さくらと星の夢

□お菓子といたずら
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小狼はクスリと笑って、さくらの頭をぽんぽんと撫でる。
そして、

「じゃあ次は、おれの番だな」

そう言ってさくらを自分の隣に座らせると、静かに言った。


「…Trick Or Treat」


「ほぇ?」

さくらが訳が分からず首を傾げていると、小狼はそのまま顔を近づけて、さくらの耳元でそっと呟いた。


「お菓子をくれないと…」

「あっ!…えっと、えっとぉ‥」

さくらは困ったように辺りを見回して、やがてゆっくりと顔を上げると、


「あの…、お菓子持ってないの‥」

「…そうか、じゃあこっちだな」


小狼は頷いてさくらの身体を引き寄せると、そのまま首筋にそっと口付けた。

「ひゃ‥っ」

驚いて身を捩るさくらを少し強めに抱き締めて、口付けた首筋へ小さな花を咲かせた。
そしてさくらの顔を覗き込んで、

「おれの前でならいいけど…」

「ほぇ‥?」

「こんな格好で校内を歩かせるわけにはいかないからな」

そう言いながら、再び首筋へ顔を埋めて、いつくもの花を咲かせていく。

「しゃ、小狼くん‥っ、お菓子持ってくるから…っ」

さくらは頬を真っ赤に染めたまま、小狼の肩をポカポカと叩いた。
すると小狼はピタリと動きを止めて、

「お菓子ならこれでいい」

「…ぇ、小狼く…っ」

小狼はさくらの声を塞ぐように、その唇に口付けた。
そして少し強引に舌を滑り込ませると、さくらの口の中で転がっていた飴玉を舌で掬い、自分の口の中へ導いた。
突然のことに、さくらは抵抗も出来ずに固まっていた。

暫くして唇が離されると、さくらは苦しそうに呼吸を繰り返し、小狼を恨めしそうに見上げた。
小狼は何事もなかったかのように、澄ました顔で飴玉を転がしている。

「もぅ‥っ、小狼くんっ!」

さくらは顔を真っ赤にして、頬を膨らませた。
そんなさくらの様子に、小狼は必死に笑いを堪えながら、そっと抱き寄せる。

「…返そうか?これ」

小狼は口の中の飴玉を咥えて、さくらに指差して見せた。
するとさくらの頬は更に紅く染まり、

「そういうことじゃないよぉ〜っ」

と、小狼の腕の中でバタバタと暴れた。

「悪かった、少しからかい過ぎた」

小狼はさくらを宥めながら、口早に謝る。
さくらは小狼の顔を見上げて、また頬をぷぅと膨らませた。

「小狼くん、顔が笑ってるっ」

小狼はしまったとばかりに口許を抑えて、目を逸らす。
そして深く息を吸い込むと、

「ごめん、さくらがこの格好で校内を歩くって考えたら、やっぱり嫌だったから、つい…」

「小狼くん…」

静かに呟いた小狼の声に、さくらは様子を窺うように顔を上げて、小狼の真っすぐな瞳と目が合うと思わずドキッと心臓を震わせた。

「…ほんとに?」

その言葉に小狼がコクリと頷くと、さくらはふわりと笑って、


「なんだか、嬉しいな…」


と、小狼の腕をギュッと握った。

「ありがとう、さくら…」

「…小狼くん」

さくらの笑顔に、小狼もつられるように笑って、やがてどちらからともなく、ゆっくりと唇を重ねた……――――。








――…そしてその日の夜、小狼が知世に電話を掛けて、衣装変更の抗議をしたことは言うまでもない。


「大道寺っ!」

『あら?気に入って頂けませんでした?』

「…当たり前だっ!!」

『でも大丈夫ですわ、次に考えてある衣装は首元がすっぽり隠れるものにしてありますから』

「な…っ!?」










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