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□隠し事をふたつ
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「ジニョン…ヒョン?」
「あ…いや、これは…待って、チャナ…!」
思わずヒョンに背を向けたあの時から、ずっと僕は苦しみ続けている。
ジニョンヒョンの隠し事のせいで、ずっと。
ファンの子たちに向かって何?愛してる?よく言うね、ヒョンが愛してるのはあのときキスしてた女の子でしょ。
女優さんとキスシーンなんて、ただの演技なんだから罪悪感もないよね。彼女とするよりよっぽど。
ジニョンヒョンがとんだ嘘つき野郎だってわかっちゃったんだ、僕は。
裏切りもいいとこだよね、ファンの子たちに隠して、それだけじゃなくて、僕たちにも一言もなし。
それで「BANAを失望させるようなことはするな」なんてリーダーぶって、ほんと笑える。
「ヒョンがリーダーなんだから、見本にならないと駄目なのに」
「チャニ…その話はもう何度もしたじゃない…」
「いつ別れる?」
「……。」
どうして黙るの?早く清算しなよ、ヒョン。バレたらBANAが失望するじゃないか。
「最低だよ、ジニョンヒョン」
「チャニは…応援はしてくれないの?俺たちのこと」
俺たち?やめてよそんな言い方。
「…黙っててあげてるだけで充分だとは、思わない?」
「……。」
また黙って、何?不満ですか?
僕は間違ったことは言ってないはずなんだ。身内だからって許せるわけじゃない。メンバーだからこそ、反対してるんだよ。
「ジニョンヒョン、あなたが背負ってるのは、自分ひとりじゃないんですよ」
ヒョンの行動ひとつが、僕たち五人、いや、もっとたくさんの人の状況を変え得る。
軽率に行動できないの、ヒョンが1番わかってると思ってたのに。
「ごめん、本当に、ごめん」
そんな顔しないで、ヒョン。お願い、しないで。僕が苦しくなる。
「っ…、僕、は、ヒョンが好きだから、言ってるんです、…」
僕が泣く?どうして泣いてるんだ、コン・チャンシク?
こんな風にしないって決めたのに、なんだよ、もう。
こう言ったってジニョンヒョンは、本当の意味で受け取ってくれない。
「あぁ、泣かないで、チャナ…、俺が悪いんだ、ごめんね…」
まさか僕があなたの弟として、メンバーとして、泣くほど心配すると思うの、ヒョン。
「違う、ヒョン…、」
「うん…ヒョンが間違ってたよ、泣き止んでよ…」
違うよ、心配してるんじゃない。あなたを本当に好きだから泣いてるんだよ。
いけないっていうのはこんなに明らかなのに、それでも付き合い続けるくらいヒョンがその人を愛してるのが、辛いんだよ。
「ヒョンは…、いつまで、僕に嘘をつかせるの?」
こんな風に、いつまで僕を苦しめ続けるつもりなの?
「…ごめん、ね」
あぁ。
謝るってことは、まだ続くんだね、こんな、僕にとって地獄みたいな日が…。
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