黒子のバスケ

□オリオンのままに 28Q
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場所:某コンビニ

時間:部活中





















眼の前にはキャラデザが施された肉まんピザまんetc…勿論普通のデザインのもある

ショーケースの中に入るそれらをじっと見つめる人物等が店員の「またお前らか」と呆れを含む視線を他所に意見をし合う




















「やっぱり初音ミクまんの方がいいって!限定だし」

「えー俺ニャンコ先生の奴もほしー限定だし」

「どうする?カゴの中身全部返せばぎりぎり買えそうだけど」

「絶対嫌!俺のジャガビー!」

「むっくんそれ一応商品だからね。ボク等が毎回迷惑かけてるのに通報しないでいてくれる店長の商品だよ」
















そういえばむっくんと出会ったのもこのコンビニだったなぁと思い出に頬を緩ませてると玩具を買ってほしくて母親に泣き喚く子どもさながらの態度をとってた紫原が残金確認を行い大袈裟に肩を落とす

紫原のでもアキラのでもない財布及びお金はいわゆる部費の一部。湿布やテーピング類を買いに行けと怒った主将に命令され買物を終えた帰りに余った250円足らずの残金で何か買おうと欲望に負けた結果がコレだ

想像以上に値段が張り2人分のお菓子+キャラデザ肉まんは250円を大幅に凌駕してしまいどれを切り捨てるか相談中と言う訳だ。何も買わないという案は紫原の手により粉々に成り果てた















彼これ此処で30分以上こうして談義しているのだから学校に帰る頃には電灯の明かりが必要になりそうだ




















「アキラちん。自分の財布持ってきてる?」

「学校」

「だよね」


















そもそも主将に怒られたのは紫原とアキラが練習中も絶えずお菓子を摂取し続けた結果食べカスが皆のバッシュに詰まり転び易くなったのが元々の原因だった

それから止まる際食べカスの所為で上手く止まらず壁に衝突だとかマネージャーにぶつかって押し倒すラブハプニングが起きたり…それをマネし失敗して床とキスした思春期の男子が多発したのだ










2次被害3次被害と相次ぎ勃発する事故の所為でテーピングや湿布、絆創膏といった用品がみるみる内になくなりとうとう主将がキレてお菓子組2人を摘みだし部費の一部を持たせ消耗した分を買って来いと外に放り出したのだ




八つ当たりとも取れそうだが…








確実に言える事は人選ミスという言葉が以外当て嵌まらない事だろうか























「やっぱりカゴの中身返そうよ」

「嫌だ!アキラちんだってジャガビー食べたいって言ってたじゃん!!ミクなんか見てないでジャガビーを見てよっ」

「ジャガビーは体育館で食べたからそこまで食べたいとは思わないもん。ボクがさっき食べたいっていったのはガリガリ君梨味の事だよ」

「なにそれ俺も食べたい」

「じゃちょっと見に行く?」

「いくっ」


















好きな事には好奇心旺盛な紫原は死んだ眼さようならとばかり童心溢れる無垢な瞳で大事そうにカゴを抱え上げアイス売り場へと長い脚を今世紀最大限に効率的に使い駆け抜ける

そんなに梨が好きだったのかと少しずれた思考を保ちつつアキラがすれ違う女性店員にゆるく謝罪しながら後を追う


















お菓子類の品揃えが良いこの店舗で御目当てのアイスを発掘したらしい

カゴを床に放置し両手の指の間に持てるだけガリガリ君の棒を差し込み器用に持って幸せそうに顔を緩ませている













「えへへ俺いま物凄くこの梨味食べたい」

「うん。ボクも食べたい!体育館戻って雷落とされる前に幸せを堪能したい」

「あらー。アキラちんまた赤ちん怒らせたのー?」

「むっくんの事も凄い眼で見てたよ!征ちゃんのバッシュも食べカス詰まって慌てて止まったら何故か乙女座りしちゃって赤面してたの見た?あの顔見て前屈みになった奴にボクは尻キック決めました!」

