さくらと星の夢

□狼注意報
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「ごちそうさま、美味しかったよ」


小狼は箸をテーブルに置いて、一息ついた。
さくらは昔にも増して、料理の腕を上げたようで、今夜作ってくれたハンバーグもお世辞抜きで美味しいと小狼は感じていた。


「良かった」


小狼の「美味しい」という一言に、さくらも安心したように微笑んだ。




「ね、小狼くん。他にしてほしいことって…なぁに?」


さくらが恐る恐る聞くと、小狼は苦笑いを浮かべながら、


「そんなに警戒することないだろ。別に、嫌ならやめても構わないんだぞ?」

「…え?」


小狼の言葉と共に頭に浮かぶのは、お皿を割ってしまったあの瞬間。

さくらはふるふると首を振り、小狼に向き直った。


「や、やめないもんっ!」


「そうか」


必死に答えるさくらに対して、小狼は涼しげに頷くと、手招きをして、さくらを引き寄せた。


「な…なぁに?」


小狼の横に座ったさくらは、まだ不安気な表情を浮かべたまま、尋ねる。
そんなさくらを見つめながら、小狼は何も言わずに目を閉じた。


「…??」


さくらは小狼のしていることの意味が分からず、首を傾げる。
すると小狼は片目を開けチラリとさくらを見ると、もう一度目を閉じた。


「ん」

「…小狼くん?」


それでも訳の分らないさくらに、小狼は痺れを切らすと、その唇へ軽く口付けた。


「…っ」


突然の出来事にさくらは思わず目を閉じる。
けれど触れただけの唇はすぐに離れて、上がりかけた体温を冷ましていく。


「小狼くん…」

「…こういうこと」


小さく呟いた小狼の言葉に、さくらは顔を真っ赤にして首を振った。


「ほぇ〜っ、む…無理だよぉ」

「無理なのか?」


変わらない表情のまま続けて、小狼は繰り返す。


「嫌ならやめても…」


その言葉に反応したさくらはぐっと喉を詰まらせて、


「い…嫌じゃないもんっ」


と、声を上げた。
そんなさくらの様子に、小狼は内心吹き出しそうな気持でいっぱいだったのだが、僅かな理性でなんとかそれを堪えると、ゆっくりと目を閉じた。


「はぅ‥」


さくらは目を閉じたままの小狼の顔をじっと見つめて、小さく頷くと、そっと顔を寄せた。


(な…なんだかすごくドキドキする。初めて、小狼くんにきすしたときみたい…)


そんなことを考えながら、唇が触れた瞬間、さくらは思わず身体を引いた。
けれど、突然小狼に腕を掴まれ、強く引き寄せられると、もう一度唇が重なって息を吸い込む間もない程深く口付けられる。


「…っ、小狼く‥っ」


さくらの身体は一気に熱を持ち、小狼の腕を無意識に握りしめた。

そしてようやく唇が放されると、小狼は満足気に笑って、


「よくできました」


そう言うとさくらを解放した。
さくらは真っ赤な顔を小狼に向けて、肩を上下させる。
そして小狼の満足気な顔が目に入れば、その頬はあっという間に膨れ上がった。


「どうした?」


小狼は必死に笑いを堪えながら、さくらの顔を覗き込む。


「なんでもないもんっ」


さくらはくるりと背を向けて、小狼から顔を逸らした。
小狼はそんなさくらの肩を後ろから抱いて、耳元に唇を押し当てる。


「じゃあ次は…」

「ほぇっ!まだあるの!?」


驚いたようにさくらは振り返って、小狼を見上げた。
その瞳はやはり不安気にくるくると動いて、小狼の心を捕える。
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