黒子のバスケ
□オリオンのままに 24Q
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その日は全中決勝戦
もうまもなく4Qが始まる頃に夏の暑さの為か異常に蒸している試合会場ギャラリーの帝光中応援席から距離を置いた場所にアキラは腰を降ろしていた
バスケの時も基本的に笑顔を装備しているのだが今日はそれを外し無表情に近い不満気な顔で目下のコートを見下ろす
点数は3ケタ突入しており群を抜く実力にも大きな問題は無い
試合運びも文句の1つもでてこない。あるとするなら…
「ラフプレー…」
すぐに4Qが始まり更に加算されていく帝光中の点数に眼もくれず灰色がかった髪を眼で追い続ける
周りの奇声に近い応援さえ耳を貸さず一挙一動監視する様に一瞬の隙も見逃さない鋭い眼付きで灰色の様子を見ているその時
灰色をマークしている相手の選手がディフェンスをし灰色がフェイクとドリブルを上手く使い相手の横を通り過ぎ
__足を踏みつけた
時間にして一瞬だった為審判は気付いていない。巧妙にして悪質なプレイに眉を顰める
「さっきから灰崎くんばかり見てますねアキラくん」
「ッ!?テッちゃんいつのまに…」
「第4Qが始まった頃ですかね。態々応援席から離れた場所に座るキミが不機嫌そうだったので、つい」
「ハァ。本気で気付かなかったよ」
ぬっと現れた黒子に慌ててコートから眼を離し無表情の黒子がアキラの隣の席に座って観戦してる姿に溜息が無意識に漏れた
コート内は黙々と刻む時計に従い外野を気にせず試合を続けてるのを見て先程よりは柔らいだ視線を戻し黒子が発言した固有名詞を聞き返す
「さっき言ってた灰崎ってあの灰色の奴のこと?」
「はい。親の仇を見てるような眼をしてたのと…、ちょっと気になる事があったので」
言いにくそうに言った後灰崎をじっと見てアキラ達の少し離れた所にいた人物を見てはまた灰崎を見るという行為を繰り返し眼をキラキラさせ小声で訴えてくる
「灰崎くんにフラグ立っているんですよ!しかも恋愛の!本人は残念でしょうが薔薇系のフラグが!」
「え相手来てるの。見たい見たい!」
「眼につきやすい体系の方なのですぐ分かると思いますよ。ホラ少し離れたあの帝光中の制服の…」
「………お相撲さん?」
「いえ。列記とした僕等と同い年の相撲部の期待の星・剛田(ごうだ)くんです」
アキラが呆然と見る剛田という男は普通の体系2人分の体積を有しておりいわゆる某デラックスと似た感じだと本気で思う
自分には不可視だが見えるような気がして灰崎と剛田を何度も見やりいつだったかのアキラと赤司のフラグの話を思い出し未だキラキラして興奮してる隣の腐男子に聞く
「フラグって折れやすいんでしょ?今のままでちゃんと成就するのかなぁ」
「どうでしょう。灰崎くんは女遊び激しいと聞きますし今のままじゃ無理でしょうね」
「…勘なんだけど、あの剛田くんが灰崎と付き合えばあの酷いラフプレーがなんとかなる気がするんだよね」
「アキラくんの勘はよく当たりますからそうなる確率は高いかもしれません。僕的には不良が丸くなるとどういう反応をするか気になって血がざわざわします」
「腐男子の血って怖い」
試合そっちのけで2人で剛田くんを見てると剛田くんの灰崎を見る視線にどこか見覚えのある気がしてぱちぱちと眼を瞬かせる
恋する乙女の視線に酷似して少し甘酸っぱい。友人に向けるものとは別なその視線の名前は、恋慕
名前が分かった途端ふ、と笑いを零せば黒子が不思議そうに見てくる
「ずっと前征ちゃんがあんな眼してたなぁって」
思い出してつい笑っちゃった。今は溶けちゃう位甘い視線を向けられるもんだから懐かしくてさ
「惚気は犬も食べないんですよ。人間には毒ですから惚気ないでください」
ズバッと言葉で切り捨てられてもいつのまにか写真を撮られた。きっと選手控室にある赤司の携帯に送信されているだろうと苦笑いを浮かべつつ剛田くんを見る
頬の紅潮は無いけど眼は口ほどにもモノを言うってね
今は一方的な剛田くんの片思いだけどこのまま恋愛フラグが折れてしまうのは勿体無い。彼と連絡がいつでもとれるようにアドレス交換しとくかな
そう思い立ち腰を上げると黒子も同じく席を立つ。試合は残り数十秒で終わるようだ。大歓声に包まれる前に話し付けといた方が効率がいいだろうと急ぎ足で剛田くんの元へ向かう
彼の横に立ち遅れてついてくる黒子に1度視線を送った後人懐っこい笑顔を向けて剛田くんへ問いかける
「ねぇキミの恋手伝ってあげようか」
ビーッ
始まりと終わりを告げる音が鳴り響き大歓声に包まれる試合会場がびりびりと揺れる中剛田くんが驚いた顔でアキラを見てゆっくり首を上下した
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