パロ文

□初恋は実らない
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 藤本獅郎は考古学者だ。

 ただ、普通の考古学者と違って、盗掘する犯罪者たちに真っ向勝負を仕掛けて、勝利を収める様な人だ。

 奥村雪男は、幼い頃両親を亡くし、父親の親友だった藤本獅郎に引き取られ育てられた。

 幼い頃は一緒に発掘現場にもついて行き、そんな養父の雄姿に憧れ、目標とした。

 自然に考古学の道に進もうとしたが、雪男の父親が医者だったことから、藤本には医者の道に進む様薦められていた。

 確かに両親と一緒にいた頃は、父親の白衣姿や助けた患者の家族に感謝される姿を見て、医者になりたいと思っていた。

 しかし、雪男も男の子、盗掘犯相手に一歩も引かず遺跡を守り抜くその姿に、引かれるのは無理もない事だった。

 だが、獅郎としても親友の忘れ形見をわざわざ危険にさらしたくはなかったので、現場に連れて行く条件として医者の勉強を続ける事を雪男に義務付けた。

 こうして、奥村雪男は医者の勉強をしながら、考古学者を目指すという二足の草鞋を履くことになった。

 ただ雪男が目指した考古学者は藤本獅郎だったから、同時に犯罪者に対抗すべき技や武器についても学ばなければならず、かなり過酷な学生時代を過ごすこととなった。

 そんな日々を送るうち、背は伸び体は逞しくなり、そのうえ優秀な頭脳は秀でたものばかりが集まる事で有名な正十字学園においても、常にトップでありづつけた。

 幼い頃から遺跡現場などで大人に囲まれていたから落ち着いた物腰が板につき、ハンサムだった父親似の顔立ちは女性の目を引いて、年上年下関係なくモテまくっていた。

「いいなあ〜。雪男。養父さんに何人か紹介してくれよ。」

「何言ってるんですか。養父さんにはそれぞれの遺跡ごとに彼女がいるんでしょ?以前、紹介してくれたじゃないですか。」

「あのな、あれ彼女じゃねえよ。それぞれの現場の現地スタッフだ。」

「その割にはベタベタくっついてたじゃないですか。あの親密度でそれは通りません。」

 高校を卒業する頃になると、雪男も一人立ちを考え始めていた。

 一応、獅郎の勧めに従い医大に進むことを決めると、なかなか獅郎とは時間が合わなくなってくる事が分かった。

 夏休みなど、長期の休みを取れるときは極力現場に参加したいけど、それでも医大の研修が優先されるのは必然で、それならばこれを機に獅郎のもとを離れようと思ったのだ。
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