さくらと星の夢
□僕だけのもの
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「心配だから着いて来ちゃったけど…」
「大丈夫かなぁ」
ペンギン公園の茂みに隠れてそう呟くのは千春と奈緒子。
そしてその後ろには利佳と知世もいる。
何故か知世の手にはビデオカメラが握られていて、四人の視線の先には公園のベンチに座っているさくらと小狼の姿があった。
知世は小狼が傍にいれば安心だと思っているので、楽しそうにレンズを覗いている。
「そんなことになってるのに、なんで黙ってたんだ」
小狼は静かにさくらに聞いた。さくらは俯いたまま、
「黙ってたわけじゃないの……でも、ごめんなさい」
小狼は小さくため息をつくと、
「手紙とメールだけか?他には?」
そう言ってさくらの顔を覗き込む。
さくらはふるふると首を振って、
「あ、でもたまに学校帰りとかに見かけたりしたよ」
さくらが顔を上げると、小狼は何も言わずにさくらを見つめていた。
その瞳に心臓がトクンと鳴って、さくらは思わず顔を背ける。
「さくら、その男は…」
と、何かを言いかけた時、小狼の動きが突然止まった。
さくらは不思議に思って小狼を見る。
「小狼くん?どうしたの?」
さくらが問い掛けると、小狼は、
「なるほどな…」
そう小さく呟いた。
そしてさくらの肩を抱いて、もう片方の腕でその頬を包み込んだ。
小狼の思いがけない行動に、さくらは慌てて身をよじる。
「しゃ、小狼くん!どうしたの!?」
「…黙って」
その一言で、さくらの身体は金縛りにあったように動かなくなった。
小狼は肩を抱く腕に力を込めて、さくらの身体を更に引き寄せる。
小狼のこの行動に驚いたのはさくらだけではなかった。
茂みに隠れていた四人も頬を染めてその光景を見つめていた。
もちろん知世のビデオカメラは回ったままである。
(幸せですわぁ〜…)
知世の小さな呟きは誰にも聞こえなかった。
「しゃ、小狼くん…ここ外だよ?」
「知ってる」
さくらはなんとか声を絞り出したものの、実際は胸が苦しくて呼吸もままならなかった。
心臓は相変わらずうるさく鳴り響き、不安と期待が頭の中で渦巻いている。
しかしそんなさくらの気持ちを知ってか知らずか、小狼は朱く染まるその頬に軽く口付けて呟いた。
「…さくらが誰のものなのか、教えてやる」
「え‥?」
そう言うと、小狼は先ほどさくらの頬に口付けた唇を今度はさくらの唇へ近付けた。
小狼の吐息を口許に感じて、さくらは眼を閉じる。
その時…――。