生まれ変わる運命

□日常編
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同じクラスの彼は自信のなさの表れかいつも俯き加減、挨拶以外に特に話をすることもない。
私と沢田はそんな関係。

でも、私は気が付いていた。
彼は私の何かに気が付いている。
私が転校してきてから、ずっと不安げに私を見ている。
まるで脆いガラス細工でも見るようなその視線は、居心地が悪い。

この日も私はいつものように授業を受け、体を動かすために体育館へと向かっていた。

廊下を足早に歩いていると聞こえてきた爆破音と子供の泣き声に足を止める。
最近爆破音多すぎだろう。
何事かと音がした場所へと足を向ける。
自分の耳を頼りに向かった場所は人気のない校舎裏。
そこには私がよく見知っていた人達がいた。

「獄寺くんも山本も何やってるんだよ〜!!」

「わりぃ、わりぃ。ついな!」

「10代目…!!申し訳ございませんっ!
やはり俺にはアホ牛の世話など…!!」

きっと彼らにかかわれば平穏な生活は消えてしまうんだろう。
以前いた世界と同じだ。
巻き込まれなければ永遠に続く平穏な日常も、巻き込まれれば一瞬にして表情を変える。

「はひっ?レイさん、何をなさってるんです??」

見なかったことにしようとした疚しさに、ドキリと心臓が飛び跳ねた。
振り返るとハルがキョトンとしながら立っていた。
ハルは以前迷子になってるのを助けたところから縁が結ばれた少女だ。

「あ、ツナさんたちじゃないですか!
ってランボちゃんが泣いてる!?」

私が止める隙もなく、彼女は飛び出す。
仕方ないのでその後をゆっくりとついて行った。
縁が結ばれた友人を見捨てたりなんかしたらきっと彼らに怒られてしまうから

「何やってるんですかー!!!」

彼女はプンスカと効果音が聞こえるかのような剣幕で咎めながら、彼らに近付く。
獄寺くんは舌打ちをし、山本くんは苦笑している。

「ハル!!?なんでお前がうちのガッコに…「部活の合同練習らしいよ。」

私の姿が視界に入った瞬間、沢田は驚いたように目を見開いた。
そして彼は怪訝そうな顔で私の名を呟く。

「藤宮さん?」

私は泣いている牛柄の子供を抱き上げ、優しく頭を撫でる。
関わるなと理性が警告を鳴らす。

「呼び捨てでいいよ。」

それでも、どこか出会った当初の先輩に似た彼を放っておけなかった。

「それより、ハルの言う通り、子供を泣かすなんて感心できないな。」

牛柄の子供は少しずつ泣きやみ、いい匂いがすると言って気持ち良さそうに抱き付いてきた。
私もそれをギュッと抱き締め返す。

「別にいじめてたわけじゃ…!!!「泣きやまないそいつの保育係を決めていたんだぞ」

振り向くとその声の主は小さな赤ん坊だった。
格好は奇怪な姿をしているが、何やらタダ者ではないオーラを感じる。
そう言うのを感知するのは得意だ。
だって、英霊たちとずっと一緒にいたんだから。

「おまえ藤宮レイだろ。」

私は着ぐるみを来た赤ん坊を凝視すると、彼はニヤリとニヒルな笑みを浮かべる。
どうして知っているのかって顔だな、と赤ん坊は帽子をクイっと上げて私を見上げた。

「少し前に引っ越してきた転校生だろ。」

スーツを着こなした赤ん坊。
彼はきっと死後座につくような人間だろう。
この世界にそれがあるかは分からないけど。
彼はゆっくり私に手を伸ばす。
反射的にバックステップで避けると彼は面白いというような顔をした。

「お前ただもんじゃねぇな?」

「そんなことないよ。」

ただの中学生だと言って泣き止んだ少年を降ろす。
彼をよく見て思い出す。
そう言えば今日授業中に失禁していた少年だ。

「今日の授業中のことが原因とは思うけど、子供に子供の保育が務まるとも思えないな。」

私はそう言って英霊の子供組を思い出す。

「親戚の子なら親御さんに任せた方がいいと思うよ。」

私はそう言いながらポケットから飴を取り出す。
ナーサリーなんかはうれしそうに食べてたっけ。
そんな事を思い出しながら包み紙を剥いてやれば嬉しそうに受け取ってほおばる。

「なんか慣れてるね。」

驚いたように私を見つめる沢田にもいるかと差し出せば彼は手を振って断る。

「前にいたとこ、小さい子も多かったから。」

私はそう言ってからハルとその場を後にした。
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