さくらと星の夢

□僕だけのもの
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「ぼ…僕の木之本さんに触るなぁ〜!!」




謎の叫び声と同時に、ベンチの後ろにある植え込みから、一人の少年が飛び出して来た。


「え!な、何っ!?」


さくらは驚いて振り返る。


「あっ!あなたは…っ」

「誰の、さくらだって?」


小狼は、さくらを庇うようにして立ち上がり、その少年に静かに言い放った。



「僕は木之本さんが好きなんだ!誰よりも一番!」



少年のその言葉に、小狼はジロリと睨み付けると、



「勘違いするな、さくらを誰よりも好きなのはお前じゃない、おれだ」


「小狼くん…」


キッパリとそう言った小狼の姿に、さくらは不謹慎だとは思いながらも、嬉しくて仕方がなかった。
そして小狼は続ける。


「二度とさくらに近付くな。もしまたちょっかい出すような事があれば…その時は死ぬ気で来い」

「な…っ」


小狼の静かな物言いと強い瞳が、余計に少年の恐怖感を煽った。
それ以上小狼は何も言わず、じっと少年を見つめる。

その緊張感に耐えられなくなったのはやはり少年の方で、


「…分かった」


そう言ってチラリとさくらを見ると、軽く頭を下げて、立ち去った…――。




「あ、あの小狼くん‥ありがとう」


少年が去った後、二人はまたベンチに腰を下ろした。


「多分もう大丈夫だろうけど、また何か言ってきたらすぐに言うんだぞ」


小狼はそう言ってさくらの頭をぽんぽんと撫でた。
その手が暖かくて、さくらは胸の奥が熱くなるのを感じた。


「うん…ぅん‥」


声を発するのと同時に、さくらの瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
何故涙が溢れるのか、さくらにも分からなかった。
辛さや嬉しさ、安心感や恐怖感、そんな色んな感情が入り混ざり、それが涙となってさくらの頬を伝っている。


「…さくら」


小狼は泣きじゃくるさくらをそっと抱きしめて、


「もぅ、大丈夫だから‥」


そう耳元で囁いた。


「気付いてやれなくて、ごめん」


小狼の言葉にさくらはふるふると首を振って、ゆっくりと顔を上げる。
小狼はさくらの頬を両手で包み込み、親指の腹で涙を拭った。


「…何があってもさくらはおれが守る」

「ぅん‥」


小狼はさくらの瞼に頬、そして最後に唇に優しく口付けた…――。











「なんか、うまくいったみたいだね」


茂みに隠れていた千春たちは、二人の思わぬラブシーンに楽しそうに呟いた。


「幸せ過ぎですわぁ〜」


最高の幸せに浸りながら、知世はふと思った。


(李くんの事ですから、きっとわたしたちがここにいる事も気付いてらしたんですわよね…)


知世はビデオカメラ越しに二人を見つめながら、


「けれど、それよりもさくらちゃんを守ることの方が大切だったんですわね」


そう呟いてふわりと笑った…―――。








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