さくらと星の夢

□好きとはちみつ
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「ごちそうさまでした」


さくらは小狼が作ってくれた玉子粥をペロリと平らげ、胸の前で両手を合わせた。


「薬もちゃんと飲むんだぞ」


小狼は粥の入っていた皿を受け取ると、変わりに水の注がれたコップと薬を手渡した。


「うぅ‥苦ぁい」


薬を飲み込んでさくらは顔を顰る。


「他に欲しいものはないか?」


小狼はさくらをベッドへ寝かせながら、問い掛けた。


「うん、今は大丈夫」



さくらも大人しくそれに従い、布団を被る。



「…小狼くん、ありがとう」

「なにが?」


突然言われたその言葉に、小狼は目を丸くした。


「うん‥、傍にいてくれて」


さくらは布団を顔の半分まで被って、小狼の顔を見上げる。
その瞳は熱のせいか、僅かに潤んで妙に艶やかに見えた。
小狼は思わず目を逸してしまう。


「気にするな、おれがやりたくてしてるんだから」


小狼は濡らしたタオルをさくらの額に乗せながら、少し笑った。


「‥うん。あのね小狼くん、やっぱり一つだけお願いがあるの」

「なんだ?」






「…はちみつミルク、飲みたい」




その言葉に小狼が頷くと、さくらは頬を赤らめたまま、ふわりと微笑んだ――――。









「おいしい…」

「そうか、初めて作ったからあんまり自信はないんだけどな」


さくらの手の中でマグカップに注がれたはちみつミルクがゆらゆらと揺れている。
さくらはそれをもう一口飲んで、「そんなことないよ」と、笑って見せた。


「…わたしね、風邪を引くといつもこれが飲みたくなるの」

「じゃあおれももう少し練習しないとな」


小狼は苦笑いを浮かべながら、ベッドの脇に腰を下ろした。


「どうして?」


さくらの瞳が不思議そうに小狼に問い掛ける。


「…いつでも作ってやれるように」


少し小さめな小狼の声が聞こえると、さくらは嬉しい半面なんだか照れくさくなって、思わず瞳を逸らした。


「…あ、ありがとう」

「少し、眠った方がいい」

小狼はさくらが頷くのを確認して、空になったマグカップを受け取った。
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