連載(You raise me up2)

□2-第3章
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「では、次の方・・・3年A組の名無しさん、お願いします。」

学園祭実行委員長の声にさんは軽く肩を震わせた。

鹿島雪華に半強制的に学園祭で上映する映画のヒロインオーディションを受けるように言われた日から二日が経ち、いよいよ今日はオーディション当日だ。
放課後の多目的室には緊張した雰囲気が立ち込めている。

オーディション内容は演技と歌。
つい先ほど演技のオーディションが終了し、そしてまさに今、さんの歌の審査が行われようとしている。

ゆっくりと立ち上がるさんを、一緒にオーディションを受けている女子生徒達が一斉に見つめる。

役柄もあって、オーディションを受けている子達はどの子も気が強そうな美人ばっかりだ。

(ひぇええ・・・恐ぇよぉおおお!!ちびりそう!)

情けないことに一瞬怯んださんだが、オーディション用の主題歌のメロディーが流れてくると自然に体が反応しメロディーが口をついてでた。

「生き残りたい、生き残りたい・・・。」

(なんだか今の私の状況にぴったりな歌詞だな!まさに女の子達の視線で殺されそうだもんな!!)





・・・しかし、その必死さが逆に功を奏したらしい。


・・・


「くうっ・・・なんて切ない歌声なんだ!涙で前が見えねぇぜ!是非!シェリルを演じて下さい!」

「くぅっ・・・奇遇ね、私も鼻水で呼吸困難よ!本当、名無しさん以外は考えられないわ・・・。」

「グスッ・・・ホーッホッホッホ!よくやったわさん!やっぱりシェリルを演じられるのは貴方しかいない!それに私、自分より不細工な女がシェリルを演じるのなんて許さなくってよ!ホーッホッホッホ・・・グスン!!」


さんの歌に感動して涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら泣き叫ぶ学園祭実行委員長、副委員長と他のオーディション参加者たち。

そして泣きながら高笑いする雪華。


あまりのシュールな光景に教室の前を通りかかった教師が顔を引き攣らせてダッシュしていくのをさんは確認した。


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