さくらと虹の夢

□未来に咲く花
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暫くしてHRが始まると、担任の先生が話始めた。

「えー‥、今日はまず転校生を紹介する。…入って」


「こんな時期に転校生なんて、珍しいですわね」

「…うん」

知世の耳打ちに、さくらも頷いて視線を教室の扉へ向ける。
そして教室中がざわめく中その扉が開いて、一人の少年が入って来た。
少し背が高めなその少年は短めの黒髪を軽やかに揺らし、明るい瞳は気さくな雰囲気を感じさせる。
教壇の前に立ってふわりと笑えば、思った通りのあどけない表情が顔を覗かせた。
そんな少年の様子に、クラスの女の子たちは、思わずほぅ‥と頬を赤らめる。

「…男の子なんだね」

と、さくらが呟いた時、その少年と目が合って、暫くの間の後、「あぁっ!」と声を上げた。
突然のさくらの声に教室中の視線が一気に集まる。

「木之本、どうした?」

担任に聞かれて、さくらは慌てて首を振った。

「…い、いえっ!なんでもないです‥」

恥ずかしさで顔から火が噴き出そうな程頬を染めて、さくらは俯いた。
すると、転校生の少年は驚いたように頷いて、

「あぁ、今朝の!なんだ、同じクラスだったんだね」

と、さくらに手を振った。
その瞬間小狼の表情が凍りつく。
そして少年に向けられる視線は鋭さを増した。

「さくらちゃん、もしかしてあの方が今朝ぶつかったっていう…?」

知世が問い掛けると、さくらは困ったように頷いた。

「うん…、まさか転校生だったなんて‥」



「なんだ木之本、知り合いだったのか」

「ほぇっ!?いえ、そういうわけじゃ‥」

担任の言葉に、さくらはあたふたと両手を振った。

「じゃあ木之本、折角だから河野に色々教えてやってくれ」

「ほぇぇっ!??」

さくらが更に慌てていると、少年は満面の笑みを浮かべて、

「河野 瑞稀(こうの みずき)です、よろしくお願いします」

と、自己紹介して頭を下げた。


「席も木之本の後がちょうど空いてるし、そこでいいな」

「はい」

担任に促されて、瑞稀はさくらの後ろへ座るとトントンと肩を叩いてさくらに声を掛けた。

「ね、名前なんて言うの?」

「え…っと、木之本 桜です」

さくらが戸惑いながら名乗ると、瑞稀は嬉しそうに笑って、

「そっか、よろしく、さくらちゃん」

「ぅ…うん、よろしくね」


そしてそれを少し離れた席で見ていた小狼の目には、確実に警戒の色が浮かんでいた。



「…あの、今朝はほんとにごめんなさい」

さくらが申し訳なさそうに謝ると、瑞稀は苦笑いを浮かべて、

「ほんとに大丈夫だって。でもまさかまたこんな所で会えるなんて思ってなかったけどね」

と、気さくに笑う瑞稀につられるように、さくらもようやく笑顔を見せた。

「学校のこととか色々聞いちゃうかも知れないけど、いいかな?」

「うん、もちろん。わたしでよければ」

さくらの言葉に瑞稀はホッと息をついて、もう一度笑った。


その時知世は、瑞稀と小狼を交互に見ながら、

「ライバル登場、ですわね」

と、わくわくしながら呟いたのだった――――――。








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