□俺をいじめないで
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控えめに、ノック。ヒョンが作曲中かもしれないから。

「ジニョンヒョン、ちょっといい…?」

「…ん、何?」

「えーっと…」

手前で寝てるドンウヒョンが目に入る。うーん…正直、ふたりじゃないと話しづらいんだけど…。

「あー…ちょっと、起きて、出てって」

「ん゙…なんだよ、不躾に…」

俺のせいです、ごめんなさい。

「ジョンファンと秘密の話があるから」

「気にしないでどうぞ…」

いやいやいや、

「そういう問題じゃないんだよ、悪いけど出てって」

「…わかったよ…」

しぶしぶ起き上がったヒョン。こっちを睨んでる。やだ怖い。

「…イテッ」

眠くて目がちゃんと開かなくても、出がけに俺を叩くのを忘れない。


「はい、おいで、聞くよ」

「ありがとう、ヒョン…」

ここ最近はジニョンヒョンが俺の相談相手だ。男ふたりで膝つき合わせて秘密の話。
その話っていうのは大抵、俺の…恋人?のことなんだけど…。

「で、ソヌがどうしたって?」

…うん、もうお決まりだもんね。あいつの話ってわかっちゃうよね。

「それが、…」

ヒョンの耳に口を寄せて小声で。一応ね。

「ん?…、Sに?なろうとする?」

「そうなんだ…最近…」

「なにそれ?」

なにそれって聞かれても説明が難しい。そうだ、事例を紹介すればいいかな。

「例えば、例えばね、ヒョン」

「例えば?…俺にやってみて」

「…ヒョンに、再現?」

「うん、俺をイ・ジョンファンだと思って、自分をチャ・ソヌだと思って」

俺にしては細いんだけど…。まぁいいか。

「……。」

「…どうしたの?」

いざ再現しようとしたら…なにこれめちゃくちゃ恥ずかしい…!!

「ヒョ、ヒョンっ、あの、引かない?絶対引かない?」

「引かない引かない」

ああ…深呼吸しよう…恥ずかしいけど相談したいもん。うん。よし!

「その…例えば、えっと…キス、したとするじゃない?」

「うん、…ん?しないの?」

「えっ?」

「再現、しないの?」

「!?そっ、それはダメじゃ…ないの?」

「ジョンファンの立場にたって、より役に立つようなアドバイスができるかと思うんだけど」

え、するべきなの?なに?わかんない!

「ヒョン、それ本気で…」

「…冗談に決まってるだろ〜。はい、キスしたとして、それで?」

「っ…もう、ヒョン…」

焦ったじゃないか。意地の悪いヒョン。

「はは、ごめんごめん、ほら、それで?」

「それで〜…その、すぐ離すんだよ」

「それじゃキスじゃなくてちゅーだ」

「そう、それから…」

「うん?」

ソヌになりきって言ってみよう。あの憎たらしいせりふ。


「『なにその顔…物足りない?』」

あ、すっごい上手くできた。今きっと俺の体にソヌ降りてきた。降臨した。やばい。

「は〜…ソヌがねぇ…」

「気持ち悪いニヤけ顔してさ!もうほんとムカつく!」

「あー、なんとなく想像できる」

「ヒョンどうしたらいいと思う?」

なんとか、あの腹立たしいソヌをギャフンと言わせてやりたい!

「ジョンファンは?」

「ほぇ?」

「どんな返ししてるの、さっきのに」

「そ…れは…」

それこそ恥ずかしいんだけど…。

「はい、俺をソヌだと思って?…『なにその顔…物足りない?』」

「『そ、そんなわけないだろバカ!』」

うきゃああ!恥ずかしい!!

「ハイそれアウト〜」

「えぇっ…」

な…なに?アウトってどういうこと?

「そんなの調子に乗らせるだけだよ」

「あ…そっか…」

「そういうのにはカウンター攻撃!」

「カウンター…どういうふうに?」

なんかヒョンがいつになくノリノリなんだけどどうしちゃったんだろ。

「もう一回俺に言ってみて」

「え?…『なにその顔…物足りない?』」

「『…って言ったら何?満足させてくれるの?』」

「…うわぁ、ヒョン…!」

すごい強気でセクシー!

「…そう言いながら唇とか舐めてみたり」

「きゃー!!」

「自分のじゃなくて相手のね」

「きゃー!!!」





「ひゃー、ソヌヒョン見て見て、ジニョンヒョン、セクシー!」

「ああああヒョンあいつになんか変なこと吹き込んでる…!!」


「あ、やっといて照れてる。こっちまで恥ずかしいですね」

「間違いなく一番恥ずかしいの俺な」

「ドンマイ『…物足りない?』ヒョン」

「…チャニそれやめようねヒョン泣きたくなるから」

「泣いちゃえ泣いちゃえ〜☆」

「うぅ…」

「あ、マジで泣いちゃった、泣かないで、『なにその顔…」

「だぁぁぁっ!やめようねチャンシガ!」

「まだ途中だったのに」

「もう消えちゃいたい…」

「でもヒョンあれやってもらうまで消えちゃダメですよ、せっかくあの二人盛り上がってるのに」

「無理だって…もうあんなの恥ずかしくて二度と言えねーよ…」

「大丈夫ですよヒョン、ファイティン!」

「無責任なマンネ…!」

「『なにその顔…』あれ?上手くできないな。ヒョン、本家の『物足りない?』見せてくださいよ!」

「しくしく…マンネがいじめる…」


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