さくらと星の夢
□キミが一番
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【4位】さくら×知世
「あら?…まぁ」
知世は自分の筆箱を覗いて首を傾げた。
そして、いつも入っているはずの消しゴムが無い事に気が付く。
そういえば…と記憶を辿ってみれば、昨夜勉強をした時に筆箱を出したんだと思い出し、その時に入れ忘れたんだろうという答えに辿り着いた。
「困りましたわね…」
売店に行けば売ってはいるが、時計は既にチャイムが鳴る二分前。
知世は仕方なく筆箱の蓋を閉じた。
「…………」
間違えてはいけない時に限ってミスをしてしまう。
これが人間の性なのだろうかと、書き間違えたノートを見ながら知世は思った。
「ふぅ‥」
と、小さなため息をついて、どうしようかと考えていると隣の席から声が聞こえた。
「あれ?知世ちゃん消しゴムないの?」
「さくらちゃん…」
見ればさくらが心配そうな顔を浮かべている。
「えぇ、どうやら家の机の上に置き忘れてしまったようですわ」
「そうなんだ…じゃあ、はい」
そう言ってさくらは自分の筆箱から新品の消しゴムを取り出して、知世へ差し出した。
「え…?」
「わたしもう一個持ってるから、使って?」
知世はさくらから消しゴムを受け取りながら、思いだしていた。
小学校でさくらと初めて同じクラスになった時の事を…。
あの時も、こんな風に消しゴムを忘れた知世にさくらはうさぎの消しゴムを差し出してくれた。
「‥二個目ですわ」
「ほぇ?」
首を傾げるさくらに、知世はふわりと笑ってお礼を言った。
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きますね」
「そ、そんな大袈裟だよぅ」
はにかむように笑うさくらを、知世は嬉しそうに見つめた。
「さくらちゃん、さっきはありがとうございました」
授業が終わってから、知世は改めてさくらへお礼を言った。
「どういたしまして」
さくらも笑顔でそれに応える。
「けれど、新しいのを貰ってしまって良かったんですか?」
「うん!もちろん、気にしないで」
不安気に言う知世に、さくらは満面の笑みを見せた。
それにつられて知世の表情も自然と綻ぶ。
「…大切にしますわ」
「そんな、ただの消しゴムだよ?」
さくらの言葉に知世はもらった消しゴムに視線を落とすと、そのまま続けた。
「いいえ、さくらちゃんに頂いたものならどんなものでも宝物ですわ」
「知世ちゃん…」
さくらはしばらく考えて、頷く。
「わたしも知世ちゃんにもらったものや、作ってくれたお洋服も大切な宝物だよ」
そしてさくらは知世の手をそっと握って、
「これからもこんな風にして、いろんな宝物が増えていくといいね」
「えぇ、本当に」
知世もさくらの手を握り返してニコリと笑った。
けれど、一番の宝物は…あなたという存在。
わたしの、一番のお友だち。
fin