生まれ変わる運命

□黒曜編
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「レイちゃん?」

名前を呼んでからうつむいて黙りこくった私に不思議そうな表情を向けた沢田とそんな彼に気が付いて足を止めた山本。
私はあの子に先輩と呼ばれる人間ではなくなってしまった。
最高でなく最善を望む、他人を傷つけず、自分を弛めず、まっすぐに立っていられるそんな一般人。

「ごめん、なんでもない。」

『貴方は未熟であっても、自らの弱さを言い訳にして逃げ出したりしない。』

右手の甲を握り締めるとあの世界を思い出す。
絶望も希望も。

「獄寺は俺達で運ぶから藤宮も帰った方がいいぜ。」

山本の声に私は顔を上げて沢田を見つめる。

「なにが起きてるの?」

もし沢田が頼ろうとするならその時は手を貸すつもりだった。

「え?!あーいや、オレも分かんない…」

明らかに何かを隠した彼に少しほっとした自分がいて、それにまた腹が立つ。

「そっか…気を付けてね。」

私の言葉に彼らは手を振ると学校へ向かっていった。
私はそのままあの英霊たちの贈り物がある部屋に帰ることもできずふらりと近くの公園によった。



SIDEツナ

アジトへきてから大変だった。
でもそれを吹き飛ばすような映像が目の前に流れてる。
壁のモニターに映し出されたのは、彼の飼っている鳥達に埋め込まれた小型カメラから送られているモノ。
京子ちゃんは花と共に了平のお見舞いに行った帰り。
ハルはイヤホンを耳につけ勉強している。

「ん?何だ?2人の後ろにさっきから」

ふとハル達の後ろにある怪しい影に気づく。
すると、急に影がアップになり、その正体を現した。

「気づきましたか?
何もしやしませんよ。あなた達が私に従ってくれさえすれば…ね?」

「ふざけんな!!」

獄寺君がバーズの胸倉を掴む。

「彼奴らはカンケーねーだろが!!」

「おっと、私には触れない方がいい。ほらお友達が…バラされちゃいますよ。」

京子ちゃんとハルに襲いかかろうとするツインズを見て、俺らは動揺する。
 
「離れていても私は彼らに指示できる。お友達の命は私が握ってるんだ。
お前らにガタガタぬかす権利はないんだよ。二度と触れるなボケ。」

こう脅されてしまっては、もう手も足も出ない。
そう思っていた時、聞こえてきたのは

「おめーみたいのがロリコンの印象を悪くすんだよ。」

殴る音と聞きなれた声。

「カワイコちゃん為なら、次の日の筋肉痛も厭わないぜ。」

シャマルが京子の元に行ったのなら、必然的にハルも大丈夫だろう。

「許せないな、女性を狙うなんて」

「ハルさん、ここは俺達に任せてください」

十年後のイーピンとランボが駆けつけると信じていた。
イーピンもシャマルもリボーンに言われていたのだ。
狙われる可能性のある彼女達を見張っていろと。

「よかったな、困った時に助けてくれる仲間<ファミリー>がいて。」

「うん……ん、ファミリーじゃないだろ!!」

「まだですよ。」

いい雰囲気になったところでかけられた声に視線を上げると、今度はレイは落ち込んだように公園のベンチに腰掛けて右手の甲を見つめてる姿が映っていた。
大丈夫だよなというようにリボーンに視線を向ければリボーンは変わらない表情でまずいなという。

「まさか…」

「あぁ、そのまさかだぞ。」

事態は変わっていないのだというように笑うバーズ。
彼の言う事を聞くしかない、そう思ってレイちゃんの映る映像に目を向ければ信じられないものが目に映る。

『私、今落ち込んでるの。』

見てわかるでしょうとレイちゃんは目の前の襲撃犯に視線だけを上げて言う。

『あぁ、撮ってるのね。』

カメラに気が付いたのかレイちゃんは沢田とオレの名前を呼ぶ。

『言ったでしょう?
胸を張れ。胸を張って、弱っちろい世界のために戦え。』

立ちあがりながらレイは自分に言い聞かせるようにしゃべる。

『……負けるな。こんな、強いだけの世界に負けるな。だって、私たちの世界の方がきっと、美しい。』

右手の甲を左手で色が白くなるくらいに握り締めて、そう言ったレイちゃんの瞳は強くて、惹かれる。

「どういうことだ?」

視線を向けるリボーンにオレは首を横に振る。
だって本当によく分からない。
でも

「レイちゃんは友達だ。」

オレがそう言えばリボーンはびっくりしたようにオレを見た。
映像の中のレイちゃんはいつの間にか木刀を持っていた。
流れるように斬り込み、相手の腹部に一発。続けざまに突きを入れる。

『無明三段突き。』

静かに響いた声と崩れ落ちた男。

「アイツ本当に一般人ですか!?」

獄寺君の声にオレもそう思う。
きっと、そのすべてはあの写真の場所につながってるんだろう。
悲しげな顔で手を振るレイちゃんとリボーンの蹴りに背中を押されて、オレはバーズの顔面に拳を入れた。


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