黒子のバスケ
□オリオンのままに 26Q
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場所:食堂
時間:昼休み
がやがやと賑わう帝光中の食堂の一机にて赤司とアキラに紫原と緑間…そして黒子が席につき昼食をとっていた
普段の無表情はどこへいったとばかりにまるで腐のスイッチが入った興奮状態によく似た黒子は嬉々として語り続け早30分…
2名は驚きつつも絶妙な相槌を打ち1名はじぃっと黒子を見つめ残り1名はショックで机に項垂れている
「青峰くんって凄いんですよ!地黒の癖にバスケが上手くて僕の練習に付き合ってくれたりしてくれて!黒い癖に僕には光に見えて…ああもう光なんです!いい人ですよね青峰くんって…ふふ。今日の練習後も楽しみで仕方無いんです授業なんて爆発すればいいのに」
青峰くんが青峰くんで青峰くん青峰くん…etc
黒子の興奮気味のテンションで30分話し続けた内容は見事に青峰一色でショックのあまりアキラが早々に机に伏した
決してサラダにグリンピースを見つけて現実逃避をした訳ではないのだ。彼の威信に掛けてそう願いたい
「ふーん。最近の青峰のサボりが減ったと思ったら黒子との時間に合わせる為だったのかな」
「そこなのか。黒子のマシンガントークで1人瀕死が現れてるんだぞ放置していいのか」
「アキラが瀕死なのはグリンピースが8割原因だろ」
…彼の威信なんてあっけなく木端微塵に砕かれた
黒子のマシンガントークを見事に聞き流してた紫原がペロペロキャンディーをよく動く黒子の口に押し込み話が途切れた
びっくりした顔で犯人を見た後にガス抜きされたように力無く背凭れに黒子は寄り掛かる
「ひゃんでふかこえ」
(なんですかコレ)
「期間限定のソーダ餡子マーマレード酢味なのーおいしー?」
「…くひのなああみおうおふぁいひおふぇふ…おぇ」
(…口の中が未曾有の大事故です)
不覚ながら突っ込まれた飴により新たな瀕死者を生みだされたことに当事者は何処吹く風。「どーしたのー?」と嘔吐寸前の黒子をゆさゆさと肩を掴み揺らすものだから見ていた緑間があわあわと席を立ち紫原を止めさせる
解放された黒子は真っ青な顔のまま口を両手で抑えぷるぷる震えて公の場でリバースするのをなけなしのプライドで耐えてる黒子の手をそっと赤司が外し原因の飴の棒ごと引き抜く
口から出されたダークマタ―(市販品)はよく見たら餡子要素が強過ぎて黒い。小さい癖に一般人への殺傷能力が強いようだ
一応紫原にも確認したが黒子と同じ棒付き飴を普通に食べておりこの飴は玄人向けなのかもしれない。販売する前に引き止める人材はいなかったんだろうか
とりあげた飴をくるくると回しふと机に未だ伏せてるアキラを見てから持ってる飴と交互に見てコイツなら食べれるんじゃないかと好奇心が赤司の中に湧き出てきた
「、うぇえ…なんでこんな味を紫原くんは食べれるんですか」
黒子にしてははっきりと顔を顰め刺々しい声で紫原を責めた。むっとして言い返す大きな子どもと黒子にそっと水を渡した緑間2人への好感度がどっちが上がったかなんて言うまでも無い
「変わった味でおもしろいからだし!黒ちんだけだよコレ食べれないの」
「え」
緑間に視線を移すと必死そうに俺に振るな!と変に熱い視線で返され仕方なく黒子は緑間から赤司へと眼を向け飴をぱくっと口に含んだ瞬間を目撃し衝撃が走る
「赤司!なにしてるのだよっはやく吐きだすのだよ!」
「ちょっとミドチン吐き出すようなもの俺あげてねーし」
「本能的にリバースするようなものを僕は食べたんですが」
「それは皆の舌がおかしーの!パッケージにR18が書いてる変わった飴なだけだし」
