黒子のバスケ

□オリオンのままに 9Q
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チャオ!藍澤さん家のアキラくんだよ


ボクは今第3体育館で部活の後片付けをしている最中なんだよ。
ちなみに入部して1週間たちました!新しい友達とか増えたんだー!

でもまだ”あの子”には会えてない。顔写真貼ろうかな…おっと話しを戻すね






モップ掛けなんて久しぶりすぎて興奮しちゃったね。周りがダルそうにやっている中ボクだけテンション高く且つ最速でやるものだから拍手もらっちゃった


1週間たっても拍手貰えるから調子乗ってこの小説のタイトルを「モップの王子様」に変えようと一瞬でも考えたボクを誰か殴って







それ(モップ拍手)を征ちゃんに報告したら「よかったな」って花が咲いたような可愛い笑みを向けられて一瞬固まってしまったんだよね


征ちゃんたらボクの近くにいた所為かあれだけ苦手だと言ってたボディタッチを自分からしてくるんだ





照れながらもちゅーしてくれる。ハグしたらするりと背中に手を回してくれる


前はほっぺちゅーも無関心だった。ハグも受け流すしボクの一方的が当たり前だったんだよ。大分進歩したよね!







日本人は流されやすいという性質が現れてきたなぁと思う今日この頃








…あとボクに向ける笑顔が変わってきたとも思う


前は本当の親より親らしい表情でボクを見てきたり面倒見てくれてたんだけどね


征ちゃんの夜這い事件以来少しずつ微笑み方が女の子寄りになったというか…元々端正な顔立ち且つ中性的だったのが更に魅力的になったというか…





ボクに見せるはにかむ笑顔だとかを見たクラスメイト(♂)があまりの破壊力に気絶やらトイレ直行だとかしたのを腑に落ちない気持ちで見ていた





征ちゃんは周囲ガン無視でボクに笑顔をくれるから現状に気付いてないんだろうね。大好きな征ちゃんの笑みをボクだけにくれてるってのに全然嬉しくないなんて、変なの


むっくんも征ちゃんが変わったのを気付いていたらしくポテチ一袋でそういった話を報告してくれる毎日

以前少しは周囲に向けてた笑みは完全に鉄壁無表情になったとむっくんが言った時「ですよねー」とハイタッチを噛まし合った







むー






モップ先端部分に両手を乗せ顎を乗せて回想中。口を尖らせ眉をムッと寄せてハイ不機嫌な征ちゃんの顔ー……なんてね。そこのモブさん密告しないでね





って部員ほとんどいないし。掃除の1年と5人のサボってた2年だけになってるし!

どれだけ考え込んでたんだボク





一応掃除が終わったコートの隅で征ちゃんの最近の事を思ってたんだけど誰も邪魔しないように距離とってくれたから集中してたんだけど物理的な邪魔が入る


















ヒュン

「!危ない」













誰かが叫ぶのは危険報告

んー?なんか近づいてきてる”あの感覚”がする……ああ。掬ってスリー入れろってリゲルが言うんだろどうせ



はいはいやりますよぉ










背後からボクに近づくボールに息を呑む周囲を余所に背後へと右手だけを伸ばす。打撲、骨折、捻挫、つき指をしないようにあれだけ練習した奴をボクが失敗する訳無いでしょ?





水面に浮かぶ蓮の花を掬いあげるように高速で手にぶつかろうとするボールを下からスッと掬いあげ手の中に納まるボールにその場がシンッと水を打ったような静けさに包まれる




ガシャンとモップを離し床に落として振り返り正反対のゴール下にいる5人をしっかり記憶してスリーを打つ


あーこんな遠いの打つの久しぶりだから外れちゃうかも。外れたらまたメニュー倍にされるのか




フォームを崩しゴールへと高く伸びるボールを懐かしげに見守るボクをリゲルは容赦なく頭を叩いて「落ちる訳ないだろお前が!」と不安を吹き飛ばしてくれるだろうか


…ああ。忘れなきゃいけないってのにボクって女々しい男ですね!















ぱしゅっ とんとんとん・・・











10秒位かけてゴールへ吸い込まれるように落ちていったボールはネットを潜りきれいになった床へ落ち跳ねて転がり自然と止まる










ああ。よかった

不安だったんだよね、暫くあんなロングシュートしてなかったから



安堵の溜息をつくボクは落としたモップを拾い上げて仕舞い未だ凍り付く部員を放置して「おつかれさまでしたー」なんてユルく言って体育館を後にする




しばらくしたら「うおおおお」「あああああ」「なんじゃこりゃあああ」と夥しい奇声が体育館から聴こえビクッと驚いた姿を誰にも見られなくてよかった












足早に姿を消したボクはワザとボクにボールを投げた2年の人達の舌打ちなんて聞こえる筈も無い



波乱の幕開けのファンファーレを聴こえない振りをして











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