TEXT1 (x7)

□譲り合い≒取り合い
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「え……こっち、ですけど?」

成歩堂が片方を指差すと、ゴドーは皿を強引に奪ってからすぅっと大きく息を吸う。
そして――

「おい!検事ども!」

今はあんたも検事でしょうが!という成歩堂のごくまっとうなツッコミは誰にも拾われることなく事務所に空しく響く。
そこに至ってようやくゴドーの存在に気がついた御剣と冥は、ゴドーの手の中に言い争っている元であるいちご大福があることに気付いた。
二人の視線を受けて、ゴドーはいよいよ悪い笑みを浮かべたかと思うと、徐に一つを手にとって――ばくり、と口に放り込んだ。

「「「「あ!」」」」

思わず他の者の声が重なった。
それらの反応を満足そうに見やったゴドーはぺろりと唇についた粉を伸ばした舌で舐めとった。

「美味かったぜ?コネコちゃん」

言った視線の先にいたのは――真宵、だった。

「え、あ、はい」

ぽかんと口と目を開いたまま固まっていた真宵だが。ぱちりとウィンクして手に残った皿を掲げて見せるゴドーにとりあえず応える。
意味のない言葉だったが、ゴドーにはそれで十分だったようだ。
くるりと検事たちの方を振り返ると、ニヤリと笑う。

「さぁて、アンタらが取り合ってたコネコちゃんの愛はこのゴドーが頂いちゃったわけだが……」

言いながら、ゴドーは成歩堂作の大福の乗った皿をテーブルに置くと――ハッ!と気合を入れて手刀を振りかざした。シュパ、と軽い音がして、大福がぴくっとほんの少し動いたのがみえる。まさか――と、誰もが見守る中。ゴドーは皿を再び持ち上げると検事たちに差しだし。

「みすぼらしい方のコネコちゃんの愛、半分だがな。無いよりはましだと思わないか?」

包丁を使ってもぐしゃりとつぶれてしまいそうな大福は、奇麗に2等分されていた。
うそ。と呟く成歩堂と真宵を振り返ってゴドーは得意げに言う。

「ったく。この程度の事が出来ないなんて気合いがたりねぇんじゃねぇか?まるほどう」
「いやいや、気合いじゃ切れませんから、フツー!!!」

慌てて反論する成歩堂の言葉をさらりと無視して、ゴドーはもう一度検事たちに向き直った。

「さぁ、どうするんだ?まぁ、お前らがいらねぇってんなら、俺が両方食べて味の判定してやってもいいんだぜ?」
「「!」」

ああ、それもいいですね。二人とも僕のは食べたくないでしょうし。そんな風に言おうとした成歩堂は、考えを口に出す前にポカンと間抜けな顔を晒すことになる。

二人はあっと思う間にゴドーの持つ皿から半分に奇麗にわれた大福を取り上げると、それをそもまま口にぐっと押しこんだ。その姿は、誰かに取られることを恐れた子供のようで――実際に、ゴドーという第3者が現れた二人はそんな心境だったのだろう。
一口に放り込んだ大福をもぐもぐと租借して、ごくりと飲み込んだ二人は、ポカンと呆けた顔の成歩堂に居たたまれなさを堪えながら、必死で絞り出した声をつづった。

「ああ、その……美味かった、と思うぞ」
「……わ、悪くないわよ!素人が作ったにしては上等じゃないの」

はっきりしない口調はとてもとても、アピールするものではなかったが、それでも天の邪鬼な検事たちの中ではそれは情けないことに最大限に素直な感想だった。
普通なら呆れるほどの捻くれた感想だったが、普段から貶されることが多かった成歩堂にとっては、珍しく一応褒め言葉のようなものを貰った形になり。
健気にも「そっかぁよかった」と、頬をほんのり赤くして照れたような笑顔を浮かべて「ありがとう」とお礼までいう成歩堂だった。


そして、素直に好意を示せない検事たちは、久しぶりにみることができた満面のそれに、独占できないまでもなんだか今日は良い日だったとヘタレな感想を抱き。

本当にごくごく、珍しいことに、ゴドーの出現に感謝したのだった。




Fin.






ノエル様のサイト「Miik tea」様との相互リンク記念で書かせていただきました。
(PCサイト様のため、『Helichrysum』PCサイトの方でリンクしています)

御剣と冥の成歩堂くん取り合い、というリクエストを頂いたのですが…な、なんか違うような?
時間かかった割に微妙な出来で申し訳ないです><;

こんなイマイチな私ですが、今後とも仲良くしていただけたら嬉しいです。

2012/06/21



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