよ」

「今日は?」



ぎゅっ



「〜〜っぃぁ、!!1週間っ」

「もう一声」

「ッいった、ぁ…も、1ヶ月」












1ヶ月、約束ですよ


パッと黒子が赤司の腰を解放すればフラフラと床に倒れくの字に丸まった


余程腰へのダメージが深刻らしく倒れてからピクリとも動かない







赤司の頭部に掛かるアキラのタオルをそっと黒子が捲ると辛そうに眉を寄せ顔面蒼白になった赤司を見て今度は黒子が青褪める

















「(ヤバいですヤバいです。アキラくんにコレ見つかったら僕が現行犯でキスハグの刑ですね)…赤司くん。や、やっぱり1週間でいいです、よっ!!?」











幾度も受けた事のあるキスハグの刑の悲惨な光景を思い出しつつ倒れてる赤司が黒子自身の未来の姿に被って見えた

動揺を隠しきれず震える声で赤司へ妥協案を提示すると同時に黒子の耳にフッと空気が当たる感触がして気持ち悪さに耳を抑えた









プルプルと捨てられた子犬ばりに震えながら攻撃を仕掛けた相手を恐る恐る見やる


そこにはいとも簡単に想像できる相手が軽く据わった眼で黒子を笑って見ていた


















「__テッちゃん。随分楽しそうな事してるね」
















あ、僕終わりました





珍しく薄ら笑いを浮かべてるアキラを見て酷くならないようにと自分の頬を素直に生贄として差し出した














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