□とりあえずまずは
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「バロくんちょっと…お願いがあるんだけど、いいかな?」

あー、えっと、あぁ、こないだも共演したっけ。
ガールズグループの特定の一人との絡みって…ちょっと避けたいんだけど。

「なんですか?」

「あのね、シヌゥくん…に、このメモ渡しといて欲しくて」

「…は?」

なにこれ。アドレス?え?

「良かったら連絡してって、伝えといてくれる?」

なんだ、その顔。見るからに自信満々って感じ。

「わかりました…渡すとこまでは、責任持ちますけど」

「うん、その後はシヌゥくんに任せるから〜」

くそ…気にくわねぇ。


「でもヌナ…俺じゃなくてヒョンの方に関心があったんですか?」

「えっ?」

唇つきだして、幼い口調で言ってみる。

「今日も、話しかけてくれたときすごい嬉しかったのにぃ…」

「バロくん?」

拗ねてるみたいに、目を逸らしながら。

「なんでもないです…ちゃんと渡しとくから、心配しないでください」

「え、あの…」

やっぱりか。ちょっと心揺れてるって顔。
ホントは誰でもいいんじゃないの?後悔してるんだろ、俺を逃したって。

諦めろって。そんな女には、ヒョンは譲れない。

「じゃあ、僕もう失礼します」

お辞儀をして顔をあげたら、しっかり目を見て微笑む。
俺の手の中にあるメモのことは、もう頭にないだろう。


声の聞こえない距離まで離れて、溜め息。

「調子のりやがって…」

後輩グループのメンバーにアプローチ?そんなことしてていいわけ?

振り向いて、もう姿が見えないのを確認してから手の中の紙くずをちぎった。
それまではアイドルのアドレスが書かれた価値あるメモだったはずが、再び俺の手に握られたそれはただのゴミだった。



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