もしもの世界。

□突撃!!人気絵師のお宅訪問
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『はい!!今私は巷で噂の人気絵師"流雨威"さんの自宅前に来ています。今まで取材やテレビ出演を拒否してきた流雨威さんですが…私たち番組スタッフの何度目かのアプローチにより番組出演をしていただけることになりました!!!』






女性アナウンサーがカメラマンに迫って彼女の顔がテレビ画面いっぱいになる。

そんな女性アナウンサーにテレビを見ていた一人の男子高校生はうずうずしていた











「あ〜、さっさと出してくれねぇかなぁ〜〜?流雨威さんがテレビに出るっつーから録画までしてんのによぉ〜…」








家の中でもビシリと決まったリーゼントの男"東方仗助"は組んでいる脚を苛立たしげに揺らし頬杖をつきながらテレビを睨む

彼は承太郎を通して出会った流雨威に好意を寄せており、絵なんて然程興味も無いのに彼女が描いた絵は全て買い込んで飽きるほど見ていると言うほどだ。



そんな彼女が今度テレビに出ると仗助に言った。

すごいしつこくて最終的にプロデューサーが泣き出したから仕方無く取材を受けると苦笑いしていたのをふと思い出す


どんだけ流雨威さんをテレビに出したいんだよソイツ…
 



と仗助も苦笑いしつつも、彼女が珍しくテレビに出るしテレビ越しの彼女も録っておきたい…でも彼女がテレビに出るってことは俺達以外にも彼女に惚れる奴等が増えるって事で……











「複雑なんだよなあ……」








流雨威さんは俺達少数の人間だけが知っていればいい

だなんて子供じみた嫉妬心に仗助は顔を歪めた。










『………さぁ!!それでは流雨威さんの御自宅へ入ろうと思います!!!』






テレビ画面の女性アナウンサーが長いくだりを言い終えて、彼女の家のインターホンを押しに玄関に向かった。


仗助はそれに"おっ!!"と小さく声を上げ、ついていた頬杖をやめ崩していた長い脚を律儀に正座へと組み直し姿勢を正す

こんな仗助に母"東方朋子"はぷっと吹き出して笑いをこらえる

あんなナリして正座するなんて…仗助の友達が見たらなんて言うか




クスクスと笑っている朋子に仗助は気付かず、ただ画面を食い入るように見つめた







『"ピンポーン"』
 






いつもなら気が抜けてしまうインターホンの音だが、今の仗助はその音だけでも緊張感が張り詰めビクリと肩を跳ねさせた


朋子はブハッと今度は大きな声で吹いた。








『……さて、流雨威さんとはどんな方なんでしょうか……絵柄やタッチ等では女性と云う噂がありますが、その絵柄は毎回変わりますし…画集のあとがき文を読むと少し男性のようにも感じますよね。』








女性アナウンサーの言葉に、仗助はちょっぴり優越感を感じた。





本当、何も知らねぇんだな。





自分は彼女を知っていて、コイツらは知らない……そんな優越感。



仗助が嬉しそうにフンッと鼻を鳴らした時、玄関のドアが開いた。






やっと流雨威さんが出てくる!!!と仗助は目を輝かせてテレビへ体を乗り出したが、玄関から姿を見せた人物を見た途端

仗助の時が止まった。










『………なんだ?』











不機嫌丸出しで眉間に皺を深く寄せ、珍しく変なギザギザヘアバンドをしていない悪い印象しかない見覚えのある男……












岸辺露伴ぅぅうう!!?










そう、岸辺露伴がそこに映っていた。
 



仗助の叫びは外まで響き、朋子からうるさいとスリッパを投げ付けられるしまつ。



だが、仗助は今テレビに映っている人物が信じられなくて"え、なんで露伴?なんで?"と繰返し呟いた。



それは女性アナウンサーやカメラマン…スタッフ一同同じようで、明らか動揺している声が聞こえる










『え……あれ?ここ流雨威さんの御自宅じゃ……なんで、あの…ピンクダークの少年の作者である岸辺露伴先生が…?』






女性アナウンサーの戸惑いの声や動作に露伴はただ不機嫌そうに視線を向けて暫く黙った。


そして周りの状況を理解したのか、露伴は小さく"あぁ…そうか"と呟く









『今、流雨威は寝ているんだ…起こしてくるよ。中に入って待っていてくれ』









『え…寝てるって……え!?』










『今日が取材の日って事を忘れていたんだろう。だから昨日……いや、なんでもない…そこを真っ直ぐ突き当たりの部屋が応接室だ。』









『え!?え…昨日って……え!?』













所々意味深な言葉を落としていく露伴に、女性アナウンサーは戸惑いを通り越してパニックを起こし始めている

それはテレビを見ていた仗助も同じで、今はテレビをガシリと掴み"どぉ〜ゆ〜ことだぁ〜?オイ?"とその姿に似つかわしい顔になっていた。




朋子だけはただ冷静に
















「若いわねぇ…」














と煎餅をかじり呟いていた。







 
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