さくらと星の夢

□いちごけーき
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「お待たせ、ケロちゃん」


仕切りの向こうからさくらが姿を現すと、ケロはビクッと身体を震わせた。


「ぉ、おおぉぉ‥おぅっ」


わざとらしい程焦ってしまう自分に、気持ちは高ぶり全身に冷汗が滲む。
テーブルの上のケーキはきちんと箱にしまわれ、その姿を隠していた。


「じゃあケーキ食べよっか」

「えぇ」


迫りくる恐怖にケロは堪えられずにいた。


(あ‥あかん、このままやったら…っ)


そしてさくらがケーキの箱に手を掛けた瞬間、ケロは勢い良く飛び上がった。
さくらと知世が驚いて視線を向ける。


「わ、わいちょっと急用思い出してん!……ほなそぅいぅ訳で先帰ってるわ」

「え!ちょ、ちょっとケロちゃん!?」


さくらが呼び止める間もなく、ケロは窓の外へ飛び出した。
そんなケロの様子を、さくらと知世は呆然と見つめ首を傾げている。


「どうしたんでしょう?ケロちゃんがケーキを食べずに帰ってしまうなんて」

「ぅん…、そのためについて来たのにね」


二人がそう言いながらケーキの箱を開けると…。




「‥ほぇっ!?」

「まぁ‥」



さくらは変わり果てたケーキの姿に目が点になってしまって、一体何がどうなっているのか理解するのに、暫く時間が掛かった。
知世も驚いたようにそのケーキを覗き込む。



「クリームと苺がありませんわね‥」



二人が眺めている苺ケーキにはメインの苺はおろか、スポンジに塗ってあったはずの生クリームまでキレイに無くなっていたのだ。
そこにあるのはクリームの衣を剥ぎ取られたスポンジケーキだけ。


「さくらちゃん?」


知世が見るとさくらは俯いて、その身体はふるふると震えている。
いくら鈍感なさくらでも、これが誰の仕業なのかは直ぐに分かった。
そして勢い良く窓を開けると、その名前を叫んだ。





「ケ ロ ち ゃ ん っ!!」





その声は、慌てて逃げるケロの背中を追い掛ける。



「‥わ、わいは悪ないっ!その苺ケーキが悪いんやぁぁあああっ!!ちゃんとスポンジ残しただけでも、褒めてくれ〜っ!」




もちろんこの声がさくらに届くはずもなく、家に帰ってからケロが思い切り叱られたのは、言うまでもない――――。







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