さくらと空の夢

□君だけの声
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放課後になり小狼は誰もいない図書室に行き、今日出された宿題を片づけていた。


「お、おった!小狼!!」

「…彰穂、帰ったんじゃないのか?」


彰穂が図書室に慌てた様子で入ってきた。

小狼も思わず顔を上げ、先に帰ったハズの彰穂を見上げた。


「センセーがな、お前に渡しといてって昇降口で頼まれてなー」

「頼んどいたプリントか…」

「まだいること信じて走ってきたわ」


そう言ってプリントを片手に笑う彰穂に、小狼は申し訳なさそうに軽く頭を下げた。


「すまない、今日取りに行くって言ったんだけどな……忘れてた。」

「いいんや、ほな帰んな〜」


彰穂は小狼にプリントを手渡して図書室の入り口に向かった。


「あ、小狼」

「…?」


プリントを眺めていた小狼を図書室の扉に向かった彰穂が呼んだ。

「どうした…?」

「…可愛い彼女さんと仲良うしーや」

「…彰穂ッ!」


そう言って笑い図書室から出ていた彰穂を小狼は照れて怒鳴った。

彰穂の笑い声が微かに廊下に響いたのを聞いて小狼は口元を上げた。







「はぅ〜…遅くなっちゃたよぉ!」


部活が終わったさくらは慌てて小狼との秘密の待ち合わせ場所に向かった。

急いで着替えを済ませて、『今から行くね』と一言小狼にメールを打って、図書室に向かって走っていた。


「小狼くん、ごめんね…!!」


図書室のドアを勢いよく開けて窓際の一番奥の小狼の特等席に向かった。

「…お疲れ、さくら」

「遅くなってごめんね…!ミーティングが長引いちゃって…」


さくらを見た小狼はノートを閉じて優しく微笑んだ。

さくらは息を整えようと胸をなで下ろしていた。


「そんな走らなくても、良かったんだぞ」

「だって、待たせちゃってたし…」


さくらはその時まじまじと小狼の顔を見た。

小狼は学校にいる時は黒縁の眼鏡をかけていて、初めてその姿をさくらは見たのだった。


「…さくら?」

「…ほぇっ?!」

「どうしたんだ?大丈夫か」


一瞬固まったさくらを見て小狼はさくらの顔を見た。

自分の前の席に座り、すぐに固まったさくらを心配するように声をかけた。


「…ぁ、あのね…」

「どうした?」


さくらは照れながら小狼を見た。
その行動の意味が分からない小狼は、さくらをじっ…と見つめた。
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