いち

□デメリット
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「いったぁーっ!もう、なんでぶつんだよ!ダメ!暴力!」

「サンドゥリが俺のお菓子盗るから!」

「いいじゃんいっこぐらい!」

あっ、ほら!チャニも欲しそうにしてる!

「お、チャナァ〜、食べる?」

「食べる!わぁい、いただきま〜す!」

…なんでぇ!?チャニにはそんなに優しいのに!!!ひどい!

「バロヤ!これは差別だよ、差別!!」

そういうの良くないんだぞ!お母さんに教えてもらわなかったのか!

「あーもう、うるさいなぁ。お菓子あげるから黙って」

「ゔー…」

まぁ、お菓子もらえるなら…。

「見てください、サンドゥリって単純でしょ。ここがちょっと足りてないんだ」

周りにそう言って、頭を指差すバロ。
別に気にしない。バドゥルってそういう仕様だから。

「バロはなんで俺ばっかりいじめるんだよ!正当な理由を言えよ!」

「っ……。」

ここでバロが口ごもる理由、俺は知ってる。俺だけが。

「…あぁ、ごめん、これはソヌと話すべきだよね」

小声で言うとバロが俯いて、悔しそうな目を俺に向ける。その目、ソヌのものだと思うけどね。

「覚えとけよ…」

「わぁ、怖ぁい。…そうそう、バロ…っていうかソヌ?仕事には私情を持ち込まないほうがいいよ。」

うまく演じられなくなるじゃないか。


バロにいじめられるサンドゥル。バロにからかわれるサンドゥル。バロに全然適わないサンドゥル。
これは周りの皆が見る、いつも仲良しなバドゥルカップルの姿。

実際は少〜し違うよね、ソヌ?



「ジョンファナ…」

「なに?ソヌヤ」

「ああいうこと言うなよ、みんなの前で」

「聞こえないように言ったじゃん」

「でも…」

「自分が勝手に動揺しただけでしょ、人のせいにするの?」

そういうの、いけないと思うな。いい加減学んでよ。あぁ、また俺が教えてあげなきゃ駄目なの?

「ジョンファ…っ」

「黙って」

「…ッ」

顎を強く掴んだら、怯えた目をした。

「僕、ソヌのその顔、だーいすき」

笑顔を浮かべて、かわいこぶってそう言ってから、そのままキスをした。
その丸い目が俺だけを映すのが。ソヌの頭が俺のことでいっぱいになるのが。
たまらないよ。最高だ。

「ねぇ、俺…」

「やだなぁ。黙って、ってさっき言ったばかりじゃないか」

口をきいていいなんて、言ってないよ?
あぁ、ダメダメ。目は伏せちゃ。ずっと俺を見てて。
ねぇ、俺は君が嫌いなんじゃないんだよ。

「ソヌ、好きだよ…」

「…っん」

こんなに優しくキスをするのに、どうして?嘘だ、なんて言って信じてくれないソヌは大嫌いだ。

「俺が好きだって、言いなよ」

「…ジョンファンが、好き」

「いい子」

「っあ…ジョンファナ…!」

ソヌの手にゆっくり指を絡ませて、爪を食い込ませた。痛いね、ごめんね。

「愛してる、も言える?」

「…っ、愛してる…」

いい子だね、ソヌ。バロとは大違いだ。

俺がつけた爪痕を指先で優しく撫でて、もう一度キスをした。
唇を離したときにその目が潤むのが、たまらないんだ。

「愛してるよ、俺はソヌを愛してる…」

嘘じゃないよ。
信じてくれないなら、このままソヌの舌を噛み切っちゃうかもしれない。


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