駄文
□弟はさいきょう
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雪男が死んだのは、享年98歳。老衰による大往生だ。
雪男は悪魔落ちなど(体は)せず最後まで人間でいられた。
定年で祓魔師をやめるときには、養父同様、最強の聖騎士になっていた。
結婚もして、子供もできて、孫も生まれた。
ただなぜか、俺もずっと一緒の家に住んでいた。
妻となった人も祓魔師だったので、俺が家事全般をやることになってしまったのだ。
俺も祓魔師として任務に就いていたけど、片手間に家事をこなすことに慣れていたせいで、手早く料理も洗濯も繕い物もかたずけるので重宝されたらしい。
一度これはまずいだろうと家を出てみたけれど、数日後雪男の子どもたちが俺を探し出し泣き付いてきた。
「ご飯がまずくて食べられない。」と…。
俺が家を出てからわかったのだが、雪男はもちろんのこと、雪男の奥さんになった人も料理が壊滅的にだめだったらしい。
可愛い甥、姪に泣き付かれては仕方ない。
そうして俺は、祓魔師兼ハウスキーパーとして最後まで雪男につきあった。
その後、甥、姪たちはちゃんと料理のできる人と結婚したので(姪は料理自慢の男を捕まえた)、俺は祓魔師の仕事に専念するようになり、その後雪男の後任として聖騎士の座に就くことができた。
ジジイが死んでからずいぶんかかっちまったけど、漸く夢にたどり着けた。
そして今俺は、メフィストが管理するマンションの一室でクロと暮らしている。
もう俺の昔の知り合いは、メフィストとクロだけになってしまった。
それでも雪男の血がつながっていくから、よかったと思った。