いち

□ヒョンはいけないひと
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「チャナァ…」

ジニョンヒョンが俺を呼ぶ声。困ったような、切ないような、甘いような。
俺を見る、熱っぽい目。

「どうしたんですか?」

わかってるけど、俺からは絶対言ってあげない。

「曲、行き詰まっちゃって…」

「あらら」

「…気分転換、したい」

「散歩にでも行きます?」

「ち、違うよ、チャナ……」

「え?」

俺のすぐ横に座って、意地悪、って顔をするヒョンに、俺はとぼけたまま。理由なんて決まってる。

「…したい、んだけど…」

ヒョンが俺を欲しがるのが心地好いから。



「ヒョン、俺はマンネなんだから、そんな遠慮した言い方しなくていいんですよ」

しよ?とか、して?とか、言われたい。

「だって…チャニに悪いっていうか、申し訳なくて…」

まぁこの奥ゆかしいところがヒョンの可愛いところなんだけど。

「頑張ってくれてるリーダーに協力するのは、メンバーとして当たり前なのに」

「でも…、こんな協力の仕方…」

あぁ、そうですね、確かに、マンネにこんなことさせるのはジニョンヒョンだけかもしれない。

「こんなえっちなリーダーがいるのなんて、うちだけかも…」

「やっ…、そんなこと言わないで…」

目を真っ赤にして、頬はピンクに染める。俺はそんなヒョンの薄い胸を撫でながら。

「こんなこと、普通、マンネにさせたりしないですよね」

「ん…、ぁ…っ」

服の中に手を忍ばせて、触れるか触れないかっていう加減で指先を滑らせた。
反射的に目を瞑るヒョンが、俺の肩口をきゅっと掴むのにときめく。

「俺は、ヒョンに純粋に憧れてました」

「…チャニ、その話は…」

「あなたが好きだった」

「ごめ…、っ」

謝ろうとするから、キスして黙らせた。何度も唇を離しては合わせて、まるで恋人同士がするみたいなキス。
肩に置かれた手を掴んで、ヒョンを後ろへ倒す。俺を見上げるヒョンの頭の横で手を押さえ付けながら、今度は舌を絡ませる。

本当に、純粋にジニョンヒョンが好きだった。今も変わらない。
ただヒョンを抱いている今も。

「ッは……ヒョン、脱いで」

「ん…、」

ヒョンが少し起き上がって脱ぐのをじっと見る。露になるヒョンの上半身は、いつもの通り俺の目に、憎いほど綺麗に見えた。

「…下も」

「うん…」

何にも邪魔されずにヒョンの全てが見える。今、ヒョンを隠すものは何もない。

「触りますね…」

もう慣れたはずが、まだドキドキする。ヒョンの耳、首、鎖骨、胸、お腹、そして、その下まで。
ヒョンが、俺が触れるのを待ってる。

「ッ…は、ぁ…っ」

勃ち始めているそこをやんわり手で包むと、ヒョンの唇から吐息が漏れた。

「…ヒョン、脚曲げてください」

「う、ん……あの…もう、チャニの、入れてほしい…」

「ほぐすのも待てませんか?」

「そうじゃ、なくて……もう、大丈夫」

もう大丈夫…って?
わからなくてヒョンを見つめたら、顔を真っ赤にして目を逸らした。まさか。

「ヒョン…もしかして、自分で?」

「…うん」

頷いたヒョンに、俺は驚いた。一体この人はどこまで…。

「そう…。自分で弄るのは気持ちよかったですか?」

「や、ぁ…っ、違う…」

「何が違うんです?」

「チャニに、手間、かけたくなくて…」

「すぐ突っ込んで欲しかったんだ」

「…っあ…」

俺のを入り口に当てただけで、そこから先を期待している。

「失望しました、ヒョン」

「や…、あぁぁぁっ…!」

嘘。失望?そんなの今更しません。
ただ、怖いんです。そのうちに俺だけじゃ足りないとか言い出すんじゃないかって。

ヒョンが他の人を求めるなんて、他の人に抱かれるなんて、想像しただけでおかしくなりそうで。

「あぁぁッ…!だ、め…激し…っ」

「だってっ…その方が、ヒョンが喜ぶかと思って…」

物足りないって思われたくない。
もし俺だけじゃ満足できなかったら、そしたらヒョンは、誰にこれを頼むの?

嫌だよ、絶対嫌だ。


「ん、っ…チャニ…、なんで止めるの?」

聞いて、ヒョン。

「…いたいけなチャンシクをこんな風にしたのはあなただ」

「……もう、嫌になった?」

違う。違うから、そんな顔しないで…。

「責任とってください、ジニョンヒョン」

「責任…?」

俺をこんな風にした責任を。
もうヒョンのせいで、俺はおかしくなっちゃったんだ。だから。

「俺を、ヒョンの恋人にしてよ…」

答えがイエスだったら、続きをしましょう。逆だったら、…もう二度としない。




「…うん、いいよ」

これでこの役目は一生俺だけのもの。
ヒョンが求めるのは一生、俺だけ。


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