駄文
□離婚原因第1位
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弟の雪男と、いわゆる恋人などと称される関係になったのは、燐が悪魔の体に覚醒し、正十字学園の旧男子寮に監視役の弟と一緒に住み始めてからだった。
それまで、普通に不良の兄貴の面倒を見る優しく優秀な弟と思っていた奴が、実は祓魔師なんてもんになってて、兄が悪魔に覚醒した時のために7歳のころから備えていたとは。
しかもそのころから、ずっと兄の燐を手に入れたいと思っていたとか。
単に使い魔として欲しいのかと思ったら、恋愛感情で好きと言われた。
燐は今まで、自分が悪魔だとは知らず、でも普通の人間としては強すぎる力と、すぐカッとして我を忘れてしまうという悪魔の力による作用のせいで、他人との人間関係が築けていなかったから、友愛も親愛も恋愛も違いが判らず、ただ弟が好きという気持ちで受け入れた。
受け入れた後は、本当に色々された。
ハグとチュウは昔からしていたから違和感なかったけど、口へのチュウは初めてで、しかもその後とても口にできないことが行われた。
起こったことを認識する前に翻弄され、蹂躙され、屈服させられた。
弟はうれしそうに、始終ご機嫌だった。
初日に、『父さんを殺したのは兄さんだ。いっそ、死んでくれ。』と言ったことなど、とうに忘れ去ったように、毎日ベタベタしてきた。
でも恋人などという、甘く聞こえる関係になっても、雪男の燐に対するジャックナイフのような鋭い言葉の暴力はやむことはなかった。
『馬鹿』から始まり、『無計画』『無防備』『考えなし』『サタンの力に頼りすぎて、いつかサタンに乗っ取られる』『僕に追いつく?無理でしょ。』など、燐の心を傷つけまわった。
兄弟として、修道院で暮らしていたころから、双子とは思えないと皆に言われていた。
見かけもそうだが、性格が違い過ぎたのだ。
その違いのせいなのか、雪男が女性に囲まれてチヤホヤされていることを、燐という恋人がいる癖にと苦々しく思っても、燐は雪男に何も言うことはなかった。
なのに、燐は数少ない男友達とふざけ合って笑っていた日の夜は、『お仕置き』という名の訳のわからない、性的いじめを一晩中受けさせられるのだ。
燐としては訳が分からないながらも、雪男が怒っているらしいことはわかるから、一応謝ってみるのだが、すると雪男は、
「謝るってことはわかってやったんだね?兄さんは誰のものか、その体に教え込んであげる。」
と、さらに訳のわからないことを言われて、もう二度と嫌ということを散々されるのだ。
だからと言って、燐が雪男のものだという意見には、絶対納得できない。
兄弟だし、男同士だし、人間と悪魔でもあるし、結婚などできないから心が結ばれているしかないのに、こんなことが続いていては、いつまでも心が結ばれていられるわけはない。
燐が雪男のものだというのなら、それなりの気遣いがあってもいいのではないのだろうか?
なのに、仕事が忙しければ連絡もおざなりで、そのくせ自分は燐の行動を全部把握しようとする。
過去には暴力だって振るわれた。
気絶するほど殴られたのだ。
こんなことが続く日々の中、志摩から借りた雑誌の中に離婚の原因がランキングされていた。
読むともなしのそれを読んで、燐は納得した。
どうやら燐と雪男は、いつ離婚してもおかしくない状況らしい。
志摩にその雑誌を貰い、その夜、講師としての仕事を終え、帰ってきた雪男に夕食後問いかけた。