「普通の飴にR指定なんて入る訳ないのだよ。これ市販じゃないだろうどこで買った今ならオヤコロ教室逝きで許してやる」
「えーとね。みすぼらしい露天商が100円で売ってたの買った」
「赤司くん今すぐ口から出して下さい!」
黒子が赤司に先程自分にされた揺らすのを実行すると落ち着く様に言われ揺らすのをやめると何故か緑間と紫原から安堵の溜息が洩れたのに首を傾げた
飴が赤司の歯にあたりカランと音を立て口から抜き取られる
興味深そうに飴を見つめ一言
「食べた事がない味だな。新世界の味がする」
「ホラ紫原くん!食べたから変な思考回路になったじゃないですか!」
「…ごめん赤ちん」
「お前は俺と黒子には謝らないのに赤司には謝るんだな。俺たちにも謝るのだよ」
「ごっめーん」
「…何でしょうこの苛立ちは」
「仇は俺がとってやるのだよ黒子」
「ありがとうございます。そのラッキーアイテムを構えるのは止めてもらっていいですか怪しい人だと思われたくないので」
緑間が何故か装備しているのはエアガン。今日の蟹座信者を怒らせない方が身の為らしい
朝教師陣と緑間が一悶着あったのは知ってたが寛容な教師陣もさすがにエアガンの校内持ち込みは渋顔で了承した様だ
時折食堂内で昼食をとっている教師陣の眼が緑間に集中するのはそういう理由があったのかと黒子は納得した
「紫原。こう言う危ないものはまずお前自身とアキラの舌でもって確かめるべきだ。緑間と黒子に進めるには3年位早いな」
「緑間くん。僕等高1で公の前でリバースしなきゃいけないらしいです」
「安心しろお前の分も通信制の学校を探してやるのだよ」
「お願いします」
さりげなく毒見役にアキラを提示したのは皆で総スルーしもぞもぞと伏せてた顔を起こしたアキラによって直接赤司に反対意見が出される
「なにボクが毒見役?嫌だよ」
部活中の赤司を知ってる紫原と緑間にとって赤司に反対意見むしろ意見するのは恐怖でしか無くあの灰崎でさえ渋々ながらも従っているのだ。こうも容易く自分等が意見したのならあの魔王政治でどうなるかなんて考えたくもない
先程の黒子が赤司を思いっきり揺さぶっていたのを見て無意識に心臓がきゅっと縮まったのは紫原と緑間の気の所為じゃない
文句を言われたのをそっと流しむくりと起き上がるアキラを見てふわりと笑った赤司に周囲の空気がぴしりと凍る。校内では鉄壁無表情の完全要塞と化してる目の保養が笑ったのだ。密かに見ていた連中が凍るのも無理は無い
「うわーいい笑顔。はいこれ餞別」
「…はぁ。だからBセットを頼まなきゃいいのに」
「グリンピース以外は好きなメニューだったんだもん…味はアレだったけど」
餞別の代わりに嫌いなモノを恋人に押し付けるアキラに笑顔から呆れ返った顔に変わる赤司にようやく周囲の空気が融けていく
美人の笑顔に慣れていない連中など気にもせず赤司の手にあった飴をひょいと貰いアキラは不評の飴を口に入れる
一瞬だけ眉をよせてなんともないように舐めている姿に緑間と黒子は密かに視線を交わし「こいつらの味覚はダークマタ―だ」と視線論議を結論付けた
するとどこからか聞こえる人の名を呼ぶ例の彼の声にぴくりと黒子が動く
「おーいテツー」
「青峰くんですっ」
死んだ眼よさようならとばかりキラキラと眩しい眼で声のする方向へ駆け抜けていった黒子に一同無言
彼氏に呼びだされて途中辞退した1名により殺伐とした空間に変わった女子会さながらの雰囲気を彷彿させる面々の中でアキラが黒子が座ってた席を見つめ深刻そうに呟く
「…青峰にテッちゃんを寝取られた気分」
「俺は怒ればいいのか。それとも嫉妬すればいいのか…どっちだと思う?」
「知らないのだよ」
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