「今日の月、なんだかすごく奇麗だね。……君と見れてよかった」

「……君は知っていて、それを言うのか?」

「なんのこと?十五夜の月見でいう言葉としては普通だと思うんだけど」

「そうだな…すまない、私の考えすぎだったようだ」

「うん?」

首を傾げた成歩堂は、その傾きを直す勢いのままに隣に座る御剣に寄りかかった。
すり、とその頬を肩につける。

「どうした?」

珍しい仕草に問いかけた御剣に、成歩堂はくすりと笑みを漏らして。

「日本人の奥ゆかしさか、あるいは文人の平凡に収めたくない矜持ゆえ、か」

「……?」

「月が、奇麗だね。御剣」

触れあう場所からじんわりとしみいる温かさが、秋の夜の冷えた空気に映える。

「ああ。月が奇麗だな……」

こころから、今宵の月の美しさに魅入った



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