「あー…だから峰ちん痛みで絶叫してたの」

「征ちゃんの色気に負ける軟弱なチェリーボーイ共には軽すぎたかなぁ」

「チェリー?なにそれおいしいの?」

「…むっくんの無垢な瞳が胸に突き刺さって痛い」

「?」



















紫原が無垢で純粋なだけかアキラが不純で卑猥なだけか

じくじくと痛む胸に手を当て反省してると客が来店した音が店内に響く

それと同時に紫原が自動ドアに大きく手を振っている

珍しい行動にアキラが紫原が手を振る相手を見ればそこには自分も知ってる人物が立っており真っ直ぐアキラ達に向かってくる



















「あらら。ミドチンなにしてんのー」

「ホントだ、緑間もサボリか」

「お前らと一緒にするんじゃないのだよ!」















本来ならば部活中に理由も無く抜け出す訳が無い緑間がコンビニに出没した今現在が信じられない所だが8割本人ぽいから信じた

あとの2割は眼鏡で判断したのはお菓子組の優しさです
















サボリという不明慮な言葉を投げつけられた緑間は軽くお前らとは違うと叱りつけ床に置いてあったカゴの中身を見て眉を顰め仏頂面でカゴを指差す







「…なんでカゴにこんなにお菓子が入ってるのだよ。お前らは見包みひとつで放り出された筈だから金なんてないだろう」

「なんかー頼まれたモンを適当に買って余ったお小遣いでお菓子買おうかってー」

「250円でなんとかやりくりしようとしてるんだけど難しいね。カード持ってくればよかった」

「部費はお前らのお小遣いじゃないのだよアホ!」

「みどちんうぜぇ」

「紫原ァ!!」

「緑間ホントやめて。店長の顔が般若になる前に静かにしてアキラくんのお願い」


















怒りなのかツッコミなのか次第に大きくなる声のボリュームに抑制を促せばすんなりと理解してくれる

暇になったのか紫原は両手のガリガリくんを1度冷凍庫に戻しハーゲンダッツを手にとり静かに眼を輝かせた。黒子に同人誌を与えた状況と酷似してるのは気のせいでは無い


紫原相手じゃ埒が明かないと思った緑間がアキラへと矛先を変え始める




















「…一応言っとくが250円ではこのカゴの中身全部は買えないのだよ」

「大丈夫。ボク等頭は綿飴で出来てるけどちゃんとそれは理解できているから!きっとカゴの中身はあるべき場所にもどs」

「アキラちーん!やっぱ全部買おうよ」

「…緑間今いくらある?」

「絶対奢らないのだよ」















綿飴の脳はやはり綿飴だった



がっかりと肩を落とすアキラに同情しつつ鞭の言葉を送る緑間

ハーゲンダッツを片手に紫原が唐突に緑間へ質問を投げかける


















「そういえばなんでミドチンはここに居る訳?」

「緑間の曇り切った眼鏡を見れば分かるじゃんむっくん。サボリだよサボリ」

「藍澤の荒んだ心が良く分かったのだよ。サボリじゃなくて見張り、なのだよ」

「…店長さんの?」






















神妙な面持ちで紫原とアキラは緑間を見た

自分たちが見張られていると全く考えもせず会話を聞いてた店長がびっくりした表情で緑間を見る


困惑した店長の視線に困惑した態度で壮大な勘違いの紐を解く




















「どう考えてもお前らの事を見張りに来たに決まってるのだよ!…店長さんではないのだよ…です」

部長命令なのだよ、とも付け加えて







とってつけたような敬語を語尾につけ誤解を解くと店長の視線はそっと外れ業務に戻ったのが分かり緑間はホッと胸を撫で下ろす

お菓子組はシラッとした顔で「へぇ」と興味なさそうに呟きカゴの中身の検討会を再開させる















誤解はとけたってのにこのやり切れない気持ちはなんなのだよ


















緑間は胸中にそっと悩みを仕舞い込み重い溜息を吐き部長から命令された見張りを遂行し始める








じーっと舐める様なストーカー染みた視線の気持ち悪さに直で浴びた紫原はぶるっと身を震わせ小声でアキラにヘルプを求めた














「まじミドチンからの視線に背筋がゾワワッて」

「むっくん。彼は人事を尽くしている最中なんだよ」

「尽くし過ぎて俺の背中に穴が開きそうなんだけど」

「うーん…なら視線を拡散させればいいんだね」











意味深な笑みを浮かべアキラは無表情で紫原の背中を凝視する緑間の名を呼ぶ。視線がフッと移り「なんだ?」と言葉を紡ぐ手前

















ビリッ







カゴにいつのまにか入ってたガリガリ君梨味を掴みビリッと袋を破く
















「!」

「!!お前何をしてるのだよ!」

「なにって…袋を破いただけだよ」

「買ってもいない商品を開けると買い取らなければならないと赤司に教わらなかったのか!?」

「…オソワッテナイヨ」















嘘だとバレバレな反応をするアキラが明後日の方向を向く隣で紫原がカゴに入ってたガリガリ君をマネする様にビリっビリッと開ける



ちなみに今の音でわかるように1回で2つ開けた様だ







実に器用な男、紫原












アキラに続き紫原までもが商品を開封してしまい絶句してしまう緑間

石の様に固まる様子を横目で見ながらアキラは共犯の紫原を見てにっこり笑いハイタッチをした















ぱちん、と軽い音が店内に響くのと同時に固まる緑間の肩にぽん、と手が乗る






緑間の前に開封済みのアイスを口に含むアキラと紫原がいる為消去法で2人の線が消える










残るは…恐る恐る生温い手の持ち主を振り返りプライスゼロスマイルを繰り出した店長と眼が合う

嫌な予感しか胸中に湧かずたらりと背筋を伝う冷や汗の感覚が気持ち悪かった
















「キミのお友達が開けたアイス代払ってくれるかな」














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