さくらと星の夢
□気持ちの置き場所
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「ぇっとね、そんなに対した話はしてないんだよ!テストの事で聞きたい事があるからって…」
「だったら、なんでそんなに焦る必要があるんだ?」
「ぇ‥?」
小狼は自分を抑える事が出来なかった。
一生懸命言い訳をするさくらに、妙にイラついて。
明らかに機嫌の悪い小狼の様子に、さくらは益々焦り戸惑っている。
「ぁの、小狼くん‥ごめんなさ…っ」
そう言いかけた時、小狼は思わずさくらの腕を引っ張り、ソファーへ倒れ込むようにその身体を押し倒していた。
「…謝るような事をしたのか?」
「小…狼く‥っ」
さくらの瞳は驚いたように見開かれたまま、小狼を見つめている。
小狼はさくらの腕を握る手に力を込めて、
「謝るって事は、悪い事をした自覚があるってことだろ」
「それは…」
それ以上何も言わないさくらに、小狼は軽くため息を零すとポツリと呟いた。
「…前に言わなかったか?」
「え?」
そう言ってさくらの首元に顔を埋める。
その瞬間さくらの身体がピクっと震えた。
しかし小狼はそれを気にした様子もなく、そのまま首筋へ軽く口付けた。
「しゃ、小狼くん!ちょっと待って!」
さくらは首を振って、小狼を離そうと試みる。
けれど両手をしっかりと掴まれ、身動き一つ取ることが出来ない。
今の小狼にとってさくらの行動全てが気に入らなかった。
胸の辺りがザワザワして、身体が言うことを効かず、気持ちだけが高ぶり続けている。
さくらにこんな気持ちを抱いたのは初めてだったし、溢れてくる嫌な感情を抑えることが出来ないのも初めてだった。
(…何やってんだ、おれ)
頭の中で冷静に問い掛けてみても、未だ掴んださくらの腕を放す事が出来ない。
「‥あいつは、おまえが好きなんだぞ」
「ぇ‥、そんな事な…っ」
小狼は、「そんな事ない」と言おうとするさくらの唇に少し強引に口付けて、言葉を奪った。
「…っ、小…狼くん!」
けれどその時さくらの声が震えた気がして、小狼は思わずその顔を覗き込む。
「…ひっく‥こんなの、やだ…っ」
見れば、さくらの瞳からは大粒の涙が溢れていた。
「さくら…」
その涙を見た瞬間、小狼は身体中の力が抜けていくのを感じた。