いち

□バックハグのリスク
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「ヒョンっ」

「わっ…もう、なんだよ〜」

「あはは〜、なんでもないです〜」

ジニョンヒョンに後ろから抱きついて、一緒にゆらゆら揺れる。
子供を甘やかすみたいに優しい声で笑ってくれるヒョンが、大好き。

でも、ヒョンに言えないことがあるんだ。
やってることもヒョンの反応もいつも通りなんだけど、最近はちょっと、俺の思考回路がオカシイ。

ヒョンの、胸元の開いた生地の薄い服が。
俺に抱きつかれてヒョンの身体が前に傾いたときに、一緒に揺れたときに。
いとも簡単にヒョンの胸から離れて、後ろにいる俺に地肌を見せてくる。
駄目だよ、だって、ヒョンにそういう感情なんか、持っちゃいけないのに。


「…どうしたの?黙っちゃって」

そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、ジニョンヒョンが振り向いて俺の顔を覗き込んできた。
ヒョン、駄目…そんなに綺麗な顔で俺を見つめないで。
俺はどんなことを考えてるか、ヒョンが知ったらどうなるだろうって、怖いんだ。
やめてよ。ヒョンの項、首筋、鎖骨、その下の突起が、全部目に毒なんだってば。

変だよ、俺、変だ。
どうしたらいいの?こんなの誰にも相談できないのに。
できるわけないよ。ジニョンヒョンを好きになって、その上欲情してるなんて、絶対言えない。


「ねぇ、どうしたの?何考えてるの?」

「へ!?あ、ううん、何も!」

あ、俺、やっぱり無理です。自分の心に留めておくなんてできそうにない。
ソヌ…は面白がって笑いそうだし、ドンウヒョンは…気持ち悪いって思うかな。チャニに言うのもちょっと…。


「何か悩み事があるなら俺に言って?」

「え…っと、悩み事、っていうか…」

まさか、本人に相談するなんて、そんな馬鹿なこと…。

「聞くよ?」

…えぇい、荒療治、ってやつだ!!


「あ、あのね、ヒョンが俺のこと嫌うかもしれない話なんだけど…」

「嫌う?俺が?」

「うん…ホント、冗談にしてもらってもいいんです。あの…聞いてくれる…?」

恐る恐るヒョンの表情をうかがったら、何か考えてて。…聞きたくないかな、やっぱりそうだよね。

「…えっと、このままでいいの?」

「え、あっ…!か、顔見て話す自信ないから!できたら、このままで…」

そうだ、ヒョンを抱きしめたままだったんだ。胸に感じる体温も、ヒョンの背中にぴったりくっついてるせい。
もう、最悪…また変なこと考えちゃった。ドキドキしてるの、ヒョンにバレてないといいな。


「ん…いいよ、話して?」

「ひょ、ヒョン…っ」

ヒョンが俺の手を掴んで、握っててくれてる。普通の相談だったらすごく嬉しいことだけど、今はやめてほしいかも。
だってヒョンの指が俺の指に絡まってるし、薄い服越しにヒョンの肌を撫でてるみたいで、また変な考えが浮かんできちゃう。

もし、もしヒョンの胸やお腹を、直接撫でたら、ヒョンはどんな反応をするの?くすぐったがるのか、それとも…


「っ…あ、…え、ジョンファナ…?」

「は、はいっ!?」

「あのね、あ…もしかしたら、なんだけど…この、俺のお尻に当たってるのって…」


「…ッ!!わあああ!!ご、ごめんなさいっ!ホントに、あのっ!!」

最悪だ最悪だ!俺は馬鹿だ!
ヒョンに邪な気持ちを持つだけで最悪なのに、勃っちゃうなんて!しかも、バレるなんて!
ジニョンヒョンは絶対に俺を嫌ったに決まってる。気持ち悪いって思ってる。


「もしかして、悩み事って…」

バレた…。もう、ヒョンは俺と普通に接してくれなくなるんだ。最悪だ。本当に。

「…ごめんなさい、俺、」

「あっ、い、いいの!」

「…え?」

いいって、何が…?

「俺も、最近、…なんていうか、処理?に困ってて…」

「え、あの、ジニョンヒョン?」

「自分でするのもなんか、あれだしさ…。だから、ジョンファンさえ良かったら、なんだけど」

お互いに、って、どうかな…?

まさか。まさかこんなことになるなんて思わなかった。
若いから、って理由で片付けられて俺の気持ちがバレなかったのも、ジニョンヒョンがそんなふうに悩んでたことも
そして結局、お互いのを手伝うことになったのも、少しも予想してなかった。



「っあ、ジニョン、ヒョン…ッ」

「…すごい、ジョンファンの、ガチガチになってる…」

「ぅあッ、あっ…」

ジニョンヒョンはどうしてそう、俺を煽るようなことばっかり言うの?これじゃまるで俺、早漏みたいじゃないか。

「あッ…ちょっと、待っ…あぁっ」

「ヒョンも、すぐイかせてあげる」

悔しいんだ。ヒョンが俺の気持ちに気付かなかったこととか、いろいろ。
こんな結果望んでなかったよ。玉砕する覚悟だったのに。伝えたかったのに。
今さら言ったら、ヒョンを困らせるだけなんだよね。こんなことする相手に、そんな感情いらないんだよね。

ヒョンの馬鹿。
でも、俺はもっと馬鹿だ。

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