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□深海少女
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(もう私はだめかもしれない。)
体から血液が流れる嫌な感触。
今回はひどい戦いだった。
私の忍軍でも多数の者が命を落とした。今、私の軍で満足に活動出来る者がいったい何人いるのだろうか。
私自信、危ないかもしれない。
いや、冗談じゃなく。
任務はあらかた終わっている。
あとは殿に報告をすればいい。それだって今、隼の隊の者が走りまわっているはずだ。
「…尊。…陣左。」
「…。」
1人では助かりそうにもない状況に腹心の部下の名を呼ぶが、いつもならば言葉通り飛ぶようにやって来る二人も今回は姿を現さなかった。
やっぱりだめかもしれない。
ちょっと寝てみたら少しは休めるかもしれない、なんて馬鹿な考えが頭をよぎが戦場で眠りこける訳にはいかない。
鎧は重いし、体は消耗してふらつくし、傷からの血は止まらないし。
あぁ。もう最悪だ。
「…ホント死ぬかも。」
仕事柄、覚悟はできているし、自分だって沢山の命を奪ってきたのだから死ぬのはしょうがない。
だが、私は忍組頭だ。
責任がある。
今回の忍軍の作戦指示をしたのは私だ。
その結果がこれだ。
まだやるべきことがある。
(とりあえず今現在の情報を、いや、いったん陣に戻った方がいい。誰かを呼ぶ必要がある…が下手に信号を出して敵に見つかるのはまずい。)
戦場の地形は全て頭に入っている。
味方を呼ぶために、味方から分かり易く、かつ敵から目視されにくい場所を割り出す。
ここから一番近い場所でも傷ついた体ではそれなりにかかってしまう。
体を引きずりながら進むが流れる血は止まらず、体温が少しずつ低くなっていくのを頭のなかでは冷静に感じた。
あと少しと自分を騙して進む。
意識が朦朧とした中、目的の場所に着いた。
広く開いたそこには、誰かがいた。
そこで雑渡の意識は途絶えた。
「…しら。…組頭!」
「んぁ、尊?」
「あんたこんな所で何やってたんですかっ…!!」
起きると辺りは暗くなっていた。夏だというのに多少肌寒く感じるのは疲れているからだろうか。
いなくなった私を怒っているのか、見つけたことに安堵しているのか分からない尊奈門に凄い勢いで怒鳴られる。
暗い中ずっと探しまわってくれていたのだろう。
尊奈門の息が切れている。
はぁ、と息をつく。
(助かったのか…?)
生きていたことに安堵をおぼえたのは一瞬のことで
次には体中に施された治療に意識が向いた。
意識を失う前に誰かを見た気はする。
治療してくれたということはタソガレドキの者だろうか?
…いったい誰が。
「…組頭?」
黙った私を尊奈門の丸い目が見つめる。
「あぁ。ごめんごめん。寝ちゃってたみたい。」
「ごめんじゃないですよ。みんながどれだけ心配していたか!」
「はいはい。……戦は?」
「…本日の戦は終わりました。依然として我が軍の優勢です。」
「それは良かった。陣に戻る。手を貸してくれ。」
面白くコロコロ表情を変える尊奈門は、はい。と短く返事をして私の肩を担いだ。