□数えないキス
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「この嘘つきが…」

「…!」

絶句。

「なんだよその顔」

「ヒョンこそ何?ひどいですよいきなり」

「ひどいのはどっちだか」

「全く身に覚えがない…」

ソヌヒョンに嘘つき呼ばわりされるようなこと、なにか言ったっけ?

「なんでまだって言ったの」

「まだ?」

「…キス、なんでしたことないとか言ったわけ」

「…?だってないから」

ないのをないって言って嘘つき?

「そーかよ…。じゃあ、…これは?」

「んっ…、ぅ…?」

ありゃ。ヒョンの唇と僕の唇が合わさってる。ヒョンの舌まで僕の舌と絡まっちゃってる。


「っ、…俺とするこれは、なんだよ」

「…僕たちの愛を確かめあう行為?」

「んだよソレ…絶対にキスとは言わねーのな、俺とのは」

「うんっ」

「笑顔で言ってもダメだっつの…」

ヒョンが唇を尖らせる。ちょっと濡れててセクシーだ。

「ヒョン、こっち向いて?」

「ん…、?」

一瞬のうちにヒョンの唇に軽く吸い付いて、ちゅー、した。

「へへ、スキあり」

「…今のは、ちゅー、だもんな」

ヒョンは怒ってるのかな。拗ねてるのかな。ずっと笑ってくれない。
いつもなら、こんな風にちゅーしたら、ちょっと呆れても笑ってくれるのに。


「したことないって、なんで言っちゃだめなの?」

「だめとか言ってないだろ」

でもヒョン、不機嫌になってる。

「だって…真面目な話、詳しく聞かれたら答えられないし」

「詳しくって?」

「いくつの頃?とか、どんなシチュエーション?とか、聞かれるじゃない」

「まぁ…」

「それに、去年バロヒョンと宿舎で、なんて言えないでしょ?」

言ったら大問題だ。ちゅーじゃなくてキス、なんてさすがにね。

「…別に、そういうことならいいけど、でもこの先いつしたことにするんだよ?」

「この先?」

「ずっと、まだです、で通すつもり?しました、に切り替えたらバナが泣くぞ」

「あぁ、仕方ないんじゃないかな…僕は、そういうキャラだから」

「キャラ?」

「純粋で綺麗で無垢な末っ子?」

「どの口が言ってるんだか…」

どの口?目の前にあるじゃないか、ヒョンの目の前に…。

「ん…この口…、」

「っ…、は、ッぁ…」

「…ごめんなさい、ヒョンの唇見てたら、我慢できなくて」

したくなっちゃった。

「これで、キスしたことないですなんて。よく言うよ」

「もう…だって、キスしました、バロヒョンとです!なんて言える?」

「言えない」

「わかってるならどうして?」

へそを曲げたヒョン、可愛いけど。

「なかったことにされてんのが、腹立つ」

「してないよ!」

ちゃんと一回一回、僕の思い出になってるんだよ、ヒョンとしたの。

「…とにかく腹立つから、もっかいキスしろ、お前からしろ」

「えっ?」

「あ、わかった、チャンシガ、今からファーストキスしよ、俺と」

「や、やだよ…、ソヌヒョンとのはキスじゃないことにしたいのに」

ヒョンと僕がするのは、キスじゃなくて、唇を合わせて愛を伝える行為なの。

「それがわかんねーの、俺には」

「わかんねー…って?」

「俺がファーストキスなんて嫌だ、って、そう聞こえる」

「…違う!」

「違うなら、なんなんだよ…」

ヒョン、どうしてわからないの?ヒョンのせいじゃないか。

「ヒョンが、僕の知らないひととキスなんかしてるからいけないんだ…」

「…は?」

「ヒョンにとって僕が何番目?って、それが嫌なの、他のひととヒョンがしてきたキスなんて、僕たちはしないの」

「っと、つまり、…」

「…やきもちだよ、バカヒョン」

あぁもう…言っちゃったじゃん、カッコ悪いじゃん、ソヌヒョンのせいだ。

「バカ…っていうお前がバカ」

「っ、なにそれ、小学生レベル」

良かった、ヒョンもカッコ悪い。だって顔、真っ赤だ。


「チャナ…しよっか、キスじゃないやつ」

「…うんっ!」


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