旅日記
□閑話休題?
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「お帰りなさい。どうでした向こうの世界は?」
戻った先は、向こうに居ただけと同じだけの時間が過ぎていた。
やはり、別次元の世界でも、同じ時間軸が作用しているようである。
「おお、向こうのメフィストが言ってたけど、確かに戻りの方が楽だわ。」
「本来の、あるべき場所に戻るからでしょう。向こうの奥村君も成長したようですね。」
「なんか変化あったのか?」
「微かにですが、虚無界の力が落ちました。でも本当に微かに…です。」
「一か所改善しただけじゃ大幅な変化は望めねえか。でも変化って言ったら、俺がかかわったせいであっちの未来が変わっちまったのはいいのか?」
「おや?なかなか、周りの事にも気遣うようになったではありませんか。これは奥村君本人にもいい効果がありそうですね。」
「うっせ。どうせ今までは行き当たりばったりだったよ。これでも少しは反省してるんだからな。で?あっちの未来、変わっちまってよかったのか?」
「ある意味、未来というのは堅固に確定されているようで、それほどはっきり決まっている訳ではないのですよ。よほど大きな出来事は変更はできませんが、変えることはできるのです。」
「じゃあ、本来あるはずだった未来は?」
「どこかで修正されて、また時間に組み込まれています。いつかは実行されるでしょう。」
「…あの先の実行って?…いや、考えるのはよそう。」
蒼い顔をして、頭を振っている燐をニヤニヤとメフィストは見詰めて、尋ねてきた。
「乙女な奥村君も、なかなかかわいかったですけどね。」
「!なんで、おまえが知ってる?!メフィスト。どんな技使った?」
「技なんかじゃありません。あなたに超小型ビデオをくっつけてあっただけです。向こうの私も趣味は同じようで、奥村君についていたそれに気が付いてちゃんと充電していてくれてましたから、映像が残ってました☆」
「…なんだかなあ。悪魔なの抜きにしても、何があってもお前は生き残りそうだよな。」
「お褒めの言葉と受け止めておきましょう。」
「褒めてねえけど、もういいや別に…。で、こっちは他に変化なし?」
「天使さんが頑張ってくれてましたから、ご馳走振舞ってやってくださいな。それ以外は特には、」
「おう、解った。じゃあ、アーサー労わって、久々に腕ふるうか。」
「そうですね、少し体力温存する意味でも、ゆっくりしたほうがいいでしょう。」
「そして体力万全になったら、次の次元目指そうぜ。多少なりとも、影響ありそうだしな。」
微かでも成果の出たことに、手ごたえを感じ、燐は次の次元渡りに希望をつなげた。
そしてその日の夕食は、聖騎士アーサー・O・エンジェルの好物をずらりと並べて、燐がいない間の礼と成果報告を兼ねて、アーサー、四大騎士、シュラ、メフィスト、燐で食事会を開いた。
「へえ〜。なかなか面白そうなことしてんじゃん。にゃに?乙女な燐たんはビビりがお好みだったの?」
「ヤメロ、シュラ。それマジヤメロ。思い出してもきもいんだから。何も寄りにもよって雪男に惚れてんだって、泣きそうだったんだからな。」
「いいんじゃにゃいの?ビビりは一見乙女の理想風だし、恋に恋する乙女なら、はまるかもにゃ?」
「ならなんでシュラははまんねえの?乙女じゃないからか?」
「あたしみたいな大人のいい女が、あんなのに引っかかるわけねえだろ。」
漫才のようなやり取りは、師弟だからか息ぴったりだ。
アーサーは料理を食べるのに一生懸命で、しばらくは雑談に沸いていた。
一応、一息着いたところで、一番状況を把握しているメフィストが一通り説明をした。
そして、微かにでも虚無界に対する効果があるらしいという話になると、全員色めいた。
あと、2〜3回試して見て効果がはっきりしたら、本格的に作戦として組んではどうかという話になった。
燐としても、今回はうまく行ったがこの先どんな燐が待ち受けているかわからない。
できれば人生経験豊かな先輩方には控えていてもらって、いざというときのアドバイスが欲しかったのだ。
そう言う意味でも、作戦として組んでくれればありがたかった。
能力者が集まれば、異次元と言えどフォローもできるかもしれない。
「そういや燐。おまえ手騎士の資格取ったんだろ?それなら使い魔を作れないか?」
「へ?使い魔って、シュラの蛇みたいなやつか?」
「そう。それができれば、それを媒体に連絡も取れるかもしれにゃいだろ?」
それは面白いとメフィストが言い出し、ライトニングも協力すると言ってきて、結局しばらくは使い魔つくりの修業に入ってしまった。