黒子のバスケ

□オリオンのままに 22Q
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ざわざわ



中規模のイベント会場は常に賑わい幾つかのカテゴリーが混ざった複合型の様でアニメキャラの格好した人達がチラホラと見える

数多の戦利品を自前の鞄につめて歩いてる少女たちは高揚した態度を隠さずにきゃあきゃあと話し合い時折熱に浮かされた様にうっとりと空を見つめていた











「あの男の子2人組のコスプレ…眼福すぎる」

「キャラコスじゃなくて軍服なところとか…」

「手繋いで歩いてる所とか!」

「赤い髪の子が恥ずかしがってるのをからかってる所とか!」

「あれ絶対デキてるわ…!」

「以下同文!ねぇもう1回見に行きましょ」

「そうね。戦利品以上のモノをこの眼に焼き付けて帰らないなんて腐女子の風上にも置けないものね!」

「うふふふネタ帳が厚くなるわ」

「「うふふふふ」」










妖しげな笑い声を出しながら人混みの中に消えていった少女達。周りも同じような子たちばかりだった為浮くどころか馴染んでいたというのは言うまでも無い















さて。その軍服を着た2人組は今現在黒子のサークル内でのんびり休憩中に勤しんでいた














黒子の出した本が飛ぶように売れる。お手伝いの数人がせっせと店番をしている後ろで赤司とアキラはパイプ椅子に座りじーっと働く黒子の背中を見つめていた


背中を擽る様な微妙な視線を背後から感じる事に黒子は気付いていたがガン無視。自分の本が売れるのは背後の軍服組が引き寄せた客も大分含まれるので怒るのも気が引けると気を使っているからだ











視線くらいなんだ。蛇の様に大行列のお客を引き連れてきたというチート技を繰り出すこの2人組をこんな事で怒るなんてありえない。アリエナイ














あ、お客様。後ろのレイヤーさんは売り物では無いんです

写真は心のシャッターで何百枚も撮ってくださいね

お買い上げありがとうございました















幾度目かの忠告混じりの決まり文句を言った後背後からつまらなそうな声が2人分聞こえ店番をお手伝いの人に任せ軍服組に近づく

ナチス風の黒の軍服を華麗に着こなし黒子をジト目で見る2人は不貞腐れている様だ。きっと碌な事を言わないだろうとどこかで確信していた















「黒子。お腹すいた」

「テッちゃん。暇」












…イラッ


文句を垂れる2人の額にデコピンで鉄槌を下す


痛みで前のめりになったり軍帽を床に叩きつけて痛みによる叫びを抑えてたりとそれぞれの対応で痛み緩和してる2人は生理的に潤む瞳でポーカーフェイスの黒子を睨む















「くろこ、一体なんなんだ…俺はただお腹すいたって言っただけだろう」

「テッちゃんなんなの。ボクまだ悪い事してないじゃん!」














第2デコピン隊出撃用意…打てぇ!






ビシィッ











綺麗に決まったデコピンに悪夢の痛み再来




パイプ椅子から転げ落ちたアキラが床で蹲り「ouch!」と喚く中赤司がふるふると体を震わし何かを隠す様に軍帽の鍔を深く下げ顔半分を見えないようにしている


黒子がぷんぷんと怒りながらピンっと人差し指を立て言い聞かせる











「ここではTと呼んでくださいと言ったでしょう。何2人仲良く忘れてるんですか」

「……忘れてなんかない」

「間があき過ぎて嘘だってバレバレです。ついでに声震えてますよ」

「くろこのばかぁ…うあん!」












ピシッと赤司の隠しきれなかった頭に攻撃(小ダメージ)を加えると軍帽の向こう側でえぐえぐと泣き声が聞こえ始め彼氏が床から起き上がり黒子の肩に肘を置く

痛みはもう過去の物らしくおちゃらけた様子で黒子を茶化す












「あーあ。てっちゃ…おっとTったら征ちゃん泣かしちゃって」

「自業自得です。身バレするから本名言うなっていったのに面白がって呼ぶキミ等が重罪です。軍法会議物です」

「その格好で怒っても説得力ないからね?」

「むっ」












くわっと怒ってくる前に赤司を椅子から持ち上げアキラが椅子に座りその上に泣きじゃくる赤司を下ろす。向き合う形で納まると赤司の肩越しに黒子がスマホでムービーを撮っているのが見えた












…いやあのTシャツは無いでしょ


達筆で「ヤらないか?」の文字が。裏は「アッー!」とプリントされてる文字がありそのTシャツをサークルの人達が着ている

なぜか誇らしげに着ている人が多くてアキラはいまいち腑に落ちない

ついでに客がTシャツ下さいとか言ってるのを見れば有名な言葉なんだろうか。世界は広い












視線を赤司に戻す


軍帽の鍔をしっかり持ち顔を隠してるその両手を握り余ってる片手でぽんぽんと背中を撫でる




恐る恐るといったゆっくりした速度で隠れてた顔がでてくる。額が赤くて痛そうだ

額にキスをしようと身を乗り出すとコツンとアキラの軍帽が赤司の重傷な額に当たり空気が凍る










痛みでぶわっと泣き崩れる赤司を慌てて抱き上げ問題の軍帽を黒子に被せ姫抱きでトイレへと駆け込む










人の目が突き刺さるがそれどころじゃない。人混みに「急患通りまーす!」と声を掛ければザッと道が開くのは日本特有の現象だと感心しながら猛ダッシュ

道を開いてくれた女の子たちの目がギラッと光ったのは勘違いだろうか。フラッシュはひとつも湧かなかったから黒子と同じ部類の女の子と言ってもTPOはわけまえているんだろう










男子トイレに駆け込み最奥の個室に入り鍵を閉めトイレの閉じてある蓋の上にそっと赤司を置く
















キャァアッびりびり…













…気の所為かな。今きゃあきゃあって女の子たちの歓喜の叫びがビリビリって会場を揺らした気がするんだけど。まぁそんなの置いておこう、きっとイベントか何かあったんだろうから
















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