さくらと星の夢

□君を想う
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―…ひらり
ひらり…―



花びらの舞い散る桜の木の下に、少年は一人佇んでいた。
一枚一枚の花びらを愛おしそうに見つめ、はらはらと散ってゆくそれを見送っていく。

その視線の先には、少年が恋した少女が映っていた。
この桜の木と同じ名前を持つ、何よりも大切な少女…―。
遠く離れた海の向こうで、自分の帰りを待っている。

少年が右手を差し出すと、そこへひらりと一枚の花びらが舞い降りた。
それを優しく包み込んで、両手を広げる。
そして小さく一言呟いた…―――。


『風華‥招来…』


その言葉と同時に少年の周りにふわりと風が舞い上がった。
風は地面に落ちた花びらを拾い上げ、もう一度空を仰いだ。
花びらは少年を纏うように下から上へと昇って、頭上へ抜けていく。
少年はそれを儚げに見上げて、ふと思う。

―出来る事なら、この花びらが海を越えてあいつの元へ届けばいいのに…、おれの‥お前を想うこの気持ちと一緒に…。

少年は、いつまでも桜の木を見つめていた。
ひらり…ひらりと、舞い落ちるその花びらを、自分が起こした風に乗せて、空高く昇らせる。
そして少年は、ふわりと微笑んだ………―。




 

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