生まれ変わる運命

□リング争奪戦
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「負けたの、ダメツナのせいだからな!!」

体育の授業も終わり、花に体育着の裾で汗吹くのをやめろと怒られていれば聞こえてきた声に手を止めた。

「ちょっと、お腹見えてるから!!」

「ん?あぁ、ごめん。」

戦ってきた私の体は傷だらけで、それを見たくないだろうと謝ればそう言う事じゃないと頭をはたかれる。

「で、なに?ダメツナがどうしたの?
改めてまじまじと見つめて…」

「いや…ただ、あぁ言う人ほど追い込まれたら強いんだよなって思ってただけ。」

平凡な彼だったから、きっと世界を救えた。
先輩を思い浮かべて言えば、私の言葉にえぇと顔をゆがめる花とそうなのときょとん顔をする京子。

「窮鼠猫を嚙むってね。
非凡を連れた平凡が一番怖いと思うんだ、私は。」

沢田綱吉に暴言を吐いた生徒にかみつきそうな獄寺とそれをなだめる山本。
彼らを視界に入れると私は再び汗をぬぐった。

「だから、腹が見えるって言ってるでしょ!!」

体操服の裾で。
そーいや、よく先輩にも怒られたっけ。

『ハンカチ出してる暇ないなら、これあげるから!』

「リストバンドしてんだから、それで拭きなさいよ。」

「これは、使いたくない。」

「え?でも結構使いこんでるよね。」

京子の不思議そうな声に私はそれをぎゅっと握る。

「そうだね。」

それ以上何も言わずに私は教室へと戻った。
これは先輩がくれた大事なものだから。

「昼休み、またあそこに行くの?」

「うん、好きなんだ、空。」

給水塔に上って空を見上げれば、その透明度は少し低いもののあちらとあまり変わらないように思えた。
護ったのがこの世界だったと言われても何も違和感がないような。

「皆に、会いたいなぁ。」

わがままだって分かってる。
それでも、休息を得た時のようにまたみんなでワイワイと遊びたかった。
こちらに来る前の最後の1週間。
休息と私たちが取り戻した世界を見るために日本一周したのはいい思い出になった。

「空は変わんないんだなぁ。」

ふふっと笑えば急に下の屋上がにぎやかになる。
また彼らが来たらしい。
私は下をのぞき込んでその平和な日常を噛みしめるように笑った。



突然だが、この世界はさして平和な世界ではなかったらしい。
分かっていた現実から目をそらすようにため息をついた。
巻き込まれなければ永遠に続く平穏な日常も、巻き込まれれば一瞬にして表情を変える。

どれもこれも10分前の出来事のせいだ。

「呼ばれてる?」

アイスを買ったコンビニ帰り。
ふと呼ばれたような気がして振り返ればフォウ君がいた気がして、それを追っていく。
そんなわけないのに、この世界に彼らはいないのに。
追って、辿り着いたのは学校だった。

「な、なんでレイちゃんがここに!?」

驚くツナに私はフォウ君の影が駆け込んだように見えたブレスレットが一体になった指輪を指した。

「その指輪から出てたフォウ君に呼ばれた。」

「フォウ君って何!?」

フォウ君じゃないのかな、なんだろ…
そう呟いていればいかつい顔をした青年がこちらを値踏みするように見る。

「10代も現れなかった夜闇の守護者がこれか!!
笑わせる!!」

高笑いを決める彼に状況がつかめず私は頬を掻いた。

「いや、笑うのは良いんだけど…
せめて状況説明してから笑ってくれます?」

「ちょっ!!レイちゃん!?
ザンザスにそんな言い方!!」

私を止めようとツナが駆け寄ろうとするのを止めて悪い顔をして見せる。

「私は相手が誰だろうと媚びる気はないよ。」


SIDEツナ

レイはピンと背筋を伸ばして言い放つ。
それはどこか気品みたいなものがあって、その表情は小説に出てくる悪役みたいで。

ーなんで寂しそうに見えるんだろう。
前に部屋でヒポグリフ人形って言ってた人形を抱きしめてたみたいな…

ピンクの長髪に褐色の肌と黒いマスクが特徴的な女性二人組が私に傅き、その指輪をレイの指にはめ、ブレスレッドをつける。
途端にそのブレスレッドは赤い死ぬ気の炎をあげる。

「初めてはめた瞬間のみ死ぬ気の炎が赤く変わる者、それが夜闇の守護者の条件です。」

「貴女を夜闇の守護者と認めましょう。」

「え、ヤダ…」

困惑しっぱなしのレイの反射的に出た言葉に空気が凍った。

「やだけど、拒否権はなさそうだし。
受け入れてあげる。」

そう言いながらレイは悲しそうに切なそうにオレに説明しろと視線を向けた。

「夜闇の守護者はいずれのチームが勝った場合にもその役目を果たしていただきます。」

「明日より試合を再開します。」

明日の試合は嵐だと言って去っていったチェルベッロに視線を向けることもない。

「ちゃんと説明して。」

覚悟を決めた目をしてるのはなんで?

「分かった。」

オレの言葉だけで満足そうに笑うのは…なんでなんだろう?
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