さくらと星の夢
□気持ちの置き場所
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―…あいつがおまえの事を好きなのは知ってた。
それに気付いてないのはおまえだけだって、知ってたか?
おれは、おまえを信じてるから、何も言わないつもりでいたんだ…。
けど、おまえがあいつに笑顔を見せれば見せる程、おれの中の子供染みた独占欲が、身体中の理性を奪っていくような気がして、気持ち悪かった…―――。
「小狼くんっ」
突然名前を呼ばれて、小狼は思わず身体を震わせた。見れば、さくらが不思議そうに小狼の顔を覗き込んでいる。
「どうしたの?ぼーっとして」
「…いや、なんでもない」
小狼はふるふると首を横に振った。
「問題、出来たよ」
さくらはそう言って得意気にノートを広げる。
「あぁ」
二人は今小狼の家で、勉強会を開いていた。
といっても、殆どさくらが小狼に教えてもらっている状態ではあったのだが。
テストが近くなると、こうして二人で勉強するのは高校生になっても変わらない事だった。
「よし、全部合ってる」
「ほんとっ!?良かったぁ」
小狼がノートを返すと、さくらは満面の笑みでそれを受け取った。
「少し、休憩するか。紅茶入れてくる」
「うん、ありがとう」
「…さくら」
「なぁに?」
小狼の呼び掛けに、さくらはいつもの口調で返事を返す。
小狼は手に持ったマグカップに視線を落としたまま、
「昨日、誰かと電話してたのか?」
「え?」
「夜、何度掛けても話し中だったから」
小狼の言葉に、その場の空気がピンと張り詰める。
「‥ぇっと、うん」
急に声の小さくなったさくらに、小狼は追い討ちを掛けるように続けた。
「…誰と話してたんだ?」
小狼のいつもより少し低めの声は、さくらを捕らえるのには十分で。
小狼の問い掛けに焦っているのが手に取るように分かった。
「それは…」
言葉に詰まるさくらを横目で見やりながら、それでも小狼は話を切ろうとはしない。
「…あいつか」
「…ぅ、ぅん」
小狼はそれきり黙ったまま、さくらが話し始めるのをじっと待っていた。
そして張り詰めた空気にさくらが耐え切れなくなるのにさほど時間は掛からなかった。